縦読み漫画賞、賞金総額1億円が登場 高騰の背景は、クリエイター争奪戦とIPビジネスの競争激化

■Amazonの縦読みマンガ大賞が賞金総額1億円に

  漫画賞「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」の賞金総額がなんと1億円と公表され、話題になっている。応募期間は2024年1月24日~5月6日で、審査員も声優の梶裕貴、コスプレイヤーのあかせあかり、漫画家兼VTuberの佃煮のりお、コミックマーケット準備会共同代表の安田かほると、非常に豪華なメンバーになっている。

  注目の賞金は総額1億円で、グランプリ受賞者(1名)には賞金1000万円、準グランプリ受賞者(4名)には賞金750万円がそれぞれ授与される。また、グランプリと準グランプリの受賞者は、受賞後6ヶ月間にわたり、作品の認知度を高めるための各種サポートを受けることができるという、かなり手厚いシステムになっている。

  参考までに集英社が主催する「手塚賞」と「赤塚賞」は、入選200万円、準入選100万円、佳作50万円。小学館が主催する「小学館新人コミック大賞」は大賞200万円、入選50万円、佳作30万円。KADOKAWAの「角川漫画新人大賞」は大賞300万円、準大賞100万円、入選50万円、佳作30万円となっている。なお、いずれの賞も副賞は除き、金額だけの提示としている。

  こうした既存の漫画賞と比較すると、「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」の賞金の高さは突出している。コンテンツビジネスの需要の高まりを象徴する出来事といえるし、一人でも多く、優れた新人を発掘したいという思惑が見て取れる。

  新人漫画家を発掘する手段は大きく分けて3つほどある。一つはコミックマーケットなどのイベントやネット上などで、本人に直接声をかける方法。もう一つは持ち込みに来た漫画家志望者の中から有望そうな人を捕まえ、将来の才能の開花を見越して、丁寧に育成する方法。そしてもっとも一般的なのが、多額の賞金を出す新人賞を開催して作品を募る方法である。

  いずれの手段も発掘の方法として有効だ。実際、それぞれの手段によって見出された新人の中から、のちにヒット作を生む漫画家が誕生しているためである。とはいえ、やはり出版社が力を入れているのは新人賞だろう。賞金の高額さもあって、漫画家志望者からの注目度も群を抜く。持ち込みで編集者と会話をするのが苦手という人でも応募できるし、言葉の壁もないことから、最近では海外からの応募者も増えていると聞く。

  これまで、リアルサウンドブックでは多くの出版社や企業を取材してきたが、昨今のいわゆるIP戦略とコンテンツビジネスは一発当たるとリターンが大きいのは事実である。一本の漫画から、ドラマ、アニメ、ミュージカル、音楽などあらゆる分野に派生できるため、出版社以外の企業の参入も目立つ。各社、ヒット作を生み出せる新人を喉から手が出るほど欲しているようだ。企業が今後も新人発掘に力を入れていくことは間違いないし、より高額な賞金を出す新人賞が登場する可能性もあり得るだろう。

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