Dios、『Mirrored』で獲得した新たな表現 新曲「火星より愛をこめて」とともに描いた物語と体温のすべて

Dios『Mirrored』で獲得した新表現

 8月23日、東京・EX THEATER ROPPONGIにてDiosのワンマンライブ『Dios Live "Mirrored"』が開催された。バンドセットでのパフォーマンスが中心だったこれまでのワンマンライブとは異なり、たなか(Vo)、Ichika Nito(Gt)、ササノマリイ(Key)の3人にサポートドラマーを加えた編成で臨んだ今回は、従来の照明演出に映像演出と舞台セットを導入。音楽と演出がシンクロする没入感を与える、新機軸の公演となった。

たなか(Vo)
たなか(Vo)

 タイトルの『Mirrored』は、たなかの「人と人とのすれ違いを嘆くのではなく、それでも通じ合いたいと願うことこそがコミュニケーションの本質である」という気づきから生まれたもの。見かけも話す言葉も同じはずなのに決定的に違ってしまう他者との関係性を、鏡に映る姿のようにすぐ目の前にいるのに決して触れられない隔たりとしてとらえ、“鏡”をモチーフに描く。そんなコンセプトが掲げられた一夜だった。

 19時を少し過ぎた頃、暗転したステージ後方のスクリーンに、アンドロイドのような人物が手紙を書きあぐねている映像が流れた。やがてIchikaが爪弾くハープの音が響き渡ると、ステージ上には巨大な月を模した舞台装置が浮かび上がる。続いてメンバーが登場し、「残像」からライブがスタートした。

Ichika Nito(Gt)
Ichika Nito(Gt)

 その後、たなかの「Diosです、どうぞよろしく」という短い挨拶を挟み、「喪失のワルツ」と「陽炎」が披露されたが、この間、舞台上の月はスクリーンへと姿を変え、蝋燭の火や揺らめく赤い波紋といった映像が投影されていた。続いてたなかが「この最悪の星で今日は踊っていってください」と客席に語りかけると、ブルージーな「劇場」、スタイリッシュなインディーポップ「One Night Cruising」、メランコリックな「逃避行」と、ミッドテンポながらも踊れる3曲が続いた。

ササノマリイ(Key)
ササノマリイ(Key)

 当日まで謎に包まれていた『Mirrored』の世界観が徐々に明らかになっていくなか、最初のMCでたなかは今回の公演について「新しく物語をひとつ作って、映画でも舞台でもミュージカルでもなくて、普通に音楽のライブではあり続けるんだけれども、それ以上の何かを皆さんに提示できたら」と語り、この夜が単なる音楽ライブではないことを明かした。

 続いて、Ichika、ササノ、サポートドラマーによるインストゥルメンタルセッションへ。そのままシームレスに「鬼よ」へとなだれ込み、ブラスサウンドを大胆に組み込んだファンクチューン「B.U.G.」が続く。イントロでたなかが「踊れますか?」と煽ると客席からは大きな声援が返ってきた。会場の熱がさらに高まっていくなか、バンドは「My Gasoline」「Virtual Castle」といった攻めたダンスナンバーを投下。たなかは「まだ元気ですよね?」「この星で2時間踊ってください!」とステージを跳ね回りながら客席を煽り続け、観客も激しく踊ることでそれに応えた。

 熱を帯びたフロアが一度落ち着くと、ここで再びMCへ。今回のステージには階段や段差が設けられており、そのぶん移動のするたびに体力を削られるのだと会場の笑いを誘ったり、Ichikaのギターシールドがワイヤレスになり、ステージ上を動き回れるようになったことなどが嬉しそうに語られる。こうした和やかなやりとりのあと、たなかは「世界が日々わけのわからないことになり続けているわけじゃないですか。そのなかで、人生を生き抜いていく、走り抜いていくための言葉たちを皆さんに送ります」と切り出し、さらに「自分を縛る――たとえば『今日ライブをしなきゃいけない』とか、そういう枷を、鎖を、身にまとうことでしか、その重さでしか、俺たちは成長できないんだと思います」と続ける。そして、「懐かしい曲をやります」という言葉とともに、開放感あふれる「自由」でライブは後半戦へと入っていった。

Ichika Nito(Gt)

 ここから舞台上の月は姿を消し、背景スクリーンには演奏中のメンバーの映像や重なり合う光の線が大きく映し出される演出へと切り替わった。「王」では無人の電車内が映像として映され、車窓の外を流れる宇宙空間やサイバー空間のような景色が目を奪う。たなかが階段状の舞台装置の上に立っていたことも相まって、ラップを織り交ぜた抑揚のある歌い回しには、オペラのような趣きがあった。このセクションを締め括った「&疾走」では、走る群衆やサーモグラフィーでとらえられたメンバーの映像が投影された。曲中にはササノが「コールアンドレスポンスの時間になりました!」と呼びかけ、フロアとの掛け合いも繰り広げられた。

Dios

 その後、たなかは「ナイスランですね。皆さんありがとう」と告げ、そのまま語り出した。近所のカフェで、コンビニで買ったノートに殴り書きをしたところからこのライブは生まれたのだという。自分たちを信じてくれた人たちへの感謝を口にしながらも、「まだ何も決まっていない」と前置きをする。そして、Diosとして2年後にアリーナで公演を開催できるように頑張りたい、と今後の展望を語るのだった。

 Ichikaによるソロパートがスタートすると、セレナーデのようなエモーショナルなメロディーを奏でるギターの音が会場を満たした。再びバンドサウンドがステージに戻り、恋愛の駆け引きをドラマティックに歌い上げるファンキーな「ラブレス」へ。さらに、8月5日に配信リリースされたデジタルロック「無理」が始まると、スクリーンに映し出される女性キャラクターのヘッドバンギングの映像に合わせるように、会場全体が大きく揺れた。

Ichika Nito(Gt)

 最終セクションでは、美しいアルペジオと幻想的なリバース音が印象的な「また来世」「裏切りについて」「天国」と3曲が連続して披露されたが、その後にサプライズが待っていた。「実は本命はここからで。次の曲のために、僕はこの『Mirrored』というライブのシナリオを書いた」とたなかは告げる。ライブ本編を締めくくる楽曲であり、このライブの軸となる新曲「火星より愛をこめて」が始まった。舞台装置の月が、たなかの手によって地球へと姿を変える。これまでのDiosの楽曲とは異なる、明るくも切ないミッドテンポのバラード「火星より愛をこめて」がこの日のいち早く届けられたのだった。

 メンバーが再びステージに姿を現したアンコールは、この日いちばん長いMCからスタート。開場時に配られたパンフレットに自ら物語を書き下ろしたこと、そしてこのライブの試みが伝わったかどうか不安だったことなどを、たなかは饒舌に語る。そして、「本当に2年後、アリーナに立つので。皆さん、ついてこれますか? というか、ついてきてね!」とライブ本編中盤でも口にしていた目標をあらためて宣言し、「花霞」を披露した。

たなか(Vo)

 メンバーが去ったステージのスクリーンには、エンドロールが流れる。冒頭でどうしても手紙を書けずにいたあの人物が、ついに文字を書き終え、封をする。そんな光景が描かれるなか、Diosのライブアクトとしての新たな魅力が示された約2時間のライブは幕を閉じた。

 リアルサウンドは、ライブ終了直後のDiosに話を聞かせてもらった。今回初披露した新曲「火星より愛をこめて」の手応えや同曲の歌詞の世界観、そして今後の活動の展望などについて、語ってもらった。

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