第一興商が提案する“選曲レス”カラオケの楽しみ方とは? Toyota Woven Cityで実証実験中の開発者に聞いてみた

“選曲レス”で提案するカラオケの楽しみ方

 業務用カラオケシステムDAMを展開する株式会社第一興商が、Toyota Woven Cityにおいて第1弾となる実証実験「選曲レスカラオケ」を9月1日より開始した。

 選曲レスカラオケとは、デンモクなどのリクエスト端末を設置せず、利用者による楽曲検索や選曲を必要としない新たなカラオケ体験。静岡県裾野市にあるトヨタ自動車による実証実験の街・Toyota Woven Cityにて、まずは居住者および訪問者向けに参加者を募集。実証実験として9月30日までの歌唱データを蓄積している。今回、リアルサウンドでは実際にToyota Woven Cityを訪れ、実証実験を取材。選曲レスカラオケの担当者や参加者へのインタビューを行った。

第一興商

 まず参加者にはカラオケに関する簡単なアンケートに答えてもらい、そこから担当者が「年齢」「好きなアーティスト」「好きなアニメ」「好きな音楽ジャンル」などからその年代にあったアーティスト、楽曲を選曲したプレイリストを作成。さらに生成AIを用いて、その精度を高めている。参加者はトヨタの電気自動車「e-Palette」の広い室内空間にて、“1人カラオケ”状態で選曲レスカラオケを楽しんでいる。利用は1時間で、楽曲の1番のみがどんどん流れてくる設定。1時間でおよそ40曲を歌唱できる想定になっており、参加者が「歌えない」「歌いたくない」と思った場合は、気軽にスキップできる仕組みだ。

 今回インタビューした参加者は事前アンケートの時点から、担当者が最もプレイリスト作成に苦しんだという方。アンケートで答えた好きなアーティストは「谷山浩子」「カノエラナ」「日食なつこ」。本人自身もいわゆるJ-POPと言われるメジャーなアーティストを通ってきていない、カラオケに行ってもマニアックな曲を選ぶのだという。案の定、前半はAKB48、YOASOBIといったメジャーどころをスキップしてしまったと恐縮しながら明かす。車内は密閉されており、外にいても聞き耳を立てないと何の曲を歌っているのか分からない防音レベル。かろうじて、AKINO「創聖のアクエリオン」、Cocco「強く儚い者たち」は歌っているのが聞き取れた。「アクエリオン」は世代であればアニメを観ていなくとも誰もが歌える曲、Coccoは姉の影響で好きになったアーティストだったと教えてくれた。そんな2曲に近い、“聴いてはいなかったけど歌えた曲”が『マクロスF』(「ライオン」「星間飛行」など)の関連楽曲で、友人が歌っているのを聴いて覚えたという。「自分では能動的に入れない、意図しない選曲がくるのが面白いと思いました。でも、歌えるから歌おうかみたいな」と感想を述べながら、さらなるプレイリストの向上に期待を寄せた。スキップされた楽曲はデータとして蓄積され、プレイリストやAI学習に反映されていく。参加者の主な年齢層は30~40代。参加は1日に数人程度で、9月30日までの実施期間で100人近くのデータが取れる予定だ。

 選曲レスカラオケは、デンモクで曲を選ぶ際に悩んでしまうというユーザーからの声や社内でも大勢でカラオケに行った時に最初の1曲目を誰が歌うかという“カラオケあるある”とも言える気まずさへの打開策はないかという意見があり、今回の開発に乗り出した。構想から企画立案と並行して、アンケートからプレイリストを作成する仕組みの準備で3カ月。第一興商としてこれまで培ってきたデータベースと生成AIを使用しながら選曲している。

第一興商

 第一興商の担当者は選曲レスカラオケについて、「レストランでメニューを選ぶのに似ている」と例える。「味を予想して、これは選ばないなというのが一口サイズで全部出てくる。食べてみたら、めっちゃ美味しいじゃんという発見が同じような感じである」と手応えを明かす。それは先述した参加者の『「マクロスF」』が結果として証明しており、担当者は「サービスとして出す価値があるのかなと思っています」と述べた。ゆくゆくは音楽や動画配信サービスの初期設定時に出てくるような簡単なアンケートをデンモクやスマホから行うことで、プレイリストが作成され選曲レスカラオケが始まる、といったサービスを思い描いているようだ。今回は実証実験のため1人でのカラオケに限られているが、主なターゲットは複数人でのグループカラオケ。ここから知見を増やし、多くの人に刺さる曲、コアなジャンルだが好きな人同士であれば盛り上がる曲などをリスト化していく。

 選曲レスカラオケが設置されたe-Paletteは、Toyota Woven City内の異業種や企業の枠を超えた共創・交流・展示施設「Kakezan Invention Hub」に止まっている。娯楽が限られたToyota Woven Cityでは数少ないエンタメとして好評のようだ。それは停車中の車内を新たなカラオケ空間にする、といったモビリティ実験でもある。今年4月にToyota Woven Cityで開かれたイベント『KAKEZAN 2026』の目的は、インベンター(Toyota Woven Cityにおいて自らのプロダクトやサービスを生み出し、実証を行う企業・個人)が持つ様々な強みや専門性などを掛け合わせることで、産業を超えた連携により今までにない価値を創出することにあった。現在、同じく参画するインベンターと何か一緒にできないかという新しい取り組みに向けた動き、関係値も徐々に構築されているようで、選曲レスカラオケだけでない、さらなる新たなカラオケの形がここから生まれていく予感がしている。

■“選曲レスカラオケ”実証実験概要
参加者:2026年8月から9月上旬に応募した20歳以上のToyota Woven City居住者および訪問者
期間:2026年9月1日(火)~9月30日(水)
場所:Kakezan Invention Hub内に設置されたDAM搭載のe-Palette
内容:「選曲レスカラオケ」のUX/UIおよび個々の利用者に向けたプレイリスト作成手法の評価
1. 事前アンケート 参加者に年齢、音楽の嗜好、カラオケ利用経験などに関するアンケートを実施取得した情報を基に一人一人に最適化されたプレイリストを作成
2. 歌唱体験 ・参加者は予約した日時に実施場所を訪れ、設置のタブレット端末に参加者ごとのID番号を入力 ・事前アンケート結果から作成されたプレイリストがダウンロードされ、DAMで再生される・参加者は再生された曲を順番に歌う。歌えない曲や好みに合わない曲はスキップする
3. 事後アンケート 歌唱終了後、再生された曲の適合度や満足度、歌唱体験全体に関するアンケートを実施

■関連リンク
Toyota Woven City:https://www.woven-city.global/jpn/

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる