安藤政信、映画俳優として再ブレイクの兆しーー40代、肉体を捧げる演技の色気
41歳、安藤政信がいま格好良い。長谷川博己、伊勢谷友介、加瀬亮ら同世代のアラフォー俳優の中でも、彼が放つ“色気”は独特なものがある。日本人離れしたルックス、幅広い役柄をこなす演技力は多くの映画監督から愛されてきたが、その魅力は40代に入ったいま、さらに輝こうとしている。
1996年の北野武監督作品『キッズ・リターン』で映画デビューを果たした安藤はその年の映画賞を総ナメにし、日本映画界に新風を送り込んだ。ボクシングの世界でのし上がり、やがて挫折を知る若者シンジを演じた安藤は、デビュー作から映画に“肉体”を捧げていた。当時、プロのボクシングトレーナーのメニューをこなし、ダウンシーンは撮影後に医者が呼ばれるなど、リアリティの追求から安藤の役者人生はスタートしているのである。
世の中に強烈なインパクトを与えた桐山和雄役の『バトル・ロワイアル』、松田龍平と男同士のラブシーンを演じた『46億年の恋』、花魁・土屋アンナを支えづけた清次役の『さくらん』など、その確かな演技力で日本映画界に欠かせない存在となっていくが、2008年公開の『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』を最後に活躍の場を数年間中国に移してしまう。
安藤は「日本映画のオファーがなかったわけじゃないんですよ。ただ、自分を見せられるような役はなくて……正直、自分じゃなくてもいいんじゃないかっていうものばかりで『だったらやんねーよ』と」(引用:安藤政信インタビュー 10代20代を経ていま、感じる「生の感覚」)と、2011年の『スマグラー』出演時のインタビューで語っている。約束されていたかのように見えたスター街道からハズレ、中国へ進出後は当時の所属事務所を退社し、一時期は引退説まで噂された。『キッズ・リターン』ラストのシンジの台詞「もう終わっちゃたのかなあ」を想像したファンも少なくないはず。しかし、『GONINNサーガ』で数年ぶりの復帰を果たすと、彼がまったく“終わってなどいなかった”ことが分かる。
「来年で俳優生活20年ですが、本気になってきたのはここ最近です。(中略)自分はこれまで、仕事に対して真摯に向き合えない時もあって、それはあまりにも傲慢だった」(引用:安藤政信 事務所退社後3年間のフリー活動を経た胸中)と復帰後のインタビューで語っているように、今年公開の『セーラー服と機関銃 卒業』や『貞子VS伽椰子』での演技を観ると、いまは作品自体を楽しみながら役を演じている印象を受ける。そして、外国映画への参加、事務所退社後のフリー期間、“結婚”を経て、40代の安藤政信の代表作となりそうなのが『花芯』だ。