『校閲ガール』なぜ“泣けるドラマ”に? 石原さとみと江口のりこ、正反対キャラの友情物語

 『地味にすごい!校閲ガール・河野悦子』が地味に面白い。青山真治監督が「信じがたいが、校閲ドラマで泣いてしもた…」とtwitterで呟いていたが、登場人物たちのキャラクターが濃厚に描かれた3話目は、世間のイメージどおりの地味で真面目な校閲部員・藤岩りおん(江口のりこ)を中心とした感動回だった。

 このドラマを語るにあたって、まず石原さとみ演じる河野悦子の魅力を語らずにはいられない。彼女の魅力は、ファッションセンスだけではない。誰彼構わず思ったことはすぐに口に出し、行動する。「なんで私が校閲!?」と言いながらも、真剣に仕事に取り組み、担当作家や同僚を笑顔にしていく能力は並外れている。

 1・2話は、初めて校閲部に配属された河野悦子を中心に置き、彼女のキャラクターと校閲部の紹介がメインの回だった。少し失敗するものの万事うまくいく1話に比べ、2話は悦子が、1人では挽回できない大きな失敗をしてしまう。彼女自身が力を入れていたブログ本の表紙で、表記ミスを見逃してしまったのだ。初版本の全てに訂正シールを貼って発売するにあたって、校閲部メンバーが全員でフォローするのだが、その後彼女は、メンバー1人1人の名前を呼び、礼を言う。これが1つの物語としての転機だと言えるだろう。それまで外野から悦子をただ覗くだけの役割でしかなかった彼らが、「個」として動きはじめたのである。

 3話で描かれているのは、2つの友情の芽生えだ。1つは、3話になってそれまで目立たなかったオネエキャラが炸裂した米岡(和田正人)と悦子の友情、もう1つが、今回の主役・藤岩と悦子の友情である。きっかけは、2人がそれまで隠していた好きな作家のことを悦子が知ったことだ。悦子が、「作品に入り込みすぎるので好きな作家を担当してはいけない」という校閲部のルールに対して「なんか納得いかないルールじゃない?」という率直な疑問を投げかけることが全ての始まりになっている。

 悦子とは正反対でおしゃれとはほど遠く、校閲の仕事以外は興味がないかのように仕事に没頭する藤岩は、常に正しいことを指摘したり忠告したりする存在だった。それが、今回はデビュー当時からファンだった作家への思いにひた走る。職務をきちんとこなすために抑制してきた感情を爆発させるのである。

 それを全力でサポートしたのが悦子だ。3話は、全く正反対に見える悦子と藤岩が、実は似ていることも示される。彼女たちは好きなものに対して一直線なのだ。好きな作家に近づきたい一心で景凡社に入った藤岩と憧れのファッション誌編集者になりたい一心で景凡社に入った悦子は共通している。

 悦子が、悦子にとっての好きな対象であり藤岩が否定するファッションの力で、藤岩をサポートする。藤岩に対して聞こえよがしな陰口を叩く女の子たちに対して校閲で学んだ知識を武器に啖呵をきる。一方、藤岩はファッションの力を借りて自分の好きな対象である作家に会いにいく。

 悦子にとっての好きな対象がファッションで、藤岩にとっての対象が作家であり尽力してきた校閲の仕事なのだとしたら、悦子は藤岩が愛してやまないものを認めた上で自分が愛しているものを認めさせたのである。藤岩もまた同じだ。この2人の憎まれ口を叩きあいながらの友情は、今後の物語を強くひっぱっていくことになるだろう。

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