福山雅治の芝居は“環境”をつくり出す 『SCOOP!』都城静役に見る演技の本質
このCDには劇中の台詞がいくつか散りばめられているが、どうか静のことばを注意深く聴きとってほしい。
福山が、いかに、その都度、発声方法を変えているかがわかるはずだ。そして、それは静という人物の多彩な側面を表しているというより、そのシーンを成立させるための変幻なのだということが示されている。
そして、そのことばのありようが、川辺の音楽といかに融合しているかも体感できる。
声を、いかに響かせるか。あるいは、響かせないか。虚勢とカモフラージュが綯い交ぜになった都城静というキャラクターを演じながら、福山は作品の“内装”をかたちづくる。
サントラでは主に、二階堂ふみとのやりとりが中心となっている。もう一度、映画を観れば、福山が、吉田羊や滝藤賢一、そしてリリー・フランキー(彼もまた、違った意味で役の“主語”に支配されない特異な俳優である。彼が福山と親交が厚いのは必然と言えるだろう)、それぞれと相対するとき、いかなる環境づくりをしているかが、明瞭になるだろう。彼は状況を整え、その状況を充分に活性化させる、きわめて地道なコーディネーターなのだ。
いま、福山雅治を正当に発見する契機が訪れている。
■相田冬二
ライター/ノベライザー。雑誌『シネマスクエア』で『相田冬二のシネマリアージュ』を、楽天エンタメナビで『Map of Smap』を連載中。最新ノベライズは『追憶の森』(PARCO出版)。
■公開情報
『SCOOP!』
全国公開中
監督・脚本:大根仁
出演:福山雅治、二階堂ふみ、吉田羊、滝藤賢一、リリー・フランキー
(c)2016「SCOOP!」製作委員会
公式サイト:scoop-movie.jp