『残穢』公開、そして6月は『クリーピー』も! ホラー・クイーン竹内結子の帰還を祝う

ホラー・クイーン竹内結子の帰還

 そんな竹内結子が、1998年の『リング』以来、18年ぶりに正真正銘のホラー映画に帰還した作品。それが、今週末に公開された中村義洋監督の『残穢【ざんえ】—住んではいけない部屋—』だ。今でこそ中村義洋監督といえば『チーム・バチスタの栄光』、『ジェネラル・ルージュの凱旋』、『ゴールデンスランバー』、『白ゆき姫殺人事件』といった人気小説を手堅く映画化する職人監督のイメージがあるが、元はといえば『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズの初期演出家にしてナレーター、映画作品でも『わたしの赤ちゃん』や『絶対恐怖 Booth ブース』といったホラー作品の佳作を残してきた。これは期待せずにはいらない。

 興味深いのは、本作『残穢』で竹内結子が演じている主人公の小説家が、ちょうど『リング』における松嶋菜々子演じるテレビ局ディレクターと同じような“観察者”のポジションにあること。『リング』で竹内結子が演じていた女子高生のような禍々しい出来事の当事者となるのは、本作では女子大生役の橋本愛だ。18年の時を経た世代交代といえばそれまでだが、なかなか感慨深いものがある。

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(c)2016「残穢−住んではいけない部屋−」製作委員会

 ところが、最初は“観察者”でありながらやがて自分自身とその家族も禍々しい出来事の当事者となっていく『リング』の松嶋菜々子と違って、『残穢』の竹内結子は最後まで“観察者”のポジションであり続けるのだ。つまり、本作では恐怖に歪む結子の表情を拝むことはほとんど叶わない。近年低迷を続けるJホラー界において『残穢』は間違いなく久々に現れた良作であるが、結子ファンとしてはそこだけがちょっと残念だった。

 昨日(1月30日)、『残穢』公開初日の舞台挨拶で、竹内結子は次のような発言をした。「ちょうど18年前の今日くらいに『リング』でスクリーン・デビューして、今回はリベンジという形で出演したんですが、ホラーに関しては引退宣言させていただきたいと思います。(今後、ホラーの出演オファーがあった場合は)慎重に検討させていただきます。もし出るなら、飛び出してくる、怖がらせるキャラクターで出演したい」。
 
「おいおい! 何を言っているんだ結子!」と思ったのは言うまでもない。「せっかく18年ぶりにホラー・クイーンとして戻ってきたばかりなのに!」。でも、実はそんなに心配していない。竹内結子の次の出演映画は今年6月18日公開の『クリーピー』。あの黒沢清が監督と(共同)脚本を手がけた作品だ。竹内結子×黒沢清。まさにドリーム・タッグとはこのこと。一応、宣伝文句では“サスペンス・スリラー”ということになっているが、黒沢清作品がただの“サスペンス・スリラー”で収まるわけがないじゃないか。2016年邦画界最大のトピックは“ホラー・クイーン竹内結子の帰還”である。少なくとも、自分にとっては。

『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』予告篇30秒

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)、2016年1月16日発売。Twitter

■公開情報
『残穢【ざんえ】—住んではいけない部屋—』
公開中
原作:小野不由美 『残穢』(新潮社刊)
監督:中村義洋
脚本:鈴木謙一
出演:竹内結子、橋本愛、佐々木蔵之介、坂口健太郎、滝藤賢一ほか
配給:松竹
(c)2016「残穢−住んではいけない部屋−」製作委員会
公式サイト:http://zang-e.jp/

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