SNSは“死者の恨み”も共有する……全編PC画面で展開するホラー『アンフレンデッド』の革新性

『アンフレンデッド』が描くSNSの恐怖

 美人で学園の人気者だったローラは、パーティーでひどく泥酔した挙句、脱糞してしまった。たった一度の醜態は何者かに撮影され、YouTubeに「ローラ・バーンズ、死にやがれ」というタイトルでアップされてしまい、犯人がわからないままに、いじめを苦にした彼女は自殺を選んでしまったのだった。「お前たちの汚い秘密を暴いてやる」「クズどもに復讐してやる」「PCを切ったら死ぬ」という宣言のもと、ブレアの怨霊は彼らの秘密の関係や隠していた罪を明るみにし、断罪しようとする。PCモニター上に現れる様々なウィンドウを通して、インターネットに常日頃から慣れ親しんでいるアメリカのティーンのリアルな会話のやりとりや恐怖への対応など生態が伺えてくるのは、とても興味深い。また、ブレアがその時の気分に沿ってiTunesでかける音楽が、そのまま劇伴となっているのも新鮮な表現で、彼女の気持ちをダイレクトに代弁してくれている。

 PC上ですべてが展開していくという手法は、恐怖表現においても有効に作用している。PCが乗っ取られて勝手に操作される怖さは、いまや多くの人がリアリティを持って感じ入ることができるだろう。また、SNS上での人間関係がいかに虚構に満ちたものかを暴かれたうえ、その体験も共有されてしまうのは、まさにSNS時代の悪夢を描いているといえる。

 映画が終わる時、PCからはEldar Tagiev & Tommy Simpson feat. Tiffany Wanによる楽曲「Ghost In My Head」が流れている。辱められた者の恨みは、死後も残り続けるのだ。

(文=常川拓也)

■公開情報
『アンフレンデッド』
7月30日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋HUMAXシネマズほかにて公開
監督:レヴァン・ガブリアゼ
脚本:キール・キムジー
製作:ジェイソン・ブラム
出演:シェリー・ヘニング、レニー・オルステッド、ウィル・ベイツほか
配給:ミッドシップ
2015/アメリカ/83分/ビスタ/原題:Unfriended 
(c)2016 Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:unfriended.jp

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