『約束のネバーランド』クライマックス直前か?これからの展開を考察

 目を覚ますと、そこは人間の世界。鬼の世界から脱出することに成功したのだと、子どもたちは喜ぶ。飛行機が近づいてくる。中から出てきた男はマイク・ラートリーと名乗る。鬼の世界で子どもたちを食用児として管理していたラートリー家の当主代理だ。マイクは「私は敵ではない」と言って、子どもたちを保護する。

 かつて、この世界では鬼と人間が戦っていたが、今は別々の世界に分かれて暮らしていた。そして、人間が鬼に食用児を差し出すことで世界のバランスは保たれていたのだが、自分たちが食用児だと知ったエマたちグレイス=フィールド(GF)ハウスの子どもたちが孤児院(高級農園)から脱出し、反旗を翻したことで鬼の社会は崩壊。エマたちと共闘関係にあった鬼・ムジカとソンジュが鬼たちを統率することで、エマたちは開放された。

 同時にエマは「7つの壁」の向こう側にいる、鬼たちの頂点に君臨する神にも等しき存在(正式名称は謎の文字で表示されるため不明。ここでは「鬼の神」と表記する)と、鬼と人間の間で結ばれた“約束”を、新たに結び直していた。

 鬼の神との約束には「約束は上書きできない」「約束は破ることができない」「“ごほうび”は絶対に断ってはいけない」という条件があった。エマは、1000年前に結ばれた「鬼と人間の世界を2つに分ける」という鬼と人間の約束を踏まえた上で「食用児全員で人間の世界に行きたい」「これを最後に二世界間の行き来を完全に不可能にして」と新たな約束をお願いする。鬼の神は約束を聞き入れる。そして、その願いに対するごほうび(代償)をエマに求める。ごほうびの内容は劇中では伏せられており、先週やっと(エマの一番大切なものである)「きみのかぞくをちょうだい」と言われたことが明らかになった。

 しかし、エマの家族といえる子どもたちは全員人間の世界に向かうため、ごほうびは成立しない。そこで鬼の神は「いいよとくべつに“ごほうび”はなにもいらない」と言われたと、エマは言う。そんなことあるわけないだろうと子どもたちは信じないが「きみたちは1000ねんずっとうばわれてきたからね」「この1000年が代償」「君達には色々と楽しませてもらったからそれでいいよ」と、言われたのだとエマは説明する。

 このシーンに違和感が残るのは、最初の「~うばわれてきたからね」の部分は鬼の神の喋っている回想なのだが、その後のセリフはエマが喋っているという体で描写されているからだろう。その後、エマは人間の世界に行っても、どういう状況かわからず、決して前途が明るいわけではないと言う。そのため、
1)エマが「ごほうび」に関して(みんなを説得するために)嘘を言っている。
2)人間の世界が鬼の世界以上にひどい場所で一波乱ある。
3)エマの言うとおり「ごほうび」は必要なく、人間の世界に戻って、エンディングを向かえる。
の三つの展開のどれかを予想していたのだが、今週号でわかったことは、人間の世界には戻れたが「エマだけが行方不明になる」という展開だった。

 最後のカットで、どこかで倒れているエマに誰かが近づいてくる足元が映り、次回に続くため、おそらく“約束”の代償(ごほうび)として、エマだけが別の場所(鬼の世界か、人間の世界のどこか、あるいはまったく違う世界)に飛ばされたのだろう。

 今後はいなくなったエマを探すために子どもたちの新たな冒険がはじまるのか? それともエマが仲間たちの元へと向かう冒険がはじまるのか? はわからないが、続きがとても気になる連載の“引き”として、実に見事である。

 なお、人間の世界は2047年11月で、2020~30年代の「度重なる異常気象・天災・疫病・経済危機・食糧難」の後に10年に及ぶ世界大戦が起きた後、国境が撤廃され一つになっており、課題だらけだが、今は復興の最中らしい。コロナ禍にいる2020年現在の私達から見ると色々と考えさせられる未来である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『約束のネバーランド』既刊18巻(ジャンプコミックス)
原作:白井カイウ
作画:出水ぽすか
出版社:株式会社 集英社
公式サイト:https://www.shonenjump.com/j/rensai/neverland.html

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