『つむぐもの』キム・コッピ単独インタビュー
キム・コッピが語る役者としてのポリシー、そして韓国映画と日本映画の出演を通して感じること
「日本映画のスタイルはすごくいいなと思う反面、もどかしいと思うときもある」
ーー韓国はプヨ群で撮影されているんですよね。
コッピ:そうです。この作品の舞台になっているプヨ郡と福井県丹南地域は友好交流都市で、似ている部分も多いんです。私は福井県のことをそこまで知っているわけではないので、比べることは難しいのですが、プヨ郡は韓国の人たちにとってもよく訪れる場所ではないんです。歴史がある場所なので名前は有名ですが、大都市というわけではなく、あまり発展もしていません。文化財があるということで、よく学校の修学旅行で行く場所になったりしますね。
ーー今回コッピさんが演じられているヨナは、“介護”と“和紙”に携わる役ですが、演じる上で調べたりしましたか?
コッピ:介護に関しては、ヨナは専門的に介護をしているという設定ではなく、むしろ知らないほうがいいぐらいだったので、あえて事前に何かを知ったり習ったりはしませんでした。和紙に関しても、劇中で具体的に習うというシーンがなかったので、むしろ知らないほうがいいのかなと思って、事前に調べたりはせずに、ヨナと同じように、私も現場で実際に見ながら学んでいくことが多かったですね。
ーー撮影が終わってから詳しくなりましたか?
コッピ:本当にたくさんのことを覚えたんですけど、いま同じことができるかと聞かれたら「はい」とは言いにくいですね(笑)。でも、どういう素材を使うか、どのような過程で作られるかという一連の流れを教えてもらう作業は、とても楽しかったです。
ーー撮影現場でも日本映画と韓国映画の違いを感じることはありますか?
コッピ:撮影での違いはかなり感じますね。やはりその国によって、文化的な特徴や雰囲気があるので、それが現場にも表れているように思います。韓国の場合、よく言えば、柔軟性があるというか、撮影が非常にフレキシブルなんです。ああいうふうにもできるし、こういうふうにもできるといったように、非常に可能性が多くて、変化も多い現場なんですね。でも日本の場合は、決められたものがあって、その通りにしっかりやっていくんだなと感じることが多いです。それもすごくいいなと思う反面、少しもどかしいと思うときもありますね。あともうひとつ大きな違いは、日本は商標を使わないで、見せないようにしますよね。韓国はドラマだと見えないようにすることもあるんですけど、映画だと企業に協賛してもらってあえて見せたりするほど堂々と見せます。日本みたいに新しくパッケージやラベルまで新しく作るということはまずないです。日本でも協賛してもらう作品はあるとは思いますが、ポテトチップスの袋やタバコのパッケージなどをわざわざ新しく作ったりするのは不思議に感じます(笑)。
ーー韓国映画や日本映画も含め、どのような作品に出演するか、判断基準みたいなものはあるんでしょうか?
コッピ:韓国映画の場合は、そこまで厳格に選んでいるわけではありませんが、ありきたりな作品ではないものに出たいなと思っています。人物が生きているということが感じられるような作品で、演じる役もありきたりではなく、リアルさがある役柄を好んでいます。日本をはじめ海外の作品だと、絶対にこれは違うと思わない限りは、どんな作品にもチャレンジしたいと思っています。日本映画には何作か出演してきて、経歴も増えたんですが、その他の海外作品の場合はまた新しいスタートになるので、経験を積むということに重きを置いて、もっと自分の範囲を広げるためにいろいろな作品に出演していきたいですね。
ーー具体的に挑戦したいジャンルや役柄はありますか?
コッピ:もちろん今も好きなんですけど、昔は犬童一心監督や岩井俊二監督のような、落ち着いた雰囲気を持った日本映画が好きだったんです。でも最近、実はコメディにハマっていて、コメディ映画がすごく好きになったんですよ。なので、シットコムのようなコメディ映画に出てみたいと思っています。
(取材・文=宮川翔)
■公開情報
『つむぐもの』
3月19日(土)より、有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー
出演:石倉三郎、キム・コッピ、吉岡里帆、森永悠希、宇野祥平、内田慈、日野陽仁
監督:犬童一利
脚本:守口悠介
主題歌:「月の砂漠」城 南海(ポニーキャニオン)
配給・宣伝:マジックアワー
2016/日本/カラ—/DCP/ヨーロピアン・ヴィスタ/5.1ch/109分
(c)2016 「つむぐもの」製作委員会
公式サイト:www.tsumugumono.com