「ついにあの本屋まで」店内の柱には江口寿史のサインも……創業150年熊本最古の「長崎次郎書店」休業に

■創業150周年の名物書店

「長崎次郎書店」のWebサイトに掲載された休業のお知らせより

 ついに、あの書店が休業するのか――と、ネット上の書店ファンの間に衝撃が走った。1874年に創業し、熊本県熊本市にある県内最古級の書店として知られてきた「長崎次郎書店」が休業を決定したのである。休業日は6月30日。なお、上通商店街に支店として開業した「長崎書店」はこれまで通り営業する。

  長崎次郎書店は、一度諸般の事情で休業したこともあったが、2014年7月に開店して以来、熊本地震やコロナ騒動などを乗り越えて支持を集めてきた。折しも、今年は長崎次郎書店にとって、創業150周年というメモリアルイヤーであったが、売り上げの不振などを理由に休業となってしまった。

  公式ホームページでは、「地域のお客様はもとより、著者・出版関係者ならびに遠く県外・海外からもご来店いただくなど、多くの皆様に支えられ、1874年(明治7 年)に開店した当店は、本年150周年を迎えることができ、心から感謝いたしております」と感謝の言葉が綴られており、「6月30日まで短い間ではございますが、可能な限り通常通りの営業を心がける所存ですので、引き続きご利用をいただければ幸いです」と結んでいる。

 長崎次郎書店はその建築も風格を誇っていた。1924年に建設され、登録有形文化財にも登録されている。熊本市を代表するレトロ建築として知られ、建築好きの訪問も多かった。そして、目の前を路面電車が走っているため、書店をバックに電車を撮影する鉄道ファンも多く、様々な分野にファンが多かった。存在そのものが熊本の代表的な文化財として評価する声もある。

  アーティストの展示会なども盛んに催され、文化的な香りが高い書店であった。著名人も多く訪問しており、熊本地震のあとには村上春樹も訪れている。また、熊本県水俣市出身の漫画家の江口寿史もXを更新し、「えええー残念です、、、」「つくづく残念だなあ」と休業を惜しむコメントを寄せている。書店の柱には江口のイラスト入りのサインもある。

 多くの人に愛された長崎次郎書店。休業後については未定であるが、2階の「長﨑次郎喫茶室」については、これまで通り営業を続けるという。近年、「本を買う」という体験を楽しむために書店巡りをする愛好家が増えている。長崎次郎書店はそんな体験にうってつけの書店だ。熊本訪問の際は足を延ばし、大正レトロな空間で本選びを楽しんでほしい。

関連記事