日曜劇場『下剋上球児』のキーマン役、兵頭功海が語る原案書籍の魅力「モチベーションを上げてくれたら」

ドラマで描かれたもうひとつの下剋上

兵頭氏にとって『下剋上球児』は運命の作品だったという。

――可能ならば聞きたいのですが、兵頭さん自身の、最後の夏はどうだったんです?

兵頭:ピッチャーとして、プロをめざして野球をやっていたんです。でも、最後の大会で投げられなかった。ケガをして、イップス(心因性のできたことができなくなる症状)にもなった。投げられない中、夏の地方大会の決勝で負けたんです。燃え尽きた気がしましたね。

――もう一度投げるには、時間がかかる状況?

兵頭:大学野球の道もありましたし、声もかけていただいていました。でも、プロ野球選手になって、そこが最高到達点になっては、もったいない気がしてきたんです。すると、母が「東京に行ったらスカウトされるかも」と軽く言う。そのまま、何も持たずに「東京行ってきます」と飛び出して、今に至るのが僕です(笑)

――野球をやめると、ちょっと野球が嫌になる人も多いのですが、兵頭さんは?

兵頭:好きですよ、野球。そんな僕が日曜劇場で高校球児を演じることになった。「運命だなあ」と思いました。

――書籍とドラマは登場人物が違いますが、モデルらしき存在はありました。

兵頭:根室のモデルもわかりました。イメージしやすかったですよ。たぶん、アニメや漫画原作だと、そうはいかないでしょうね。ノンフィクションなので、ビジュアルがなくて事実だけです。顔でイメージが固まることもないですから。

――原案とドラマにいい距離感があったんですね。

兵頭:ドラマでは根室が下剋上した側になり、中沢元紀君が演じた犬塚翔がされる側に描かれました。中沢君とふたりで「そこを描けたらいいね」と話していたんです。実際、オンエアを見ると僕は中沢君の芝居に目が行く(笑)。最終回での根室がスカウトされるところを翔が見ている場面なんかは、「いい芝居されたなあ」と素直に思ってしまいました。

――役者としても、ライバル関係にあった?

兵頭:互いにリスペクトがある中で、いい関係だったと思います。中沢君も「根室のシーンばかり見てしまう」と言ってました(笑)。そういう関係が築けましたね。

――書籍版では、のんびり感さえあるチームでしたが、ドラマ版はまた違うチームになったんですね。

兵頭:僕が高校球児だったときはガチガチに野球をやっていましたが、このメンバーのこのチームには、このやり方が合う、というのがあるのだと思います。原案の白山高校の場合は、東拓司先生のあのやり方が合っていたのではないでしょうか。昨年、全国優勝した慶應義塾高校なんかは坊主頭にもしないですし、それが合う。ちなみに、僕は坊主でした(笑)

――この季節、高校球児たちはめっちゃがんばって練習している時期です。せっかくですから、球児にエールをいただけますか?

兵頭:僕なんかが言えたものではありません(笑)。でも、僕は野球をやっていたころ、アニメや漫画を見てモチベーションを上げることがよくあった。『メジャー』とか、『ダイヤのA』とか。だから、野球だけではなくいろんなことにがんばっている方々が『下剋上球児』を見たり読んだりして、モチベーションを上げてくれたらうれしいです。ひと冬だけでも、人もチームもめちゃめちゃ変われることがリアルに。

――どんどん、いいフォームになっていった根室みたいに成長してほしいですよね。

兵頭:あれ、最後は僕本来のフォームで投げてるんですよ。ただし、少し抑えめにしました。ホントはもっとダイナミックなんですよ(笑)

スタイリスト:Shinya Tokita ヘアメイク:木内真奈美

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