子供向けの図鑑『はじめてずかん1000』がAmazonベストセラー1位に 5年前の本がいま売れる理由とは?

 12月18日のAmazon売れ筋ランキング「本」部門で1位になっていたのが、小学館の『タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000 英語つき』(小音声学館)である。初版は2020年、書店にある子供向けの本売り場では1年通して売られている定番の本が、なぜ今いきなり1位になったのか、推測してみたい。

5年前の図鑑がなぜこの時期にランキング1位に?

『タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000 英語つき』(小学館)

 『タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000』は、タイトルの通り、付属のタッチペンでページの写真に触れると、その対象物の名前がタッチペンについているスピーカーから音声で読み上げられるという機能がついた幼児向け図鑑である。おぼろげに言葉を話し始める0歳後半ぐらいから、かなり口が回るようになる小学校入学前くらいまでの子供を対象に、遊びながら色々な単語を覚えてもらうことを目的にした本だ。

 ページは「どうぶつ」「むし」「やさい」「きょうりゅう」などのカテゴリーにわけて、大量に写真を掲載した構成。さらにページに並んだ国旗にペンで触れると国名を読み上げてくれる「くに」のページや、春夏秋冬の季節にちなんだ文物を並べた「はる・なつ・あき・ふゆ」のページなど、やや抽象的な概念についても学ぶことができる。さらに各単語には日本語の読み方に加えて英語の読み方も書かれており、英語モードを選べばタッチペンがネイティブ発音の音声を読み上げてくれるのだ。

 さらに「タッチペンから音が出る」という機能を活かした遊びのページも充実。「げんこつやまのたぬきさん」や「むすんでひらいて」といった定番の歌に合わせてサウンドを追加して遊んだり、服を選んでコーディネートを組み立てるゲームなども掲載されている。現在我が家でも3歳の娘のオモチャとなっており、荒っぽくページを開閉しまくった結果かなりボロボロになりつつある。

 前述のように、この本は発売からすでに5年が経過しており、さらに一年間いつでも書店で購入できるベストセラーである。それがなぜこの時期にランキング1位となったのか。考えられる理由はひとつ。『タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000』は、クリスマスプレゼントとして最適すぎるのだ。

 実のところ、本書は子供向けの絵本としてはそこそこ価格が高い。Amazonで購入しても5,478円。タッチペンにはページに細かく印刷されたドットコードを高速で読み取り、その指示に従って音声を鳴らすという機能が搭載されており、それが付属している以上それなりの値段になることは納得できる。が、いくら音が出るとはいえ、子供向けの本に5,000円以上払うのは、親としてはちょっとドキドキするところがある。なんせ子供の本の扱いは荒い。それに5,000円というのはちょっと……。

くたびれるまで使い倒される、子供ウケ抜群の図鑑

 しかし、クリスマスとなれば話は別だ。本書は遊びながら色々なものの名前を勉強して、合間にサウンドギミックで遊んでみることもできるという本である。「物の名前を知ることができる」「勉強にもなる」という大義名分、そして普通に購入するにはちょっと高めの値段設定。普段子供におもちゃとして買い与える上ではちょっとハードルになるこれらの要素が、クリスマスという条件が与えられた瞬間に裏返り、「プレゼントにうってつけ」ということになるのだ。

 これは完全に自分の予想で、根拠と言えば自らの子育て経験くらいなのだが、おそらく親が直接自分の子供に『タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000』を買い与えるケースはそれほど多くない。大半が祖父母や親類、もしくは親の友人からのプレゼントなどの形で受け取っているのではないかと思う。親は日常的に子供に接しているので、子供が真剣に欲しいものを把握するチャンスが多い。その需要を把握した親からのプレゼントは、いわば「本命」である。「本命」でこの本をチョイスする幼児がいたとしたら、かなり勉強熱心な方だと思う。

 逆に言えば、プレゼントをあげる予定の子供からちょっとだけ距離がある立場の人が「そういえば、クリスマスのプレゼントって何がいい?」という状況になった時に、極めてチョイスしやすい内容・価格帯に位置しているのが『タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000』なのだと思う。遊ぶだけで勉強になるし、蓋を開けてみればページに押し当てるだけで音が出る不思議なペンがついていて子供も大喜び。プレゼントした側もきっちりウケを取れてよかったよかった……という暖かい光景が目に見えるようである。

 『タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000』は、これまで説明してきた絵本としては高めの価格設定、インタラクティブに物の名前を知ることができる機能性、そしてこれが一番大事なことなのだが、かなり高い確率で子供にウケる「タッチペンから音が出る」という要素から、年間通して誕生日プレゼントなどの需要のある本だと思う。それがまとまって爆発するのが、クリスマス直前の数週間ということなのだろう。なんせ昨年のクリスマスに実家から本書をプレゼントされた我が家では、子供がタッチペンで押しまくった結果すでにかなりくたびれており、これは本書が我が子に刺さった証拠と言えるだろう。幼児向けのプレゼントとして、ネタがまだ決まっていない方にはオススメしたい一冊である。

■書誌情報
『タッチペンで音が聞ける!はじめてずかん1000 英語つき』
著者:小学館
価格:5,478円
発売日:2020年6月17日
出版社:小学館

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