『シン・エヴァ』もう一つの物語とは? 小説版エヴァが描く“その後の世界”

 公開1カ月で興行収入70億円を稼ぎ出し、シリーズ最高のヒットとなった『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。迫力のバトルや多幸感の漂う結末をまた見たいと、何度も足を運びたくなるが、これで終わってしまう寂しさも浮かぶ。もっとエヴァ・ワールドを楽しみたい――。そんな思いを満たしてくれる小説が、エヴァのシリーズでメカニックデザインを手がけた山下いくとによる『エヴァンゲリオン ANIMA』全5巻(KADOKAWA)だ。

 『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を見て、エヴァのファンが結末とは別に驚き喜んだのが、第3村と呼ばれるコミュニティのシーンだった。劇場に張り出された映画の新ビジュアルに、鈴原トウジ、洞木ヒカリ、相田ケンスケといった碇シンジの同級生たちが登場したことからも想像できる事態が、より意外性を持った形で描かれていたからだ。

 これから見る人の興を削がないため、詳細については触れずにおくが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』はトウジ、ヒカリ、ケンスケを見捨てていなかったと言っておく。テレビアニメの『新世紀エヴァンゲリオン』や『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』、そして『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『:破』で3人に触れながら、『:Q』ではトウジの名が書かれたシャツだけが出てきた衝撃に、最良の答えが用意されていたとも。

 振り返ればテレビシリーズや、シンジと惣流・アスカ・ラングレーだけが浜辺に再生された最初の劇場版でも、トウジやヒカリ、ケンスケのその後は描かれなかった。貞本義行によるマンガ版『新世紀エヴァンゲリオン』に至っては、トウジはエントリープラグごと押しつぶされて死んでしまう。そんなトウジが、『エヴァンゲリオン ANIMA』ではネルフJPNという組織で副司令代理として活躍する。

 それだけではない。シンジはエヴァ初号機からグレードアップしたスーパーエヴァンゲリオンを駆って敵に立ち向かう。ヒカリもエヴァに乗って戦場に足を踏み入れる。アスカに至っては自らがエヴァとなり、巨大でグラマラスなボディをさらして暴れ回る。どうしてそんな展開が? 発端は、最初の劇場版を企画中に、庵野秀明監督から出た「メインの話以外にガンダム的にサイドストーリーを展開できないか」という問いかけ。これを山下いくとが受け、連載では序盤を陰山琢磨に任せつつ小説として描いてみせた。

 最初の劇場版でネルフ本部は、戦略自衛隊の侵攻によって葛城ミサトも含めた大勢の職員が殺された。生き残った者たちも、エヴァ初号機に乗り込んだシンジが発動させたサードインパクトによって、次々と液状化していった。『エヴァンゲリオン ANIMA』では、映画のようになってしまう直前、シンジが飛来したエヴァ量産機を撃退してサードインパクトの発動を回避する。

 碇ゲンドウや赤木リツコは、リリスが発生させた黒い結界にとらわれ行方不明となってしまったが、ミサトや伊吹マヤといったネルフ本部の面々は生き残った。ネルフ本部は戦自と和解し、ネルフJPNと名前を変え、ゼーレによる人類保管計画の再発動を防ぐ活動を始めた。

 3年が経った現在、ミサトが司令となったネルフJPNは、新たに0.0エヴァを3機作り、綾波レイの並列培養体を3人作ってNo.カトル、No.サンク、No.シスと名付け、0.0エヴァに乗せて地球の警備に当たらせてる。映画の途中で3人目になっていた綾波レイが、6人目まで増えていたのも驚きなら、No.シスは幼女姿というのも興味をそそられる設定だ。