ももクロ百田夏菜子、女優としても開花! 『べっぴんさん』4人娘、それぞれの魅力

 土村芳が演じる病弱の母親・村田君枝は複雑なキャラクターだ。正義感が強く女学校時代は、戦争に違和感を表明する同級生に反発していた。普通の朝ドラならヒロインの側が戦争に対する違和感を表明するのだが、それが見事に反転している。おそらく病弱で足手まといに思われたくないが故の愛国的振る舞いだったのだろうが、だからこそ彼女は敗戦の傷を誰よりも引きずっている。

 土村芳は、宮崎あおいや田部未華子が所属するヒラタオフィス出身で、現在公開中の映画『何者』にも出演している。女優としての出演作は少なくキャリアは浅いが、京都造形芸術大学の俳優コースで演技の勉強をしており、在学中に舞台や映画にも出演している。本作では、弱々しくも包容力のある芝居を見せており、おそらく『べっぴんさん』が終わる頃には、吉岡里帆や相楽樹のような“朝ドラで見つかった女優”として注目されるのだろう。

 そして小野明美を演じる谷村美月は、子役時代から数々の映画やドラマに出演している実力派の女優で、朝ドラにも『まんてん』(NHK)に12歳の時に出演している。引っ込み思案で夢見がちの三人に対して、明美の考え方は現実的で、すみれたちに毎回辛辣なことを言うのだが、この辺り女優としての経験値の違いがそのまま役に反映されているように見える。おそらく現場でも、演技経験が少ない3人を谷村がリードしているのではないかと思う。

 そんな4人がお互いに距離を測りながら、静かにぶつかり合う中で、少しずつ信頼関係が芽生えはじめているのが面白い。

 『べっぴんさん』は不思議な朝ドラで、あらすじだけ見ていると、過去作のパッチワークでできた凡庸な作品に見える。しかし、最初の一か月で時間を一気に進めたり、台詞に頼らない心理描写が多かったりと、大胆に冒険している場面が多い。すみれたち4人の関係はその最たるもので、4人の内3人が内向的であまりコミュニケーションが得意ではないというのは、めずらしいパターンである。だからこそ、類型的な朝ドラに収まらない意欲作となるのではないかと期待している。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』
制作局:NHK大阪放送局
出演:芳根京子、生瀬勝久、菅野美穂、蓮佛美沙子ほか
作:渡辺千穂
音楽:世武裕子
平成28年4月4日(月)〜10月1日(土)全156回(予定)
<総合>
(月〜土)午前8時〜8時15分/午後0時45分〜1時[再]
<BSプレミアム>
(月〜土)午前7時30分〜7時45分/午後11時〜11時15分[再]
(土)  午前9時30分〜11時[1週間分]
<ダイジェスト放送>
「べっぴんさん一週間」(20分)
<総合>
(日)午前11時〜11時20分
「5分で『べっぴんさん』」
<総合>
(土)午後2時50分〜2時55分     
(日)午前5時45分〜5時50分/午後5時55分〜6時
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/beppinsan/

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