中華後宮逆転劇『ふつつかな悪女ではございますが』アニメ化で注目 ジャンルのイメージをなぎ倒す小説&漫画の魅力とは?
共鳴する小説と漫画、そしてアニメへ
本作のヒットには、尾羊英によるコミカライズの存在も大きいだろう。中村颯希の巧みなストーリーと華やかなゆき哉の挿画が創りあげた物語の魅力はそのままに、愛あるキャラ解釈と豊かな表情、緩急あるコマ割りが光るコミカライズは「小説のこのシーンを絵で見たかった!」を気持ちいいほど叶えてくれる。とりわけ、最新8巻で本性を覗かせたとある人物の表情にぞくっとした人も多いだろう。小説と挿画によって読者の中で膨らんだイメージが漫画になることでバチッとはまる快さがたまらない、上質なコミカライズだ。
『ふつつか』には、儀式で行われる舞いや慧月の道術が纏う炎、尭明の龍気が顕れるシーンをはじめ、絵にしたときに映えるシーンが多いのも特徴。漫画によって視覚的なディテールが補強され、いっそういきいきとして魅力的になった「ふつつか」の世界を映像で味わえる日が待ち遠しくてならない。
小説は1~2巻が第一幕「波乱の入れ替わり」、3~4巻が第二幕「はじめての外遊」、5~6巻が第三幕「陰謀だらけの鑽仰礼」、7巻が第四幕「お忍び城下町」、8~9巻が第五幕「道術我慢の鎮魂祭」と、基本的に1幕2巻構成で刊行されている。
シリーズも10巻を超えるとなかなか手に取りづらいものだが、まずは気軽に、2巻まででいいから読んでみてほしい。きっとページを繰る手がとまらなくなって、気づけば次の巻に手を伸ばしてしまうはず。アニメが二人の「悪女」の物語にどんなふうに命を吹き込むのか、最新刊を読みながら期待して待ちたい。