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『ローグ・ワン』が描く、無名者たちの墓碑銘ーー原題に込められた意味を読む

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 『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』は、同シリーズ初の外伝だが、意外なほどにカノン(正伝)寄りの物語を持っている。「エピソード3.9」と言っても過言ではない。日本公開直前のタイミングで流布した「エピソード4冒頭のぎりぎり10分前までが描かれる」という惹句は、ファンの欲望を急き立てるように煽動したことだろう。正伝のあいまに隔年で製作、公開されるこの新・外伝シリーズは、世界中のSWファンのための「会報」としての役割を担うだけでなく、サーガの壮大なパズルに数ピース分の貢献も果たしているわけだ。

 同作の原題は「Rogue One: A Star Wars Story」という。つまり邦題は、原題をそのままカタカナにしただけである。いや、正確には完全に原題どおりではない。A Star Wars Storyの「A」が抜けている邦題は、作品の本質を見逃した、なんとも不的確なタイトルだと断じざるを得ない。「ある一つの」という意味をもつ不定冠詞「A」が付くことによって、これがただ単に「スター・ウォーズ・ストーリー」であるのではなく、「ある一つの(つまり、数々あるうちの、たとえばこの)SWの挿話」という意味のもとに潜在的に複数化していくのだ。つまり「A」が付属することによって、この『ローグ・ワン』が複数性の中の任意の一挿話であることに注意を促しているのである。

 また監督のギャレス・エドワーズはタイトルの『ローグ・ワン』について、次のように語っている。「この題名には3つほどの異なる意味が込められている。まず軍隊のコールサインとしての意味で、劇中で主人公たちが属する集団を表している。同時に本作はこれまでのSWシリーズから逸脱する最初の1本だから、その意味では映画自体が、”Rogue”(=「はぐれ者」「反逆者」)でもある。そしてもう一つ、フェリシティ・ジョーンズが演じるジンも”Rogue”と呼べるキャラクターだね。」(キネマ旬報2017年1月上旬号)

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 劇中、無断で離陸しようとする主人公たちに向かって管制塔から、どの飛行部隊かという質問が来る。これに対して彼らは「こちらRogue…One.」ととっさにコールサインを捏造してみせる。その意味では、「ローグ・ワン」とは彼らが勝手に「俺たちはローグ・ワン」と名乗った符牒に過ぎない。しかしそれでも、管制塔向けの嘘っぱちに過ぎないこの符牒が、多義的に膨張していくのだ、Rogue One, Two, Three, Four,…と。本稿ではその構造的本質の一端を、今後の指針として提起しておきたい。

 反抗的な「独立星系連合」が1000年間平和の続く銀河共和国に仕掛けた内戦が、エピソード2において本格的に「クローン大戦」へと拡大し、エピソード3ではパルパティーン最高議長が元老院を解散させ、初代皇帝として即位する。と同時に、ジェダイの騎士を一斉に裏切って暗殺する計画「オーダー66」が極秘裏に発令され、銀河帝国が恐怖による支配を開始すると共に、ジェダイ騎士団も滅んで、ヨーダとオビ・ワン・ケノービは辺境の惑星に落ちのび、捲土重来を期して隠遁する。

 暗黒時代が到来して20年の歳月が流れ、カノン(正伝)におけるエピソード4(新たなる希望)が始まろうとする前夜。自軍の承認さえ得ていないならず者部隊によって、レジスタンスが本格始動する。エピソード4冒頭の字幕に書かれた、「反乱軍のスパイは帝国の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功する」の数行が、いま現実のものとなろうとしている。

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 そしてこの名もなきならず者(ローグ)部隊には、ジェダイの騎士が一人も含まれていない。武芸に自信のあるつわものたちが、フォースを信じてがんばる。体現する者のいなくなったフォースは、伝説と化し、宗教のようなものになっている。ならず者(ローグ)部隊に加わることになる盲目の僧侶チアルート・イムウェ(ドニー・イェン=甄子丹)は、いわばジェダイ不在の暗黒時代を象徴するような人物だろう。彼はフォースを信仰している。でも残念ながらフォースの持ち主ではない。これまでの全エピソードを通して、歴代のあらゆるジェダイ役俳優たちよりも明らかに流麗かつ切れ味鋭い殺陣を見せている甄子丹ではあるが、香港のカンフースターなのだから、それは当たり前のことだ。でも彼はジェダイではない。

 ジェダイの騎士たちはかつて、たがいの挨拶の際、こう述べていたものだ。「May the Force be with you.」(フォースと共にあらんことを)と。この英語のフレーズを私は、中学に上がって英語を習い始める前の小学生の時にすでにすらすらと暗誦できたものだ。エピソード4初公開当時はフォースの日本語訳として「理力」という語が使われた記憶がある。そしていま、僧侶チアルート・イムウェらにとって、フォースはかつて存在した敬慕に値する概念であり、現象であった。しかしもう、ないものはないである。

      

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