S・キング原作の最注目ドラマ『11/22/63』がついに日本上陸! いま“大統領暗殺”を描く意義

『11/22/63』が映像化された意義

 また、超能力とタイムトリップという手法の違いはあれど、アメリカの大統領をめぐって「主人公が孤軍奮闘してなんとか未来を変えようとする物語」として、キング作品の愛読者なら初期の傑作『デッド・ゾーン』を思い出す人も多いはずだ。きっと、それこそが『11/22/63』がキング・ファンから絶賛で受け入れられた理由の一つであったに違いないし、その原作の発表から5年を経て、アメリカ大統領選の年=2016年に映像化されたことの意義についても、いろいろと思いを巡らさずにはいらない。

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 物語の主な舞台は60年代でありながら、そんな極めて現代的な作品『11/22/63』。製作総指揮を務めるのは、『ロスト』で現在に連なるテレビシリーズ全盛時代到来の立役者となり、さらに『スター・トレック』&『スター・ウォーズ』を見事スクリーンで再起動させて今やハリウッド・ナンバーワンのプロデューサー/監督となったJ・J・エイブラムス。同じく製作総指揮、そして脚本にはスティーヴン・キング本人も名を連ねている。主演は、『スパイダー・マン』シリーズでのブレイクを経て、アカデミー賞で司会(2011年)も務めたジェームズ・フランコ。そのジェームズ・フランコは、全9エピソード(本国では第1エピソードが2本分の長さのパイロット版として製作されたため全8エピソード)のうち2エピソードの監督を自らが務めるほどの力入れようである。

 「こんな顔合わせ、これまではハリウッドの大作映画でしか考えられなかった!」というのも、現在となってはわりと当たり前のこととなっているわけだが、豪華な座組に名前負けすることなく、実際の仕上がりにおいても圧倒的なおもしろさの『11/22/63』。大統領暗殺ものとしても、タイムトラベルものとしても、過去にまったく例がないような仕掛け(例えば本作では、よほど慎重かつ確固たる行動をとらない限り、歴史の改変は歴史そのものの力によって押し戻されるという新概念が導入されている)が張り巡らされている本作は、「これを観なければ現在のアメリカの映画界/テレビ界について語れない」と断言したくなる、2016年最重要作の一つだ。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)発売中。Twitter

『11/22/63』プロモーション動画

■番組情報
海外ドラマ『11/22/63』
8月11日(木)からスターチャンネルで独占日本初放送(全9話)
【STAR1】(字幕版)8月11日(木)より毎週木曜よる11:00
【STAR3】(二ヵ国語版) 8月15日(月)より毎週月曜よる11:30
製作総指揮:J・J・エイブラムス、スティーヴン・キング
原作:スティーヴン・キング
出演:ジェームズ・フランコ、サラ・ガドン、クリス・クーパーほか
スターチャンネル公式サイト:http://www.star-ch.jp/
(c) Warner Bros. Entertainment Inc.

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