きゃりーぱみゅぱみゅ×木村ミサ、「KAWAII」はなぜ世界に広がった? “なりたい自分になれる”原宿の文化と価値観の今

木村ミサ×きゃりーぱみゅぱみゅ 特別対談

「自分に自信をつけてくれる街」ーー原点、原宿から受け取ったもの

ーーこれもぜひお聞きしたいんですけど、お二人が発信されてきたものには、原宿で育まれた価値観が根底にあるように感じます。それぞれが関わる作品において、原宿ならではの価値観はクリエイティブにどう反映されていますか?

木村:私にとって原宿は日常的に過ごしてきた場所なので、そこまで強く意識はしていないんです。でも、皆さんの反応を意外に感じることがあって。例えば“かわいいの概念”もそう。そもそもかわいいって、一方向ではなくていろんな角度から見て感じること。そうした多面的な価値観を持つことは、原宿だったら普通なんですよね。いろんな考え方や見方があっていい。それが当たり前だと思っていたけど、KAWAII LAB.として「NEW KAWAII」をはじめ、いろんな言葉を発信していく中で、それが“新しいモノ”として受け取っていただけてるのが逆に新鮮な感覚がします。「KAWAIIカルチャー」をきゃりーも牽引してきてくれていたし、このカルチャーの先駆者の増田セバスチャンさんとか「様々なやり方があっていい」という考えの中で私は育ってきたから、これを新しいと捉えてやっていなかった。

ーーつまりKAWAII LAB.の取り組みは奇を衒っているわけでも、世の中のカウンターとして発信しているわけでもなかった。

木村:そうなんです。だから「新しいと言ってもらえるんだ」と、むしろ発見があります。「みんなが自由でいい」という思いから、生まれたのがKAWAII LAB.。きゃりーの存在が象徴するように、この街はファッションや生き方など、いろんなものが正解。“自分の正解が正解”という環境だから、本当に平和な世界なんですよ。

きゃりー:とにかく自由だよね。特に、私たちが学生だったときはもっといろんな人種の人、いろんなファッションの人がてんこ盛り。ロリータちゃんもいれば、唯一無二は世界観を持っている奇抜な人もいて。

木村:確かに。『Zipper』のとき、私ときゃりーも割と派手な方だったけど系統が2人の間でも違った。でも、それが同じ雑誌に紹介されているのが面白かったよね。

きゃりー:私は学校だとシャイで内気で、自分を持っていないような影の薄い存在だったんです。でも原宿という街やファッションと出会って、自分の好きな服を着て、なりたい自分になれたときに「こんなにも明るい私でいられるんだ」と景色が変わった。そうした先にKAWAII LAB.の存在があると思っていて。TikTokでカワラボの楽曲を流しながら、オシャレをして歌って踊っている人の映像を見ると、これが今の子たちの自信に繋がっていたり、なりたい自分になる後押しになっているんだなって感じる。そういう意味でも原宿はそっと背中を押してくれるーー自分に自信をつけてくれる街ですね。

ーー僕が学生時代は映画『下妻物語』が話題になりまして、その影響で地元にもロリータファッションの子がいたんです。ただ、田舎でそういう目立った服装だと「あの子はどうしちゃったんだろう?」と白い目で見られるんですよね。ある日、その子が原宿系ファッション誌のスナップ企画に載っていると情報が回ってきて、いざ見てみたら、いつもは内気なその子が見たことないほど堂々としていて。しかも、雑誌だとその子が普通に馴染んでいた。「ああ、原宿ってどんな個性も許容する街なんだ」と思いました。

きゃりー:本当にそう!

木村:いいんだって思わせてくれるんですよね。

ーーだけど、原宿の外に出るとまた変な目で見られる。そういう意味では閉鎖的なカルチャーに感じていました。それが今、きゃりーさんや木村さんが発信する音楽によって「自分の価値観を堂々と楽しんでいい」というメッセージは、原宿という街を飛び越えて世界中に届いている。

きゃりー:私は西東京市出身で、わりとのどかな地元だったのもあって、カラフルなファッションで外に出るとお母さんに「周りの人におかしくなったと思われるから、普通の服を着て出かけなさい」と言われていて。「でもこれが私なの!」と言い返して、激しくぶつかっていました。おっしゃった通り、原宿から一歩出たところに行くとクスクス笑われるぐらいに、私もちょっと派手系だったんです。カラフルな服で、ピエロ風のメイクをしたりもしてて。

ーーそれはだいぶ目立つ(笑)。

きゃりー:でも原宿に行ったら、みんなが私を受け入れてくれて、誌面でも紹介してもらえた。海外の方からもコメントをいただけて、自分の知らないところできゃりーぱみゅぱみゅが広がっていきました。それまでの人生は「みんなと違って変だよね」と言われることが多かったんですよね。感覚的にもファッション的にもそう。「ちょっとずれてるよね」と言われて「ああ、自分は変な人間なんだな」と思っていました。だけどアーティストになり、「つけまつける」とか「ファッションモンスター」で、中田ヤスタカさんが「きゃりーはありのままでいいんだ」と曲にしてくださって。ファンの方からも「きゃりーちゃんを見てると、私も自分らしく生きていいんだと気づけました」と言ってもらえるようになったのは嬉しかったです。

木村:理解者が増えると自信になるよね。

きゃりー:そうなんだよね! アーティストのフィルターを通すと、こんなにも人生が変わるんだなと感じた。今何かしらで生きづらくなってる人も、自分を曲げなくてもいい。きっとフィットする場所があると思います。

ーー〈だれかを責めるときには「みんなとちがう」というけど/毎回「みんな」にあてはまる/そんなやつなんているのかよ〉と歌った「もんだいガール」も、きゃりーさんのあり方を表明している曲ですよね。

きゃりー:そうですね。ある日、中田さんに「また週刊誌に撮られました。別に悪いことをしてるわけじゃないのに、変な取り上げられ方をしてムカついてます」と話したら、次のレコーディングで「もんだいガール」ができていたんです。〈ただ恋をしてるだけなの/機械みたいに生きてるわけじゃない〉の歌詞を見たとき、グッときて泣きそうになってしまって。ほかにも、中田さんが私の気持ちを汲み取ってくださった曲がいくつもあります。

kyary pamyu pamyu - Mondai Girl(きゃりーぱみゅぱみゅ - もんだいガール) Official Music Video

木村:中田さんは引き出す能力がめちゃくちゃ高いよね。何より、きゃりーの曲を聴いているだけで、きゃりー自身の生き様を感じることが多い。歌い手の気持ちと音楽がリンクしてるのはすごくいいなと思うから、KAWAII LAB.でもメンバーが発信しやすいように、なるべく曲の内容と本人が重なることを意識していて。そもそもアイドルに対して「プロデューサーの考えのもと、自分のやりたいことではない音楽も発信しなきゃいけない」と考える人もいる。悪いわけではないけど、それは私たちらしくない。アイドルだって音楽を届ける人に違いないから、私は少しでも本人たちの言葉で、楽曲について説明できるようにしたいと強く思ってる。

きゃりー:きゃんちゅー(CANDY TUNE)が私のラジオに来てくれたとき、玉屋2060%さんにメンバーが悩みを喋って、そこから「倍倍FIGHT!」が生まれたと聞いて感動したんだよね。じゃあ「〈本音と建前ない私なりたい〉はなったん(南なつ)のことなの?」と聞いたら「はい、私です!」と教えてくれて、さらに感動した。「もんだいガール」のように、本人たちも歌っていてストレス発散につながっているんだろうと思った。

木村:「倍倍FIGHT!」はメンバー自身を鼓舞する楽曲にしたいから、玉屋さんにも「本人たちの話を聞いた上で、曲を書いてほしいです」とお願いしたんだよね。きゃんちゅーって外から見たらめっちゃ明るくて、見てるだけ元気が出る存在だと思っていて。どこかギャルっぽさもあるけど、1人ひとりは暗い面も持っている。ネガティブをポジティブなパワーに昇華してる子たちだと思うから、「なぜ、ポジティブでいられるのか」をちゃんと知ってほしくて、歌詞はすべて本人たちの言葉にした。

【MV】CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」

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