芳根京子、『いつ恋』最後のキーパーソンに選ばれた理由 二面性を持つキャラと演技力に迫る

 「おなかすいてたん?」「盗らんでも、言うたら貸したのに、アホやなあ」と、ひったくり犯の青年に優しい言葉を投げかける彼女に、その直前までの勢いとのギャップを感じ、これまで追いかけて見てきた視聴者ならば、その隣で彼女を見つめていた音のキャラクターと重なる部分をいくつも感じたことだろう。まさに“強さとかれんさ”と“明るさとけなげさ”を兼ね備えていることがはっきりと見え、この役は彼女に相応しかったと理解できるのだ。

 2016年に入ってからの彼女の活動は、ドラマでの演技よりもCMで見かけることのほうが多くなっている。それもまた、15秒の間で好感を与えることが重要となるCMの世界で、彼女の外見から窺い知れる“強く明るい”姿がぴったりであるということだろう。JR東日本の駅に設置されているコンビニエンスストア「NewDays」のCMを昨年の11月から務めているが、一番最初のバージョンで、お弁当を美味しそうに食べているだけのCMは、とくに彼女のこれまでのイメージにぴったりである。ちょうど電車内のモニターでは音が出ないということもあって、彼女がお弁当を食べている映像しかほとんど映らないわけだが、見ているだけで幸せな気分になるのだ。

 今週からは、アサヒ飲料の「三ツ矢サイダー」のCMで福士蒼汰と高田純次と共演する。すでにホームページで公開されている3パターンのCMを見ると、「登場編」と「走る兄編」両方で、大きく声を張りながら走る彼女の姿が見られる。現在放送中の「代々木ゼミナール」のCMでも大声で叫ぶシーンが印象的であり、これは彼女の演技の十八番となっているのだ。叫ぶ演技となると若手女優ではとくに恐怖や悲しみを伴った演技のイメージが出てくるが、とてつもなく楽しそうな叫びを上手く体現できる彼女は、やはり稀代の天才女優であると言っても過言ではない。

 今年の夏には、またしても福士蒼汰と共演するスペシャルドラマ『モンタージュ 三億円事件奇譚』にヒロインとして出演する。三億円事件を題材にした人気漫画を原作にした本作は、2013年の秋に映像化のニュースが飛び込み大きな話題となった。3年越しに実現した、かなりの大型プロジェクトであることが伺えるだけに、そのヒロインという大役をどう演じるか、心配は微塵もなく、ただただ期待が膨らむだけだ。今年はまだ映画出演の情報が出ていないが、彼女の躍動的な演技を大スクリーンで観たいと、とにかく待ち望んでいる。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

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