ヴィンテージ玩具なぜ人気? 雑誌『まんだらけZENBU』とソフビイベント取材から見るトレンド事情
■お化け屋敷ソフビにご満悦!
――さっそくですが、今日購入したソフビはなんでしょうか。
かずお:ツクダの「お化け屋敷ソフビ」3体セットです。ずっと狙っていたので、購入できて本当に満足しています。この中の“お岩さん”が、バラでもなかなか出ない貴重品なのです。本当はセットでパッケージに入っている状態で完品なのですが、とにかく3体揃っているので珍しいですね。
――ユーモラスで愛らしい造形で素晴らしいですね。このソフビは何かの漫画やアニメのキャラではないのでしょうか。
かずお:オリジナルのソフビですね。ちなみに今回の5周年のイベントで、この“からかさ”も単体で出ていたんですよ。単体で6万円でした。ただ、お岩さんは単体でもそれなりに高いと思います。
――かずおさんのコレクター歴はどうですか。
かずお:僕なんか浅いですよ(笑)。現在、56歳で、25歳くらいの頃から集めているので、30年くらいですね。好きなジャンルはヴィンテージソフビで、コレクションの数は200~300体くらいですから、決して多くはないんですよ。最初に興味をもったきっかけは、小岩にある「さあどあんくる」の秋葉秀俊さんから教えていただいてからです。
■ヒーローよりも脇役が好き
――ヴィンテージソフビの中でも、どんなキャラを集めているのですか。
かずお:僕はどちらかといえばヒーローを集めていなくて、怪人や怪獣、お化けだったりと、“脇”の方が多いですね。もちろん、ヒーローは好きですよ。でもヒーローは全話を通して出てくるのに、怪獣や怪人は1話のためにわざわざ作られ、あっという間にヒーローにやられてしまう。そのための造形なので、余計に好きなのかもしれません。
――確かに、敵キャラって1回限りのためだけにデザインや着ぐるみを起こすわけで、贅沢な造形ですよね。かっこいい敵キャラもたくさんいます。
かずお:僕は劇団ひまわりに3歳から入っていて、子役の時の『イナズマンF』の第1話で、ウデスパーにさらわれる幼稚園児の1人だったのです。イナズマンに「助けて、イナズマン!」と言いながらも、ウデスパーがかっこいいなと感じていました。
――なんと! そうなのですか!
かずお:ほかにも、スタジオで『仮面ライダーX』の撮影の横でサソリジェロニモを横で見てかっこいいなと思いましたし、『レインボーマン』でも土の化身が好きでした。そういった原体験が、ソフビ好きにつながっているのかもしれませんね。
■高騰だけは勘弁して!
――コレクター歴30年のかずおさんが見て、今ソフビブームが起こっているのは、なぜだと思いますか。
かずお:やっぱりYouTubeで佐田正樹さんやイジリー岡田さんがソフビを取り扱っていますし、僕の知り合いでも青春秘密基地のアオバ君が頑張っています。YouTubeは世界中に発信されているので、影響力は大きいでしょうね。
――今日のイベントでも外国人の方がかなり並んでいました。
かずお:それに、海外にはソフビのおもちゃってなかったんですよね。ポリエステルだとか、プラスチックのものあったのですが、物珍しかったんでしょうね。リアルに作り込まれているソフトビニールの人形で、彩色も鮮やかで、インディーズなどもあるので、凄いと思われて、バーッと広がったんだと思います。
――ソフビの高騰をどのように見ていますか。
かずお:もちろん、注目されるのは凄く嬉しいんです。老若男女に知ってもらえるのは嬉しいし、いいことだと思います。でも、高くなりすぎると本当に困るんですよね。なんとかなりませんかね、という感じです。あまり高騰しないでくださいね、とは言っておきたいですね。
■ソフビブームはどこまで続く?
記者はほかにも購入した人に話を聞いたが、やはり人気の過熱ぶりを指摘する人が多かった。あるベテランのコレクターは「人気が高まるのは嬉しいが、高くなりすぎると買えなくなるので困りますね」と、やはり複雑な心境を覗かせていた。
また、「ここまで盛り上がると、来年はこの会場では周年イベントができないのでは…」と、混雑を心配する声も上がっていた。実際、記者は「まんだらけ」のイベントを何度か訪問・取材しているが、今回の盛り上がりは過去最大級ではないかと感じた。
ソフビはその造形的な魅力といい、世界に誇る日本の文化遺産と言っていいだろう。コレクターが増加するのは文化遺産を守ることにもつながるため、素晴らしいことだ。その一方で、投機目的で購入する人もいるようで、相場がどう変動していくのか、気になるところである。ソフビブームはどこまで続くのか、引き続き注視していきたい。