JUJUの歌が誘う“あの日”の思い出 過去と現代を結ぶタイムマシン『昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」』の凄み

JUJUが誘う“あの日”の思い出

 JUJUの「Request」シリーズと称されるカバーアルバムは、2010年から不定期でリリースされ、8作目となる最新作が『昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」』である。JUJUの洋楽カバーアルバムとしては2016年に『TIMELESS』がリリースされているが、今回の『時間旅行』では松任谷正隆をプロデューサーに迎え、多くの人の記憶に残る懐かしき珠玉の洋楽たちをカバー。70〜80年代に青春時代を過ごした人ならどのメロディにも当時の記憶がフラッシュバックし、さらに若い世代にとってもJUJUのボーカルによって昭和の名曲に新たに出会う機会となる――そんな世代を超えて楽しめる素敵な一枚となった。

【JUJU×昭和洋楽】| 純喫茶JUJU「時間旅行」produced by 松任谷正隆 Teaser Movie

 当時、都会の喧騒からひとり逃れた喫茶店で、あるいは恋に夢に忙しい青春時代を過ごしたディスコやバーで、まるで人生を彩るBGMのように鳴り響いていたキラキラした洋楽のヒット曲たち。そんな過去と現代とを自在に結ぶタイムマシンとなるのが、このアルバムだ。JUJUの歌声が、まるで遠い日の景色を運んでくるように響いてくる。

 再生ボタンはタイムトリップの入り口。まずエルトン・ジョンの「Your Song」のカバーでアルバムは幕を開ける。リリースは1970年。筆者はリアルタイムで聴いていたわけではなく、気づいた時には、稀代のピアノマンが歌い奏でた普遍の名曲としてこの世に存在していた。初めて聴いたのはリリースから10年以上が経ち、個人的に“洋楽”というものを意識し始めた頃だったか。その時も、そして今も、このメロディはまるで古さを感じさせない。ここ日本では、映画『エンジェル 僕の歌は君の歌』(1992年)や、ドラマ『イグアナの娘』(テレビ朝日系/1996年)の主題歌として初めて触れた人も多いかもしれない。そんな時代を超越したグッドメロディを、JUJUの繊細で深い歌声で聴くと、そのやわらかなボーカルが遠い日の記憶をやさしく引き寄せてくれる。

Your Song】昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」 Teaser Movie #1

 続いてこのタイムマシンは、キャロル・キング「It's Too Late」(1971年)の時代へと誘う。この選曲がとてもJUJUらしい。キャロル・キングの名作アルバム『Tapestry』(邦題『つづれおり』)に収録され、悲しい別れを歌うマイナーキーのこの曲は、JUJUの表現力で見事に現代にアップデートされて提示される。私が名盤『Tapestry』を手にしたのは、80年代も終盤に差し掛かる10代後半の頃。このアルバムは、雑誌などの「アーティストが選ぶこの10枚」的な企画で、よくタイトルが挙がっていて、それが手にするきっかけとなった。キャロルの歌声とメロディが静かに沁みてくる感覚は、ロックやニューウェーヴのキラキラしたサウンドに熱を上げていた少女には逆の意味で衝撃で、シンプルな音楽のよさが“わかる”という感覚を『Tapestry』で味わった。JUJUが「It's Too Late」を、乾いたテクスチャーの歌声で表現すると、オリジナルとはまた違ったメランコリーが立ち上がる。日本のフォークソングがニューミュージックへと移行し、さらに洗練されたポップ、ロックへと進化した70年代を思わせる、豊かなアンサンブルを体現するようなサウンドアレンジも秀逸だ。

 そして、「Superstar」。オリジナルはデラニー&ボニーが「Groupie (Superstar)」として1969年にリリースしたこの曲は、1971年にカーペンターズによるカバー「Superstar」としてヒットした。私もそれをよく耳にし、口ずさんだ記憶がある。ロックスターに恋心を抱くグルーピー(という言い方が現代の若者に通じるのかはわからないけれど)のことを歌った楽曲だが、耳にした当時はそんなこととは知らず、ひたすらに“切ない”気持ちをそのメロディに寄せていた。スマホもサブスクもない時代。カセットテープのポータブルプレイヤーが最先端。プレイリストではなく、好きな曲をカセットテープに録音して、学校やバイトの行き帰りにヘッドホンで何度も聴いていた。このメロディは、そんな景色を思い出させる。JUJUの歌声は、カレン・カーペンターの可憐な歌声とはひと味違う、どこか内省的な歌唱。でもそれが不思議とノスタルジックに甘い記憶を呼び覚ましてくれるのだ。

 ビリー・ジョエルの「Honesty」(1978年)は、世界の“不誠実さ”を嘆き、“誠実であること”を望む思いが痛切に響く歌である。この楽曲もまた長く聴き継がれ、歌い継がれてきた。〈Honesty is such a lonely word〉というサビ頭の歌詞は、初めて耳にした中学時代の私にも聴き取ることができたし、「オネスティ」という言葉の意味も辞書で調べて知った。“誠実”という言葉がなぜ“孤独”なのだろうかと、インターネットもない時代にあれこれひとり考えていたのも懐かしい。JUJUの歌声が表現するのは、まさにその“孤独な痛み”。ゆったりとしたアレンジがまた、その歌声を際立たせる。讃美歌のような崇高ささえ感じさせながらも、またしても楽曲のメロディの強さを実感するカバーである。そして一転、喫茶店の窓辺からやわらかな日差しが差し込むようなやさしいサウンドが響くと、ギルバート・オサリバンの「Alone Again (Naturally)」(1972年)のカバーへ。私がこの曲に初めて触れたのは1986年、映画『めぞん一刻』の主題歌として。その後もいくつかのCM曲として何度も耳にした。のちにこの曲は、その爽やかなサウンドとは裏腹に相当に悲劇的な愛の喪失を歌ったものだと知る。JUJUの歌唱も爽やかさのなかに、どこか諦観を感じさせる“痛み”が滲んで、楽曲本来のよさを引き連れてくる。「Alone Again」という楽曲が密かに内包する切ない本質を、JUJUの歌声が久しぶりに思い出させてくれた。

【Alone Again (Naturally)】昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」 Teaser Movie #2

 後半、Bee Geesの「How Deep Is Your Love」(1977年)のカバーで聴かせる、JUJUの透明感のある歌声もとても心地好い。「愛はきらめきの中に」という邦題のほうを憶えているリスナーも多いかもしれない。映画『サタデー・ナイト・フィーバー』(1978年日本公開)のラストシーンのために書かれたバラード曲。当時は小学生だった筆者がその後、高校生になってディスコに足を運ぶようになると、地方都市では“チークタイム”という概念がまだギリ生きていて、この曲も時折かかっていたのを思い出す(踊らなかったけれど)。オリジナルの歌唱にある軽やかさを引き継ぎながら、JUJUの深みのある歌声が、その頃の、ちょっと背伸びして遊んでいた青春時代を思い起こさせた。ラストのウィスパーなど、余韻の引き方も洒落ていて、今作では松任谷のプロデュースが随所に効いているのを実感する。

 白眉はエルヴィス・プレスリーの名バラード「Love Me Tender」(1956年)。低音でささやくようなエルヴィスの歌声が魅力の歌だが、これはもう、生まれる前からすでにロッククラシックの名曲として定着していた曲。スウィートでソウルのフィールを滲ませるJUJUの歌声は、この曲をとてもピュアに響かせる。懐かしいというより、純粋に音楽の美しさに触れるような喜びがある。さらにダイアナ・ロスの「If We Hold On Together」(1988年)。リアルタイムでこの曲に触れる前、よくThe Supremes(現在は“シュープリームス”ではなく“スプリームス”と表記するらしいです)を聴いていたのもあって、少女時代の私にはこの楽曲の王道バラード感は少し大仰に感じられた。日本では1990年にドラマ『想い出にかわるまで』(ドロドロの愛憎劇!)の主題歌として使用されていたのも、ちょっと別の意味で記憶に残ってしまった感があって、この楽曲の真のよさ、深みを知ったのはだいぶ大人になってから。それこそ、ダイアナ・ロスのコンサートを体感してからだった。いや、この楽曲は表層的な愛の歌ではなくて、人間の本質的な夢と希望を歌っている。JUJUのカバーではピアノをフィーチャーしたリズムアレンジの面白さもあり、単なる懐かしきバラード曲としてではなく、風通しのよい場所で遠くまで鳴り響くような、大きな愛の歌としてやさしく響いてくる。そのスケール感を、英語詞のままでありながら、JUJUの歌声がどこか身近なものに感じさせてくれた。

【If We Hold On Together】昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」 Teaser Movie #4

 Simon & Garfunkelの「Bridge Over Troubled Water」(1970年)は、「明日に架ける橋」という邦題でよく知られている。JUJUの中音域の歌い出しにグッと引き込まれた。この曲も私はリアルタイムで聴いたわけではないが、Simon & Garfunkelの曲に初めて触れたのは小学校に上がる前だった。近所の高校生のお姉さんがピアノを習っていて、S&GやThe Beatlesの曲を弾いて聴かせてくれたのだ。今思えばなかなか先進的なお姉さん。その“洋楽”たちのメロディのよさは、幼い私にもすぐにわかった。そして中学生になった頃、あの日のあのメロディにもう一度出会いたいという気持ちが芽生えて、アルバムを手に取った。思えば、音楽がタイムマシンになるという感覚はその頃から無意識にあって、JUJUの今回のこのカバーアルバムがまさに今再びその装置となっているのだと実感する。

 そしてラストはミニー・リパートンの「Lovin' You」(1974年)。5オクターブ超の声域を誇るミニーの世界的ヒットナンバー。はじめに私はレゲエシンガーのジャネット・ケイのカバー(1977年)でこの曲を知ったが、その後クラブに通うようになると、よくミニーのオリジナルがラストにかかっていたりして、夜明け前にやさしく響いていた光景を思い出す。そして今、そんな光景とともに、JUJUのやわらかく透度の高い歌声が甘く耳に溶けてくる至福。ギター一本で進行するミニマルなアレンジ、そしてハイトーンの美しさに思わず嘆息。『時間旅行』の締めくくりにふさわしい、シンプルにして深い余韻を残す歌声だった。

 このアルバムは、昭和の洋楽の名曲を追体験する、まさにタイムマシンのような選曲。名曲の“継承”と“更新”は、「Request」シリーズ全般に通ずるテーマではあるが、甘さも気高さも、強さも弱さも、繊細さも大胆さも表現できるJUJUの歌声があればこそのカバー作品だ。

 そして、どの楽曲にも、誰しも“自分にしかない思い出”があるはず。筆者も普段は自分の過去の思い出を書き綴るようなことはあまりしないのだけれど、このアルバムを聴いて、不思議なくらいスルスルと“あの日の光景”が思い浮かんでしまった。個人的な思い出ばかりを綴ってしまって申し訳ない。でもそれはやはり、このアルバムがそうさせるのだと思う。まさにタイムマシンだった。

 そして、6月20日からはこのアルバムを携えた全国ホールツアーも開催中。このコンサートの演出も松任谷が手がけているということで、アルバムの素敵な世界観がライブでどう表現されるのか、今からとても楽しみである。

■ツアー情報
『JUJU HALL TOUR 2026 純喫茶JUJU「時間旅行」』
演出:松任谷正隆

※終了した公演は割愛
7月1日(水)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
OPEN 17:30/START 18:30

7月2日(木)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
OPEN 17:30/START 18:30

7月7日(火)新潟・新潟県民会館
OPEN 17:30/START 18:30

7月10日(金)佐賀・鳥栖市民文化会館 大ホール
OPEN 17:30/START 18:30

7月11日(土)長崎・べネックス長崎ブリックホール
OPEN 17:00/START 18:00

7月17日(金)香川・レクザムホール
OPEN 17:30/START 18:30

7月18日(土)愛媛・松山市民会館
OPEN 17:00/START 18:00

7月22日(水)大阪・フェスティバルホール
OPEN 17:30/START 18:30

7月23日(木)大阪・フェスティバルホール
OPEN 17:30/START 18:30

7月29日(水)東京・NHKホール
OPEN 17:30/START 18:30

7月30日(木)東京・NHKホール
OPEN 17:30/START 18:30

8月2日(日)石川・本多の森北電ホール
OPEN 17:00/START 18:00

8月7日(金)山形・やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)
OPEN 17:30/START 18:30

8月9日(日)青森・リンクステーションホール青森
OPEN 17:00/START 18:00

8月12日(水)群馬・高崎芸術劇場 大劇場
OPEN 17:30/START 18:30

8月18日(火)京都・ロームシアター京都 メインホール
OPEN 17:30/START 18:30

8月20日(木)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
OPEN 17:30/START 18:30

8月21日(金)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
OPEN 17:30/START 18:30

8月23日(日)長野・ホクト文化ホール
OPEN 17:00/START 18:00

8月29日(土)広島・広島文化学園HBGホール
OPEN 17:00/START 18:00

8月30日(日)岡山・倉敷市民会館
OPEN 17:00/START 18:00

9月3日(木)大阪・フェスティバルホール
OPEN 17:30/START 18:30

9月4日(金)大阪・フェスティバルホール
OPEN 17:30/START 18:30

9月8日(火)静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
OPEN 17:30/START 18:30

9月12日(土)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
OPEN 17:00/START 18:00

9月18日(金)福岡・福岡サンパレス
OPEN 17:30/START 18:30

9月19日(土)福岡・福岡サンパレス
OPEN 15:00/START 16:00

9月22日(火)北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
OPEN 17:00/START 18:00

9月23日(水)北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
OPEN 15:00/START 16:00

9月26日(土)宮城・仙台サンプラザホール
OPEN 17:00/START 18:00

9月27日(日)宮城・仙台サンプラザホール
OPEN 15:00/START 16:00

9月30日(水)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
OPEN 17:30/START 18:30

10月2日(金)茨城・水戸市民会館 グロービスホール(大ホール)
OPEN 17:30/START 18:30

10月7日(水)福島・けんしん郡山文化センター(郡山市民文化センター)大ホール

OPEN 17:00/START 18:00

10月10日(土)東京・東京国際フォーラム ホールA
OPEN 17:00/START 18:00

10月11日(日)東京・東京国際フォーラム ホールA
OPEN 15:00/START 16:00
※開場/開演時間は変更となる場合がございます

<チケット>9,500円(税込)
一般発売中:https://eplus.jp/juju2026/

ツアー詳細:https://www.jujunyc.net/jikan-ryoko/#live

■リリース情報
『昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」』 produced by 松任谷正隆
発売中

販売URL:https://smar.lnk.to/71z7bV
配信URL:https://smar.lnk.to/8HyN6a

通常盤(CD):3,520円(税込)
・『昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」』(CD)

初回生産限定盤(CD+DVD or Blu-ray):7,920円(税込)
・『昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」』(CD)
・「JUJU HALL TOUR 2025 The Water」(DVD or Blu-ray)

FC会員限定 完全生産限定盤(CD+DVD or Blu-ray+カセットテープ+付属アイテム):16,500円(税込)
・豪華スペシャルBOX仕様
・『昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」』(CD)
・「JUJU HALL TOUR 2025 The Water」(DVD or Blu-ray)
―歌詞字幕オン/オフ機能付きー
・カセットテープ(『昭和洋楽 純喫茶JUJU「時間旅行」』)
・「JUJU HALL TOUR 2025 The Water」LIVE PHOTO BOOK
・「JUJU HALL TOUR 2025 The Water」オリジナル キラステッカー(全2種)
・純喫茶JUJU オリジナル ミニチュア看板

<収録曲>(全形態共通CD)
Your Song
02. It’s Too Late
03. Superstar
04. Honesty
05. Alone Again (Naturally)
06. How Deep Is Your Love
07. Love Me Tender
08. If We Hold On Together
09. Bridge Over Troubled Water
10. Lovin’ You

特設サイト:https://www.jujunyc.net/jikan-ryoko/

New Single『夏蝉』
7月8日(水)先行配信
9月2日(水)CD発売

配信URL:https://smar.lnk.to/UnTPy4
予約URL:https://juju.lnk.to/47thSG_Natsu-semi_CD

JUJU オフィシャルサイト:https://www.jujunyc.net/
X:https://x.com/JUJUsonymusic/
YouTube:https://www.youtube.com/@jujuSMEJ
Facebook:https://www.facebook.com/jujusonymusic/
TikTok:https://www.tiktok.com/@juju_official_

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