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橋本環奈はアイドル映画のあり方を変える?『セーラー服と機関銃』シリーズの歴史的経緯から考察

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 アイドル映画の金字塔である『セーラー服と機関銃』シリーズ。橋本環奈主演で、続編にあたる『セーラー服と機関銃-卒業-』が、角川映画40周年記念作品として現在公開されている。主役となる目高組四代目組長の星泉役は、薬師丸ひろ子、原田知世、長澤まさみが代々受け継ぎ、まさに有名女優への登竜門となってきた。今回、四代目に抜擢された橋本環奈にとっても、大きく知名度を上げるきっかけにはなったはずだ。往年のアイドル映画の復活を予感させるこの出来事はいったい何を意味するのか、検証してみたいと思う。

 元祖であり、アイドル映画の教科書と言っても過言ではない薬師丸ひろ子主演の『セーラー服と機関銃』が公開された1981年は、1980年に伝説のアイドル山口百恵が引退し、ピンクレディーが解散を発表。アイドル業界に一つの終止符が打たれ、新しい時代の幕開けとなった年だ。多くのアイドルはポスト山口百恵の座を狙い、一方でマスコミやファンは新しいカリスマの登場を心待ちにしていた。当時の角川映画は大作の興行収入が芳しくなく、予算をかけず興行収益を見込めるアイドル映画やアニメなどのプログラムピクチャーにシフトチェンジ。このタイミングで作られたのが、当時17歳の薬師丸が主演した『セーラー服と機関銃』だ。

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 同作は82年の邦画興行収入1位となり、主題歌も大ヒット。アイドル映画の金字塔と言われる理由は、従来のアイドル映画は、原作重視でその役にアイドルを当てはめがちだったものを、『セーラー服と機関銃』は、例え原作が崩壊しようとも等身大の薬師丸の存在や個性を引き出し、みんなで光らせるという、スターシステムによるアイドル映画のフォーマットを作ったからと考えられる。薬師丸は従来のアイドル歌手とは違い、角川映画の女優であることで、ジュブナイル的な新しいアイドル像を確立。角川が得意とするメディアミックスの広告戦略により、神秘性をも感じさせる存在へと上り詰めた。

 薬師丸の成功ののち、角川がオーディションで発掘した原田知世は、ボーイッシュで荒削りな薬師丸に対し、繊細でかわいらしいのが魅力だった。1982年に14歳でフジテレビのドラマ『セーラー服と機関銃』でデビューし、翌年の映画『時をかける少女』で大ブレイクすることに。80年代は松田聖子、中森明菜、小泉今日子などが続々と登場し、アイドル黄金期を迎えることになるが、テレビ出演が少なく映画ベースで活動する特異なアイドルとして、薬師丸と原田はファンの心を掴んだ。結果的に2人はライバルとしての相乗効果もあって、角川のアイドル映画黄金期を支えることになった。そして薬師丸は本格派路線に、原田はライトな作品に、それぞれの道を歩んで行く。

 しかし、80年代後半からは、おニャン子クラブの登場によりアイドルの形態が代わり、また映画界もフジテレビの本格参入で大きく形を変えた。テレビ番組との相乗効果で映画興行を一大イベントとするその手法は、従来的なスターシステムのアイドル映画を成り立たなくさせ、『セーラー服と機関銃』のような作品も見られなくなる。

 すでに過去のコンテンツとなった『セーラー服と機関銃』だが、00年代に入るとまた変化が起こる。長澤まさみを主演に、2006年にTBSドラマでリメイクされるのだ。同年には、原田知世主演による大ヒット映画『時をかける少女』がアニメ映画としてよみがえって大ヒットし、角川映画第一作の『犬神家の一族』も再映画化されるなど、リメイク作品が盛り上がりを見せた。そうした文脈にあったドラマ版『セーラー服と機関銃』は、長澤がテレビドラマ初主演を飾るうえで絶妙なコンテンツだったといえよう。長澤は、東宝シンデレラガールでグランプリを取って芸能界入りし、東宝芸能に所属している、いわば映画畑の女優だ。同世代には綾瀬はるかや上戸彩、新垣結衣などの実力派女優が並ぶ中、テレビ界で独自のポジションを示すうえで、映画文脈の濃い同作への出演は効果的だった。実際、その後に主演を果たしたドラマ『ラスト・フレンズ』(2008年)では、上野樹里と共演を果たし、若手演技派女優としてのイメージをより確かなものにしている。

 『セーラー服と機関銃』はいつの時代においても、アイドルまたは新人女優にとって、他とは違う希少性をアピールするコンテンツであり、新時代の幕開けを予感させるスターを輩出してきたのだ。

      

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