池松壮亮がラブシーンに起用されまくる理由 そのドライで甘美な魅力を読む
同世代で双璧をなす高良健吾もまた、吉高由里子の『蛇にピアス』や鈴木杏の『軽蔑』などでダメ男としてラブシーンを演じているが、高良の場合は狂気にも似た激しい感情を表に出し、それが女性を虜にしている。このエロスは、豊川悦司や成宮寛貴などにも通じるものだろう。対して、池松のやさぐれたエロスは一時的には女性を惹きつけるものの、最終的には見切りを付けられる場合が多い。たとえ濃密に肌を重ねようとも、結局はすれ違うだけの関係であり、だからこそ池松の濡れ場は刹那的で甘美なのだ。
2月からdTVでは、寺島しのぶ演じる専業主婦との15歳差の不倫を描く『裏切りの街』が配信されているが、これまで数多くの濡れ場を演じてきた寺島しのぶは、池松のラブシーンについて、「職人のような人でした。2人で目を合わせながらその場で感じるお芝居をするのは快感でした」と絶賛している。また、吉田大八監督は『紙の月』で池松を起用した理由について「りえさんに差し出すなら、池松しかいない」と答えるなど、強い信頼を得ていることが伺える。
昨年は『MOZU』の狂気に満ちた殺し屋役として、女装からアクションまでこなし、一般的な知名度も高まった池松。彼のラブシーンは今後、日本の映画やドラマに新たな潮流を生み出すに違いない。
(文=本 手)