「もしもし、聞こえてる?」――楽音(sasane)「mosi mosi?」が起こす旋風 韓国から見る“令和の渋谷系”と“KAWAII”文化

「もしもし、聞こえてる?」――。4月22日にリリースされた18歳のインフルエンサー兼アーティスト・楽音(sasane)のデビューシングル「mosi mosi?」が、瞬く間に世界を“怪電波”に夢中にさせている。同曲はリリース初週にしてTikTokの総再生回数4億回を突破し、日本と韓国のTikTok人気楽曲ランキングで同時に首位を獲得するという前例のない記録を打ち立てた。
ユーザーの自発的な“オーガニックバイラル”で成し遂げた快挙であるからこそ、その意味は格別だ。この異例の旋風を巻き起こした「mosi mosi?」は、日本のサブカルチャー固有の美学である“KAWAII”文化の現代的変容であり、1990年代後半から2000年代初頭の郷愁を誘う渋谷系サウンドの遺産を継承したものと評価されている。では、こうした音楽的遺産が見事に融合したこのデビュー曲が、グローバルな10代――とりわけ韓国のZ世代から支持を集める理由とは、一体何だろうか。
世代を超えて愛される“渋谷系の感性”
評論家やリスナーが本楽曲を「新しい渋谷系」と称する理由は明確だ。かつての渋谷系ポップ/ラップ特有の、エネルギーを過剰に消費せず無頓着に言葉を吐き出す“脱力系”のアティチュードが見事に再現されているからである。そこに、往年のアーケードゲームを思わせる16ビットのチップチューンやグリッチ効果が絡み合い、ノスタルジックかつ独特な質感を完成させている。
ここで見逃してはならないのは、韓国のネットカルチャーにおいて、こうした音楽を受容する土壌がすでに2000年代から形成されていたという事実だ。かわいらしいエレクトロニックポップに代表される渋谷系の音楽は、2000年代中盤の韓国で一世を風靡した国民的SNS「Cyworld」のBGMとして広く親しまれた歴史を持つ。時代を超えた現在、当時の文脈を知らないZ世代やα世代にとって、そのキッチュな要素は“まったく新しい魅力”として新鮮に響き、受け入れられている。しかし、「mosi mosi?」のヒットは突発的な偶然などではなく、韓国のネット空間の底流で長く愛されてきた“渋谷系の感性”との必然的な共鳴だったとも言えるだろう。
SNSと音楽――Z世代の新たな遊び場としての「mosi mosi?」
SNSを基盤にコンテンツの生産と消費を通じてコミュニケーションを図るZ世代やα世代にとって、音楽はもはや単なる“鑑賞”の対象ではない。その点で「mosi mosi?」は、彼らの遊びの文化に完璧に符合する魅力を持っているのだ。この曲は単なるかわいいメロディの羅列だけにとどまらず、リスナーが自ら参加し、演じることができる絶妙な“余白”を提供している。〈ウォーアイニー〉や〈ハローハワユー?〉といった多国籍な挨拶の配置はグローバルなアルゴリズムの障壁を取り払い、「もしもーし、聞こえてる?」という直感的なナレーションはPOVトレンドを主導する10代のクリエイターたちに最適な遊び場をもたらした。
@sasasasasasa078 denpa denpa!!!#mosimosi? ♬ mosi mosi? (Sped up) - 楽音
国境を越えて多様なカルチャーに偏見なく触れて育った今の世代は、アーティストの国籍やジャンルの系譜といった枠組みに縛られない。直感的に新しく、面白く、そしてかわいいものであれば、軽やかに消費していく。だからこそ、かつて一部のマニア層の専有物と見なされていた日本のアイドル文化や“KAWAII”の美学も、今や大衆の間に違和感なく浸透しているのだろう。これは、最近韓国で大きな人気を博したCUTIE STREETの「かわいいだけじゃだめですか?」旋風とも脈絡を同じくしている。カメラの前で主人公を演じたくなる衝動をかき立てるこの“聴覚的糖分”こそ、ショート動画のエコシステムにおいて完璧に機能する最強のフックなのだ。
K-POPと遭遇した“KAWAII”
韓国で今回のバイラル現象の起爆剤となったのは、K-POPアイドルたちによる自発的なチャレンジへの参加だった。NCT WISH、IVE、BOYNEXTDOOR、TWS、ZEROBASEONEなど、国内外で絶大な人気を誇るトップクラスのグループがこぞって同楽曲を用いたショート動画をアップロードした。ハイクオリティなパフォーマンスや壮大な世界観を常に求められ続けるK-POPアイドルたちにとって、「mosi mosi?」の“KAWAII”サウンドに合わせたアクションは、武装解除した姿を見せられる絶好のファンサービスである。
@official_nct mosi 🤙 mosi #RIKU #YUSHI #NCTWISH ♬ mosi mosi? - 楽音
@boynextdoor_official mosi mosi⛧彡 #BOYNEXTDOOR #보이넥스트도어 #BND ♬ mosi mosi? - 楽音
強烈なEDMやHIPHOPを主軸とする昨今のK-POPトレンドを踏まえれば、そのコントラストはより一層際立つ。ステージ上で隙のない高難度のパフォーマンスを繰り広げていたアイドルたちが、〈ネコに嫌われても/ママに叱られても〉という無害で日常的な歌詞にあわせて軽快にリズムに乗る姿は、ファンにたまらないギャップ萌えをもたらしたのだ。こうした反響を受け、sasaneはすぐさま韓国語バージョンの映像を公開するなど、現在の好調な流れをさらに加速させようとする積極的な姿勢も見せている。
@sasasasasasa078 아, 안 터져?! 이번 주도 한일 1위 고마워!! あっ、圏外、!? 今週も日韓一位ありがとう🥇🥇 Oh… No signal?! Thank you for No.1 in Japan and Korea again this week!! #mosimosi?#koreanversion #NewMusic ♬ オリジナル楽曲 - 楽音-sasane
結局のところ「mosi mosi?」の現象は、物理的な国境が無意味になったデジタルプラットフォーム時代において、最もローカルなサウンドがいかにして普遍的でグローバルな遊戯へと変貌し得るのかを、鮮やかに物語っている。日本固有のサブカルチャー(“KAWAII”/電波系)と、ショート動画エコシステムの文法(参加型フック)を見事に融合させた最も日本的なハイブリッドこそが、世界市場を切り拓く確かな鍵になり得ることを、この18歳の少女が身をもって示したのだ。
一時期、伝統的なJ-POP産業は、巨大な内需市場に安住し、ガラパゴス化したという批判に晒されることもあった。しかし、2026年の“令和の渋谷系”は、単なるJ-POPのトラックという枠を軽やかに飛び越え、TikTokという超国境的なハッシュタグに乗って全世界へと伝播していく。かつて渋谷のレコード店で物理的に交わされていた洗練された感覚が、今やアルゴリズムという無形の“デジタル渋谷”を通じて、リアルタイムで世界中の青春たちと交信(=CQCQ)しているのである。
■リリース情報
1st Digital Single『mosi mosi?』
配信中
配信URL:https://lnk.to/sasane_mosi-mosi
Instagram:https://www.instagram.com/sa_sa_ne/
YouTube:https://www.youtube.com/@sasasasasasa078
TikTok:https://www.tiktok.com/@sa_sa_ne07/https://www.tiktok.com/@sasasasasasa078

























