倉田真由美が語る、太宰治のだめんず的な魅力 「作品に惚れられるし、太宰自身にも妄想を乗っけられる」
妄想癖はずっと続く
――もしかすると、お殿様が出したお触書きだけでも萌えたかもしれませんね。
倉田:ありえるよ! あの城に住んでいるお殿様はどんなお姿なんだろうと、妄想を膨らませていたと思う。姿が見れないなら余計に、お殿様が出したお触れ書きだけでも萌えたんじゃないかな。
――妄想力って無限大ですね。
倉田:だって、陰陽師の安倍晴明みたいな、実在したかどうかわからない人でも聖地巡礼に行く女性がいるでしょ。私も、ホームズに惚れているときにベーカー街に行こうと思ったくらいですから。佐々木小次郎に惚れていた時なんて、“佐々木”という名字だけでドキドキです(笑)。女性はビジュアルがなくても、片鱗だけでいい。妄想で補完できるので、気配がちょっとでもあればいいんです。
――そう考えると、『人間失格』はそんな太宰らしさが存分に発揮された文学作品だと思います。太宰に惚れる女性にとって、バイブルになりそうな一冊ですね。
倉田:太宰は逸話がたくさんあるから、妄想を膨らませやすい人物の筆頭格ですよね。きっと50年も、100年先も、太宰に萌える人ってずっと存在するんだろうなと思いますよ。そして、太宰萌えにはたまらない『人間失格』は、ずっと読み継がれる名作であり続けると思います。
――そういう意味では、今回の「まんがで読破」シリーズは、深淵なる太宰治ワールドへの入口にぴったりですね。
倉田:そうだね。文学ってとっつきにくいイメージがあると思うけれど、漫画なら手に取りやすいし、私もこの機会に読んでみたい作品が結構ありますよ。マルクスの『資本論』なんて、原著だとかなりしんどいものね(笑)。でも、この本を入口に原文に触れてみようと思う人もたくさんいると思うんですよ。漫画と原文、その両方に触れてみたらますます妄想がかきたてられちゃうかもしれないよね。
■書籍情報
まんがで読破 6巻『人間失格』
Teamバンミカス(漫画)/太宰治(原作)
発売日:2023年9月14日
発行:Gakken
判型:文庫
定価:792円(税込)