異色の医療ドラマ『フラジャイル』最終回へーー「100%の診断を下す」医師はどんな物語を紡ぐ?

 そのような「100%の診断を下す」ことをモットーにした冷徹な医療ドラマのバランスを保つために描かれる人間ドラマは、患者よりもメインキャラクターたちにフォーカスを当てている。たとえば野村周平演じる、医大を中退し凄腕の検査技師・森井は、終盤で病理診断部を辞めて医者になる夢を追う。そのきっかけとなる第5話では、関ジャニ∞の安田章大演じる余命いくばくもない青年との交流が描かれており、このエピソードは他の回と比べると少しドラマ的すぎる側面もあったが、終盤への伏線としては充分である。

 元SKE48の松井玲奈が演じるミステリアスな製薬会社社員・火箱は自社開発の新薬の治験参加を促すために、岸に近付く。この火箱の行動が、最終回へ向けた大きな話の転機になることが、先週放送の第9話で明らかになった。宮崎の幼馴染である青年(小出恵介)が、余命僅かの膵癌であることがわかり、治療の術が無い中で、この火箱の会社が開発した新薬だけが唯一の希望であることがわかる。報告書に目を通していた岸が、何かに気が付いたところで、幕が閉じ、最終回へと続くのである。

 この新薬が本当に患者の命を救うものなのか、それとも裏に何らかの嘘が隠されているのか、それが最終回の大きなテーマとなるのだろうか。悩ましいのは、ハッピーエンドには結びつかない後者のほうがドラマ性が強いものに成りうるということである。しかし、どのような結末を迎えるにしても、数多くの人気ドラマを手掛けてきた橋部敦子の脚本と、石川淳一の演出にかかれば、見応えのあるエンディングとなることは間違いないであろう。第9話にして大きく視聴率を伸ばしていることも考えれば、続編が制作されることにも期待が持てるのではないだろうか。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

ドラマ情報
■『フラジャイル』
出演者:長瀬智也、武井咲、野村周平、小雪、北大路欣也ほか
原作:草水敏(「フラジャイル」)、恵三朗(講談社「アフタヌーン」連載)
脚本:橋部敦子
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/FG/index.html

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