『薬屋』日向夏、『リゼロ』長月達平の新作も メディアミックスの新形態「ラノベアニメ」の可能性
新作のライトノベルとショートアニメが合体したプロジェクト「ラノベアニメ」が動き始めた。『探偵はもう、死んでいる』(MF文庫J)の二語十や『薬屋のひとりごと』(ヒーロー文庫)の日向夏ら、超人気のラノベ作家たちが描き下ろしたショートストーリーを縦型のアニメにしてネットで配信し、テレビでも放送するというものだ。すでに見たことのない物語が続々と繰り出されていて、ストーリーはどこに向かうのか、次は何が繰り出されるのかとファンをドキドキさせている。
「ラノベアニメ」は、ゲームや映像、音楽などを手がけるマーベラス、アニメビジネスのABCアニメーション、そしてエンターテインメント企業のバルスが共同で展開しているプロジェクトだ。バルスは社内にショートアニメ専門スタジオ「Ziine Studio」を設立し、『ラノベアニメ』として発信するアニメの制作をスタートさせた。
バルスがZiine Studioを設立した理由は、作品やIP(知的財産)を持つクリエイターや企業が、それらをアニメ化したくてもコストやスケジュールの問題があったり、アニメ化した後の収益確保が不安だったりする状況に対して、短期間で高品質のアニメを制作して提供できるようにしたかったからだ。バルスが持つ、人の動きをセンサーで取り込み映像を作るモーションキャプチャーの技術に、アニメのような絵を載せて違和感がないように見せる技術を組み合わせることで、ラノベ好きやアニメ好きが観ても違和感を覚えないアニメを作り出せるという。
「ラノベアニメ」は、そうしたアニメ作りのサービスを、具体例として見せるショーケース的な役割も担っている。6月12日から配信が始まった二語十原作・脚本でキャラクターデザインをtanuが手がけた『傷心タイムリープ』は、クリスマスに別れることになったカップルのうちの若菜美梨という女子が、思い悩んでいたらなぜか時間が付き合い始めた春へと巻き戻って、そこからやりなおしの時間を過ごし始めるというちょっと不思議な恋愛ストーリー。Ziine Studioではこれを、キャラたちの豊かな表情や仕草によってしっかりと描ききっている。
同様に配信が始まっている日向夏原作の『ファムファタル育成計画』は、付き合っていた男子に手ひどく振られた従妹の敵を討つため、身長170センチで体重が95㎏もある阿多川祐樹という“男子”が痩せて美少女の姿になって、従妹を振った男子に近づこうと計画するという、先が気になって仕方がない設定のアニメだ。脚本は『人生』(ガガガ文庫)の川岸殴魚、キャラクターデザインを桶乃かもくが担当。アニメでは、祐樹のぷよぷよとした太り具合が良い感じに表現されている。表情も実に豊かだ。
祐樹については、声を『弱虫ペダル』の小野田坂道役が知られる山下大輝が演じていて、いかにも太っている少年と言った声でキャラの特長を増幅している。これがファムファタル(魔性の女)となった時にどうなるかを思うとワクワクしてくる。
声については、『傷心タイムリープ』で美梨を演じているのが、『ウマ娘 シンデレラグレイ』のオグリキャップ役で注目を集めている高柳知葉。別れて落ち込んでいたところから、時間が巻き戻って驚き、前はどこですれ違ったのかを思いながら改めて関係を結ぼうとする美梨の情を演じきっている。オグリキャップとはまた違った演技に驚ける。