『太陽』はなぜリアルに感情移入できるのか? 入江悠監督が“不寛容の時代”に投げかけたもの

入江悠が『太陽』で描きたかったもの

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 最後に、撮影で苦労したシーンを入江監督に訊いてみた。「もっとも苦労したのは、クライマックスのある長回しの1シーン=1カットです。俳優が部屋に入ってきて、ある事件が起こり、取り返しのつかない事態になってしまう、というのを1カットでとらえようと思ったのですが、俳優さんの動きがかなり複雑かつ、芝居も難しいシーンだったので、何度も繰り返し挑戦しました。また、部屋の中と外の光の加減にもこだわったため、1日目では撮り終わらず、別日にもう一度チャレンジしてなんとかOKがでました。このシーンはOKが出た時に、思わずキャスト・スタッフ全員から拍手が起こりました。それ以外では、「橋のシーン」で夜から朝の日の出などを毎日狙っていたので苦労しました。極寒の山の中だったので寒かったのと、撮影が困難な場所だったので皆、そうとう疲れていました」

 入江作品のひとつの特徴である長回しのシーンにも期待して、是非とも劇場で見て欲しい。きっと身につまされる体験とともに、自身の問題として何か感じるものがあるはずだ。そのような経験を日本映画でする、数少ない機会になると思う。

■昇大司
1975年生まれ。広告代理店にて、映像作品の企画などを行う。好きな映画は『アマデウス』『ラストエンペラー』『蜘蛛巣城』など。Twitter

■公開情報
『太陽』
4月23日(土)より角川シネマ新宿ほかにて全国ロードショー
出演:神木隆之介、門脇麦、古川雄輝、水田航生、村上淳、中村優子、高橋和也、森口瑤子、綾田俊樹、鶴見辰吾、古舘寛治
監督:入江悠
脚本:入江悠、前川知大
原作:前川知大 戯曲「太陽」(第63回読売文学賞戯曲・シナリオ賞受賞)
企画・製作:アミューズ、KADOKAWA
配給:KADOKAWA
2016/日本/129分/5.1ch/ヨーロピアン・ビスタ/カラー/デジタル
(c)2015「太陽」製作委員会
公式サイト:eiga-taiyo.jp

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