男性目線で描かれる異色のラブコメディ ザック・エフロン主演『恋人まで1%』の挑戦とは?
ザック・エフロン演じる主人公ジェイソンは、恋人を作る気はなく、真剣な付き合いはしない。気軽にセックスが出来る女性と中途半端な付き合いしかしない主義。同僚のダニエル(マイルズ・テラー)も、ジェイソン同様、バーやクラブで知り合った女性との一夜限りの関係を貫いている。親友マイキー(マイケル・B・ジョーダン)は既婚者であり、彼らの中で唯一ちゃんとした女性との付き合い方をしているかと思いきや、妻の浮気が原因で離婚することになってしまう。落ち込むマイキーのために、「彼女を作らず独身でいよう!」と、彼らはシングル同盟を結成する。そんな矢先に、ジェイソンの前に現れるのが、イモージェン・プーツ演じるエリーだ。いつも通りの軽い関係のつもりが、魅力的な彼女にどんどん惹かれていってしまうジェイソン。一方、ダニエルも、女友達としてずっと付き合ってきたチェルシー(マッケンジー・デイヴィス)と一線を越えた関係になってしまう。マイキーは、別れた妻への思いが断ち切れずにいる。シングル同盟を結成した手前、自分たちの恋愛観の変化について、打ち明けることができない3人。本作では、そんな彼らの、男の友情を貫こうとする気持ちと、変化する恋愛観の間で揺れ動く、心の葛藤がテーマになっている。そして、最終的にはそんな彼らの成長物語へと発展していくのである。女性がメインターゲットのラブコメディが男性目線で描かれることにより、男性には共感を呼び、女性には男の本音が垣間見れる内容になった。
監督を務めたのは本作がデビュー作となるトム・ゴーミカン。最初はお互いのことが好きではないという設定が、従来のラブコメディ映画の定番だったが、ゴーミカン監督はそれは現実味がないと思ったという。「周囲にはそんな映画は作るなと言われたけど、僕はなぜダメなんだ?と思った。その方がよっぽどリアルなのに」と語っているように、誰かと出会って楽しい夜を過ごしたらそのままセックスをするという、現代の若者のリアルな恋愛観が反映されている。その結果、本作にはラブコメディ映画によくあるような既視感はほとんどなくなり、ラブコメディというジャンルにおいて、新しい風を吹き込むことに成功したと言える。なお、ゴーミカンはハリウッドでも注目され、今後、ソニー・ピクチャーズ製作のラブコメディやワーナー・ブラザース製作のアクションコメディなどを製作する予定だという。
本国アメリカではR指定となった本作。最後に、MTVムービーアワード「ベストシャツレス演技賞」を受賞したザック・エフロンを始め、キャスト陣が体を張って挑んだ下ネタ満載の小ネタも押さえておきたい。本作ではラブコメディでは欠かせないコメディ要素もふんだんに取り入れられている。バイアグラを飲んで勃起が収まらないジェイソンが、排尿するために全裸で便器に向かって垂直にナニを突っ込むシーンや、エリーの誕生日パーティーに誘われたジェイソンが、ビックリするような姿で現れるシーンなどは、まさに『メリーに首ったけ』でキャメロン・ディアスが精液をヘアジェルと間違えて髪につけてしまうあの名シーンを彷彿とさせるのである。エフロン、テラー、ジョーダンの3人が織りなす、掛け合いの妙味にも注目だ。
(文=宮川翔)
■作品情報
『恋人まで1%』
公開中
監督・脚本:トム・ゴーミカン
製作:スコット・アヴァーサノ、ジャスティン・ナッピ、ザック・エフロン
出演:ザック・エフロン、イモージェン・プーツ、マイルズ・テラー、マイケル・B・ジョーダンほか
配給:アット エンタテインメント
配給協力:武蔵野エンタテインメント
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