「僕らのようなアーティストがいてもいい」 BLOOM VASE、貫く“らしさ”と『BLOOM MUSEUM』を語る

BLOOM VASEが貫く“らしさ”

 滋賀県出身のove、RURU、JiROMANからなる3MCユニット、BLOOM VASE。「CHILDAYS」「Bluma to Lunch」のバイラルヒットで広く知られる彼らは、個々のソロ/ユニット活動を経て、再び3人での制作を活発化させている。7月17日にリリースされた約1年ぶりのEP『BLOOM MUSEUM』には、キャッチーなメロディと遊び心に満ちたリリック、夜に目覚める衝動や想像力が封じ込められた。作品が自然発生的に形になるまでの過程、3MCだからこそ生まれる化学反応、ヒップホップとの距離感、そして滋賀に拠点を置き続ける理由。飾らない3人の言葉から、BLOOM VASEの現在地と変わらぬ軸を探った。(黒田隆憲)

「衝動のまま書きました」ーー『BLOOM MUSEUM』全曲を語る

BLOOM VASE

ーー2025年5月の『MY UNIVERSE』は、BLOOM VASEにとって約2年ぶりの新作でした。その後、シングル「BEGINNING」、しまもさんとのコラボ曲「Guideless Love」、そして今回のEP『BLOOM MUSEUM』と、リリースが続いています。この1年余りでグループの活動が活発になった背景を聞かせてください。

ove:ソロで活動していた期間は、それぞれが自分のやりたい世界観を一度、形にする時間でもありました。そこで得たパッションを持ち寄り、また3人でひたすら曲を作り始めた、という感じですね。

ーーソロ活動を通じて得たものや、BLOOM VASEへ持ち帰れたものはありますか?

ove:僕はそれまで、サビやフックを自分で作ることがあまりなかったんです。ソロ活動を通じて、そこも自分で作ろうという意識が生まれた。成長につながったと思います。

JiROMAN:僕はソロ作品もかなり出していますけど、ひとりで作るときは自然体で、ストレスなく制作できました。ソロで自分のやりたいことを形にできている分、3人でテーマを決めて作るときは、そこへすっと集中できるようになった。ソロとグループをうまく使い分けられるようになった感覚があります。

RURU:僕も、BLOOM VASEとは違う世界観や、ソロでやりたい曲を形にできたのはよかったですね。

ーー今回のEPは、いつ頃、どの曲から作り始めたのでしょうか。

ove:最初から「EPを作ろう」と動き出したわけではないんです。「Merry Go Round」は、もともと3年ほど前に僕のソロ曲として作っていたもので、そこから発展させて、BLOOM VASEの曲にしようという話になりました。そうやって1曲ずつ制作を進めるうちに、「まとまった形で出そう」ということになり、EPになった感じですね。

ーーここからは1曲ずつ伺います。「Intro」はどのように作りましたか?

JiROMAN:この曲を制作したのは最後です。ほかの曲が揃ってきた段階で、「少し不気味で、ワクワクする世界観のイントロが欲しい」とバックDJ兼トラックメーカーのTAQMIに伝えました。そのイメージをもとにすぐ作ってくれて、それがすごくハマりました。

ーー〈静まり返ったシャッター街/明かりが灯り出す徐々に〉という冒頭のラインでは、どんな風景を思い浮かべていましたか?

JiROMAN:真夜中のイメージもありますけど、身の回りの風景も多少入っています。滋賀には、少し田舎で、それほど栄えていない場所もある。そういう場所から自分たちが音を鳴らす、という意味ですね。まずフレーズが浮かんで、あとから「そういう意味も込められるな」と思いました。

ーー〈誰か発掘してくれよ化石〉というラインも印象的です。

RURU:『BLOOM MUSEUM』というタイトルが決まったあとに、それに掛けて書きました。意味はそのままで、「誰か僕らの曲を聴いてくれ」「僕らを見つけてくれ」ということです。

ーー「Merry Go Round」の歌詞は、どのように考えましたか?

ove:僕は普段、歌詞の意味をかなり考えて書くんですけど、たまには意味を考えすぎない曲も作りたくなるんです。この曲も衝動のまま書きました。

ーーメリーゴーランドという回り続ける遊具と、止まることなく進む時間を重ねた曲だと受け取りました。「常に上に行こう」「タイムリミットが迫りくる」といった言葉もあります。

ove:そこまで考えて作ってはいないですね(笑)。そんなに意味深な曲ではなくて、本当に気楽に書いた曲なんです。

ーー〈君が捨てたそのガラクタにも/価値を見出せるこれは授かり物〉というラインは、“MUSEUM”というテーマにも通じます。

JiROMAN:それは深読みしすぎですけど、そういうことにしてもらえるなら(笑)。書いたときは、くだらないことやガラクタみたいなテーマでも、自分が音楽にすれば価値のあるものにできる、というシンプルな意味でした。

ーー何かを展示することで新しい価値や文脈を与えるミュージアムの営みや、既存の音を再利用するヒップホップのサンプリング文化にも重なる気がします。

JiROMAN:いいですね。それでお願いします(笑)。

ーー〈経験する24/これでMy turn終わらせて/戻るWorld〉は、どんな心境で書いたのでしょうか。

RURU:その頃、『パルワールド』というゲームをすごくやっていたんです。「そろそろ曲を作らなあかんな」と作業を始めて、終わったらまたゲームの世界へ戻る。その『パルワールド』と、自分の“マイワールド”へ戻るという意味を掛けています。そこも、それほど深い意味ではないですね。

ーー「Adrenaline!」は、どのような発想から生まれましたか?

JiROMAN:すでに1、2曲ができていた段階で、その雰囲気に合うトラックを探しました。少し攻撃的で、緊張感のあるものがいいなと思って。夜中になるとアドレナリンが出て、つい何かをしてしまう。その感じが面白いと思い、僕がサビを作りました。

ーー「アドレナリン」という言葉は、どこから出てきたのでしょう。

JiROMAN:たぶん、深夜のテンションですね。眠れない夜って、普段ならしないような変なことをしてしまうことがあるじゃないですか。「これはアドレナリンのせいだ」という感じです。

ーー「Magician Girl」は、相手の本心がわからない恋愛をマジックに見立てた曲です。このアイデアはどのように生まれましたか?

JiROMAN:EPに、わかりやすくてキャッチーなポップソングが1曲欲しかったんです。3人で女の子について歌った曲も、これまでほとんどなかった。異性というテーマに、もうひとつ面白いものを掛け合わせたいと思いました。トラックにもショーやサーカスのようなエンタメ感があったので、そこから「マジックはどうだろう」「Magician Girlという言葉は面白いんじゃないか」と発想が広がっていきました。

Magician Girl / BLOOM VASE (Official Music Video)

ーーそしてラストの「Night Museum」には、夜の遊園地のような、華やかでありながら少し不穏な雰囲気があります。

JiROMAN:EPのタイトルは、この曲から生まれました。もともとの出発点は、映画『ナイト ミュージアム』です。夜になると展示物が動き出す、あのイメージから作り始めました。「Adrenaline!」とも重なりますけど、夜になると少し気が変になったり、いろいろと深く考えてしまったりすることってありますよね。眠っていた脳内のミュージアムが目を覚ますような感覚です。そういうときに出てくるアイデアは意外と面白いし、たまにはその感覚に身を任せてもいいんじゃないか。それを伝えたくてサビを作りました。

RURU:僕はJiROが作ったフックのグルーヴを大切にしながら、少し面白いことを言おうと意識してバースを書きました。

ove:サウンド面では、Melody Creatorさんのアイデアであの曲調に仕上げてもらい、僕らがそこに乗っかった部分もあります。普段からトラックメイカーには、「面白い感じ」や「僕ららしい、ふざけた感じ」をお願いすることが多いですね。

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