LOVE PSYCHEDELICO「いつかまたどこかで会えたら」 ルーツへの愛情を滲ませ、25年の旅路を彩った活動休止前ライブ

LOVE PSYCHEDELICO、活動休止前ライブレポ

 メジャーデビュー25周年のメモリアルイヤーを迎えたLOVE PSYCHEDELICOが、全国ツアー『LOVE PSYCHEDELICO 25th Anniversary Tour』を開催した。2月28日の東京・江戸川区総合文化センター公演を皮切りに全国を巡るこのツアーで、筆者が足を運んだのは、追加公演として行われた4月9日の東京・NHKホール公演だ。NHK交響楽団の本拠地として知られ、世界最大級のパイプオルガンを擁するこの荘厳な会場に、LOVE PSYCHEDELICOの骨太なロックンロールがどのように鳴り響くのか。開演前から場内には独特の高揚感が漂っていた。

 ステージ上には、メンバーそれぞれの楽器やアンプ、機材が整然と並べられている。装飾を削ぎ落としたシンプルな佇まいが、かえってこれから始まる演奏への期待を高めていく。客電が落ちると、Curly Giraffeこと高桑圭(Ba)、伊藤大地(Dr)、深沼元昭(Gt)、松本圭司(Key)というおなじみのメンバーが姿を現し、場内は大きな歓声と拍手に包まれた。

 少し遅れてKUMI(Vo/Gt)とNAOKI(Gt)が登場し、1曲目に投下されたのは「Shadow Behind」。羽飾りのついたトレードマークのハットをかぶったNAOKIが、大きく体をしならせながらエレキギターをかき鳴らす。その一撃を合図にするようにバンドサウンドが一斉に立ち上がると、フロアは早くも総立ちになった。ワンピースをまとったKUMIは、伸びやかな歌声をホールいっぱいに響かせ、間奏では大きく手を回しながら身体を揺らす。静謐だった会場の空気が、あっという間にLOVE PSYCHEDELICO色へと塗り替えられていく。

LOVE PSYCHEDELICO ライブ写真
KUMI(Vo/Gt)
LOVE PSYCHEDELICO ライブ写真
NAOKI(Gt)

 「こんばんは、LOVE PSYCHEDELICOです。今日は来てくれてありがとう。最後まで楽しんでいってね」というKUMIの短い挨拶に続いて披露された「Free World」では、彼女自身もギターをかき鳴らしながら演奏に加わる。松本は首からウォッシュボードを下げ、そのざらついたリズムでグルーヴに独特の推進力を与えたかと思えば、曲の後半ではホンキートンクピアノでスワンピーな風味を添える。NAOKIは深沼と向き合ってギターを鳴らし合い、次の瞬間にはステージ狭しと歩き回る。サビに入ると、客席からは自然発生的にハンドクラップが起こり、バンドとオーディエンスのあいだに早くも濃密な一体感が生まれていた。

 続く「Birdie」は、The Beatlesの「You Can’t Do That」や「I Call Your Name」をどこか思わせるミドルテンポのロックナンバーだ。60〜70年代ロックへの深い愛情を隠すことなく滲ませながら、単なるオマージュに終始せず、自分たちの血肉となったオリジナリティへと引き寄せていく。それこそがLOVE PSYCHEDELICOの真骨頂である。

 「Hello」もまた、LOVE PSYCHEDELICOのルーツとオリジナリティが幸福なかたちで結びついた一曲だ。The Beatles「No Reply」を彷彿とさせるイントロから、The Byrdsを思わせる哀愁のフォークロックへと滑り込んでいく展開は実に鮮やか。サビで重なる高桑とNAOKIのコーラスも温かく、どこか翳りを帯びたメロディをいっそう引き立てていた。

 NAOKIのギターインプロから始まった「Wasting」では、KUMIがかき鳴らすアコースティックギターのバックビートが、バンド全体に疾走感をもたらす。その勢いを引き継ぐように披露された「No Reason」では、マシンガンのように連射されるNAOKIのカッティングが圧巻だった。ラップと歌のあわいを軽やかに行き来する、KUMIのプレイフルなボーカルが印象的な「Swingin’」を経て届けられたのは、「Good times, bad times」。NAOKIがスライドギターで奏でるカウンターメロディは、KUMIの歌に寄り添い、ときに先回りしながら、まるでふたりのデュエットのようにさえ響いていた。

 ELO(Electric Light Orchestra)を思わせるミドルテンポのサイケポップ「Fantastic World」は、ファルセットと地声を巧みに織り交ぜたサビのメロディが、LOVE PSYCHEDELICOというユニットのポップセンスの豊かさを改めて感じさせる。NAOKIのスライドギターはThe Beatlesの「Real Love」を彷彿とさせ、高桑もまた、ポール・マッカートニーばりにメロディックなベースラインで楽曲を彩っていく。曲の後半、KUMIがシャウトを響かせると、会場は大きな歓声と拍手に包まれた。

 ここでライブはいったんNAOKIのソロタイムへ。披露されたのは、バディ・ガイの「Bad Bad Whiskey」とマディ・ウォーターズの「Mannish Boy」を軸にしたブルースセッションだ。インプロビゼーションを交えながら二つの楽曲を自在につなぎ、憧れのルーツミュージックに無邪気なまでの愛情を注ぎ込んでいく。その姿は、25周年という節目を迎えたキャリア豊かなミュージシャンであると同時に、永遠のギター小僧、ロックキッズでもあるNAOKIの本質をそのまま映し出していた。

LOVE PSYCHEDELICO ライブ写真

 七色の照明が放たれ、えぐみのあるシンセベースとシンセサウンドが会場を揺らすなか、再びKUMIがステージに現れる。そこから投下された「Mind across the universe」は、マイナーとメジャーのあわいを行き来するメロディが印象的な、雄大なサイケロック・ダンスミュージック。The Chemical Brothersら90年代デジタルロックの感覚を、LOVE PSYCHEDELICO流に飲み込み、血肉化したようなサウンドスケープが広がっていった。

 そこから間髪入れず放たれたのは「LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー~」。「Money」を彷彿とさせる、あまりにも馴染み深いイントロが鳴り響いた瞬間、客席の空気がぱっと沸き立つ。サビではオーディエンスが一斉に拳を振り上げ、ステージから放たれる熱量へ真正面から応えていた。さらに「Last Smile」と初期の代表曲が立て続けに投下され、言うまでもなく場内のボルテージは上がるばかりだった。

 「Calling You」では、ステージに設置された数個のミラーボールが放射線状に光を放ち、NHKホールの空間をたちまち異世界へと変えていく。さらに続く「Everybody needs somebody」は、Primal Screamの「Rocks」もかくやと言わんばかりの祝祭的なロックンロール。バンドが生み出す巨大なうねりに、観客の身体も自然と引っ張られていく。そこから、〈rolling to the end of the sky/I am falling over again/life goes on〉と歌われる「Life goes on」へ。空の果てへ転がり、また落ちながら、それでも人生は続いていく──そのフレーズは、活動休止を発表した彼ら自身からのメッセージのようにも響いた。本編ラストを飾ったのは「Freedom」。そのタイトル通りの開放感と高揚感がホールいっぱいに広がるなか、本編は大きな拍手に包まれて幕を閉じた。

LOVE PSYCHEDELICO ライブ写真

 アンコールでは「Standing Bird」を披露したあと、KUMIが「LOVE PSYCHEDELICOの旅はもうすぐ終わるけど、私の中にも、NAOKIの中にも、みんなの中にも曲は残るから、いつかまたどこかで会えたらいいね」と客席に呼びかける。その言葉を噛みしめるように、場内からは大きな拍手が送られた。

 続く「All the best to you」では、厳かなオルガンの響きに導かれるように楽曲が始まり、KUMIがマンドリンで奏でたメインフレーズを、今度は観客全員がシンガロングしていく。ステージと客席の境界がゆるやかに溶け合い、会場がひとつの祈りのような一体感に包まれていく、あまりにも美しい瞬間だった。

 鳴り止まないダブルアンコールに応えて再び姿を現した6人が、最後に届けたのは「Your Song」。NAOKI、深沼、KUMIがアコースティックギターをかき鳴らし、高桑とともに4人でステージ前方へと並んで演奏する。その勇姿を目に焼き付けようと、観客は食い入るようにステージを見つめていた。LOVE PSYCHEDELICOとその仲間たちが鳴らしてきた音楽は、この夜、確かに一人ひとりの心に深く刻み込まれたはずだ。

※写真は4月22日公演の模様を掲載。

LOVE PSYCHEDELICO、最高の音楽環境へのあくなき探求 アコースティックツアー収録ライブ“作品”の楽しみ方

LOVE PSYCHEDELICOは、2000年のデビュー以来、意識的にデジタルとアナログの共存を模索してきたデュオだ。

LOVE PSYCHEDELICO、ライブ映像で堪能したい芳醇なアンサンブル 視覚的にも楽しい卓越したステージの見どころ

昨年11月23日に昭和女子大学 人見記念講堂にて開催された『LOVE PSYCHEDELICO Live Tour 2022 “…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる