B≡FULLEST・中村朱里、小説『劇団拝ミ座』に感じたシンパシー「私たちのことを書いてる?って思った」
――もし、中村さんが演じるとなったら?
中村:いやぁ……めっちゃ難しいでしょうね! 選ばれたら大変。自分にはできないかもと思ってしまいます。観客としてなら、ぜひ観てみたいですけどね。舞台になったら、どうなるだろう?
リアルなところでいうと、和泉がたくさん衣裳を作るから、衣装チェンジも大変そうだなと思いながら読んでいました。「これは、どのタイミングで着替えればいいかな?」「ウェディングドレスを中に仕込むことはできないから、上着だけとってその上から着るのかな」とか(笑)。
――舞台経験があるからこそ、余計に想像が膨らむのでしょうね。演出面も考えてしまいそう。
中村:例えば……憑依中の出来事は遥の記憶には残らない設定なので、その間だけ紗幕が降りている演出が思い浮かびました。紗幕越しにぼんやりと光るライトが、幻想的な雰囲気を出してくれるだろうなぁ、みたいな。あと、和泉は部屋にこもって作業をしているらしいので、舞台の端っこに和泉の部屋を作っておいて、そこで常に和泉が衣装を作っていたら面白いなとも考えたりしましたね。
――すごい! どんどん浮かびますね。拝ミ座は亡き人が未練を残した場所などをそのまま舞台にしてしまう劇団なので、一般的な舞台演劇とは少し毛色が違いますが、近しい要素はあるのですね。
中村:そうですね。私が舞台の稽古をするときは、「この役は何を伝えたいのか」と、「この作品は何を伝えようとしているのか」という2個の視点で役を作っているんですけど、拝ミ座も、そういう見方で作っている感じがするんです。和泉は全体を事細かにリサーチして衣装を作るし、遥と雅は亡くなった人の背景を理解して気持ちを作るので。
ただ霊を下ろして未練があったシチュエーションを作るだけではなくて、そこに渦巻く人の思いを理解したうえで霊を下ろすというところが、しっかりしているなと。本当に劇団なんだなと感じます。
「疲れている人にこそ読んでほしいです」
――ちなみに。拝ミ座は遥、雅、和泉の3人からなる劇団で、すごくバランスの良いメンバーだなと感じますが、中村さんが所属しているB≡FULLESTも3人組ですよね。ユニットのバランスはいかがですか?
中村:すごく良いと思います。私たち3人は、もともと虹のコンキスタドールというグループで活動していたメンバーなんですけど、3人共自我が強いので話し合いをする場面では3人が1案ずつ出して譲らない場面も多いんですよ。でも、そうなったとしても、ただわがままになるのではなくて、ちゃんとお互いの案を尊重しながら話をまとめることができています。2案で戦う場合は、「絶対に残りの1人が中立になろうね」「どちらかにするのは止めようね」と決めているので、バランスが崩れることもないですね。
役割的にも、清水理子ちゃんが0から1を生み出せるタイプで、私が1から10とか、10から100にするのが得意なタイプで、鶴見萌ちゃんがオールマイティなので、バランスが良いんですよね。3人という小規模なグループになって、自分の意見が伝わりやすい環境になったのも、個人的には良かったなと思っています。
――拝ミ座も、そういう絶妙なバランスで成り立っているのかもしれませんね。
中村:そうですね。あと、B≡FULLESTって、“触れた物から思いが伝わって、歌が生まれる”という世界をコンセプトにしているので、『劇団拝ミ座』を読んだとき「あれ、これって私たちのことを書いている?」と一瞬思ったくらい、シンパシーを感じました。「物から感情が……!?」って。今後B≡FULLESTとして活動するうえでも、ためになる作品でした。
――いい出会いになったようでよかったです。では改めて。この作品をどんな人におすすめしたいですか?
中村:私は、これを読んで忘れかけていた温かい心や、優しい気持ちに触れることができました。なので、少し閉鎖的になっている人や、疲れている人にこそ読んでほしいですね! きっと心が温まると思うし、「人間っていいな」と思えるはずです。