CUTIE STREET、韓国で巻き起こす異例の熱狂 現地ライターが紐解く“日本のアイドル”が求められる理由

CUTIE STREET、韓国で巻き起こす異例の熱狂

 〈可愛さで世界征服!〉という言葉は、もはや単なる歌詞ではなくなった。2026年3月26日、韓国の音楽番組『M COUNTDOWN』(Mnet)に出演した、アソビシステム発のアイドルプロジェクト・KAWAII LAB.所属の8人組グループ・CUTIE STREET。彼女たちが披露した「かわいいだけじゃだめですか?」の韓国語バージョンは、いち海外アーティストによるスペシャルステージという枠を優に超え、異例の熱狂を巻き起こしている。

'SPECIAL STAGE' CUTIE STREET - 귀엽기만 하면 안 되나요? #엠카운트다운 EP.921 | Mnet 260326 방송

 YouTubeで公開されたステージ映像は、わずか2週間で760万回再生を突破。今年の同番組出演映像のなかでも、再生回数、コメント数、いいね数のすべてにおいて圧倒的なトップを独走中だ。この反響は公式MVの韓国での視聴数を10倍以上に押し上げただけでなく、Spotifyの「Viral Hits Korea」やInstagramの「Viral Song」チャート(韓国)での首位獲得へと直結。Apple MusicやMelonの各種チャートにも上位ランクインを果たすなど、SNSを中心としたバズが実質的なデータで証明された。グループ側もこの追い風を逃すことなく、韓国のデジタルメディアへの出演やショート動画の投稿を積極的に展開。リスナーによる二次創作の連鎖を生み出し、現地での認知度を一気に引き上げた。

 彼女たちは番組出演前の時点で、すでに3月28日・29日にソウルのYES24 WANDERLOCH HALLで開催される初の単独来韓公演を早々にソールドアウトさせていた。その反響を受け、7月25日・26日には、規模を約3倍にまで拡大した世宗大学 大洋ホールでのアンコール公演の開催を発表。さらにファンの熱い声援に後押しされ、4月10日には番組と公演のために用意された韓国語バージョンが正式リリースされるに至った。こちらも「Melon Chart (J-pop Daily)」で8位、「Melon HOT 100」65位(4月13日時点)と好調な滑り出しを見せている。では、なぜ今、韓国の大衆はこれほどまでにCUTIE STREETに熱狂しているのだろうか。

K-POPアイドルと大きく異なる方向性

 CUTIE STREETは、現在のK-POPアイドルとは一線を画すばかりか、“日本のアイドル”の王道スタイルを極限まで突き詰めたグループと言っていい。「“KAWAII”を原宿から世界へ発信していく」というアイデンティティを、彼女たちはそのまま韓国のステージへと持ち込んだ。黄色、ミントグリーン、オレンジ、ピンクといったメンバー一人ひとりを象徴する華やかなカラーを基調とするボリューミーな衣装に、大きなリボンやキッチュなヘアピン。K-POPのトレンドとは徹底して異なる道を歩むその姿だからこそ、「まるで8個の可愛いカップケーキが踊っているようだ」という称賛を浴びるほど、かえって強烈なインパクトを放ったのだ。

 現在のK-POPガールズグループ市場は、緻密な世界観、エッジの効いたビジュアル、高難度なパフォーマンスから圧倒的なボーカルスキルに至るまで、多方面において、グローバルスタンダードに照準を合わせた“完璧さ”の頂点を極めようとしている。だが、文化のトレンドがひとつの方向へ成熟しきったとき、大衆は必然的にその対極にあるものを求めるようになる。いわば“文化の振り子現象”だ。複雑な考察を必要とせず、視覚的なキュートさと聴覚的なポップさを直感的に楽しめるCUTIE STREETの登場は、誰もが密かに渇望していた「純粋な可愛さ」の領域を正確に撃ち抜いた。観客を圧倒するのではなく、見る者の警戒心を解き、自然と笑顔にさせるステージ。これこそが、韓国の大衆が彼女たちに魅了される根本的な理由だろう。

CUTIE STREET 韓国公演の模様
韓国公演の模様

 原曲のエネルギーを損なうことなく、韓国のファンのために韓国語バージョンを用意した真摯な姿勢も“心からの努力”として好意的に受け止めた。“可愛さ”に全振りしたからこそ、韓国語のパフォーマンスにおける多少の“ぎこちなさ”すらも愛すべき魅力へと昇華されたのだ。「たどたどしい韓国語で歌う姿がむしろ愛おしい」「韓国ファンのためにここまで準備してくれたことが感動的だ」といった声は、完璧さよりも“応援したくなる余白”を残す日本のアイドル特有の魅力が、韓国の情緒と見事にリンクした結果とも言えるだろう。目の前のファンに寄り添おうとする姿勢へのポジティブなコメントも少なくなかった。

韓国国内に浸透するJ-POP

 いくら独創的な“KAWAIIコンセプト”を打ち出したとはいえ、CUTIE STREETがこれほど急激に韓国市場で受け入れられた背景には、明確な時代的変化がある。すでに韓国国内には、J-POPを違和感なく消費できる土壌が盤石に整っていたのだ。わずか5年前まで、日本の大衆音楽は一部のマニア層が楽しむカルチャーだった。しかし、日本のアニメをはじめとするサブカルチャーが若い世代を中心に広く大衆化したことで、ベースとなる空気感は劇的に変化。現在ではほぼ毎週のように大小さまざまな日本人アーティストの来韓公演が行われ、アリーナクラスのライブまで成功を収めるなど、過去最大のJ-POPブームが到来している。

 特に、TikTokやInstagramといったショート動画を通じた国境を越えるバイラルは、J-POPを“自ら探しに行く音楽”から“日常で自然と耳にする音楽”へと変貌させた。K-POPアイドルたちがこぞってJ-POPのカバーやダンスチャレンジに参加することで、韓国のリスナーの耳はすでに多様なJ-POPを受け入れる準備ができていた。CUTIE STREETはまさにJ-POPが日常的に消費される土壌に、日本のアイドルならではの魅力を維持しつつ、耳に残るメロディーや可愛らしい振り付け、そしてSNSのショート動画に最適化されたキャッチーなポイントを備えた楽曲を見事にマッチさせたのである。それが音楽番組への出演という絶好のチャンスと掛け合わさることで、今回のような爆発的な広がりを見せたのだ。

@cutie_street

한국에서 HYBE의 유명한 장소에서 두 번째도 촬영했습니다🎀✨ HYBEさんの有名な場所で2回目も撮影してきました🎀✨ 『かわいいだけじゃだめですか? / 귀엽기만 하면 안 되나요?』 💙増田彩乃 / 마스다 아야노 🩷桜庭遥花 / 사쿠라바 하루카 #큐스토 #きゅーすと #CUTIESTREET

♬ 귀엽기만 하면 안 되나요? - 1절 후렴 ver. - CUTIE STREET

 また、彼女たちの快進撃の裏には、多層的なファンダムの強力な後押しがあるという見方もできる。幼い頃からショート動画に親しんできたα世代やZ世代の女性層にとって、CUTIE STREETは“最もトレンディでキャッチーなコンテンツ”として機能している。こうした若い世代のファンは、膨大な量の二次創作やチャレンジ動画を生み出すバイラルの主役だ。それと同時に、かつてAKB48などの日本のアイドル文化を通過してきたミレニアル世代の男性層は、彼女たちのステージにノスタルジーを感じ取り、声援を送る。このように傾向の異なるファン層の熱量が『M COUNTDOWN』というメジャーなメディアと掛け合わさることで、彼女たちの“KAWAII”はさらに大衆的かつ爆発的な拡散に繋がったのだ。

グローバル展開のモデルケースに

 CUTIE STREETが韓国で示した成果は、今後の日本人アーティストのグローバル進出における新たなモデルケースにもなれるだろう。彼女たちは、無理な現地化を押し進めるわけでも、かといって日本語だけを貫くわけでもなかった。現地の状況に合わせて変換した韓国語の歌詞で大衆との距離を縮めつつ、核となるキリングパートは日本語のまま残す。こうした柔軟なローカライズに加え、日本独自の制作システムを維持しながらも、韓国の放送・マーケティングインフラを跳躍の足がかりとする開放的なスタンスが、今回の話題を生み出したのだ。

 彼女たちは実際に『M COUNTDOWN』への出演や、他アイドルとのダンスチャレンジ、『Weverse』への参入など、K-POPが構築したグローバル流通網を高度にレバレッジしている。世界中の音楽ファンの視線が集中するバイラルのハブ・韓国で認められた“可愛さ”は、そのままグローバルの潮流に乗る可能性を一気に高めてくれる。重要なのは、日本特有のテイストを無理に消し去らなくとも、普遍的なコンセプトと韓国の強力なインフラが結びつけば、爆発的なシナジーを生み出せると証明した点だ。過去、内需中心のガラパゴス化に陥りがちだった日本のエンタメ業界が国境を越え、日韓の音楽産業が互いの強みを掛け合わせて協力し合える未来を示す、見事な好例だと言えるだろう。

 CUTIE STREETが発信する原宿発祥のKAWAII文化は今、韓国を越え、世界中のZ世代のプレイリストの奥深くへと浸透していく準備を終えた。7月のソウル、さらに巨大化したステージで繰り広げられる“可愛さの再現”、そして、ここから始まる彼女たちが夢見る真の〈可愛さで世界征服!〉を、大いなる期待とともに見守りたい。

■リリース情報
「かわいいだけじゃだめですか? (Korean ver.)」
配信中
配信リンク:https://kawaii-lab.lnk.to/kawadame_korean

■公演情報
『CUTIE STREET Live in Korea 2026 SUMMER』
DAY1:2026年7月25日(土)18:00(KST)
DAY2:2026年7月26日(日)18:00(KST)

<公演場所>
世宗大学 大洋ホール
<チケット価格>
全席指定席
VIP席:143,000ウォン(税込)
R席:110,000ウォン(税込)
S席:99,000ウォン(税込)
<枚数制限>
1回当たり1人 1枚(ファンクラブ抽選販売枚数)
<観覧参加可能者>
8歳以上(2017年生まれを含め、それ以前の出生者)

■関連リンク
公式サイト:https://cutiestreet.asobisystem.com/
YouTube:https://www.youtube.com/@CUTIE_STREET
X:https://x.com/CUTIE_STREET_
Instagram:https://www.instagram.com/cutie_street_/
TikTok:https://www.tiktok.com/@cutie_street

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる