LOVE PSYCHEDELICO、ライブ映像で堪能したい芳醇なアンサンブル 視覚的にも楽しい卓越したステージの見どころ

デリコ、視覚的にも楽しいステージ

 昨年11月23日に昭和女子大学 人見記念講堂にて開催された『LOVE PSYCHEDELICO Live Tour 2022 “A revolution”』のライブ映像作品が、3月29日にリリースされた。前作『LOVE YOUR LOVE』(2017年)からおよそ5年ぶりとなる通算8枚目のオリジナルアルバム『A revolution』を携え、2022年10月8日よりスタートしたツアーの東京公演である。ニューアルバムほぼ全曲に、過去の人気曲を加えた全パフォーマンスが収録されており、この日の公演は映像だけでなくCDでもリリースとなる。

 今回のツアーは、独自に設計・製造された特性スピーカーが各会場に導入されており、その音響の素晴らしさにも定評があった。また、ステージ後方に張られた巨大な半円形のスクリーンに投影する、サイケデリックな幾何学模様の照明も見どころの一つ。そうしたサウンド&ビジュアルを臨場感たっぷりに収めた本作品は、いまだ余韻覚めやらぬライブの感動を追体験するのにうってつけの内容だ。

LOVE PSYCHEDELICO「Live Tour 2022」トレーラー映像

 今回のツアーには、Curly Giraffeこと高桑圭(Ba)、伊藤大地(Dr)、PLAGUES / Mellowhead / Uniollaの深沼元昭(Gt)、そして松本圭司(Key)という馴染みのメンバーが脇を固める。その卓越した演奏はもちろん、一つひとつの楽器が放つ音を分離の良いサウンドスケープで楽しめるのもライブ映像作品の醍醐味だ。

 たとえばライブの冒頭を飾る「It's not too late」では、跳ねるようなエレクトリックピアノのコードバッキングに絡み合う、NAOKIと深沼の2本のギターオーケストレーションがクリアに聴こえてくる。ライブ会場では「音の塊」として耳に飛び込んできたそれぞれの楽器のフレーズが(筆者は千葉県・市川市文化会館大ホールで鑑賞)、まるで目に見えるかのように分離よく聴こえてきて、そのアンサンブルの妙に唸らされる。

 個人的には高桑のベースラインを堪能できるのが嬉しい。この「It's not too late」では各楽器の接着剤的な役割を担い、演奏をまとめながら、各セクションの辻褄を合わせていく。「名ベースプレイヤーには名アレンジャーが多い」とよく言われるが、高桑はまさにその一人だろう。特に「Shadow Behind」のベースラインにはとんでもなく痺れた。

 客席からのアングルはもちろん、ステージの上から各メンバーをハンドカメラで撮影した映像も必見である。たとえば、ステージでは一番奥にいる伊藤のドラミングを目の前で観ているような瞬間が何度も訪れる。ジョン・レノンもかくやと言わんばかりの変拍子を取り入れた「Radio song」では、中盤で唐突にスウィングするなどユーモアを散りばめた構成が印象的だが、ともすればぎこちなくなりがちなこの曲の展開を、伊藤の繰り出すしなやかなグルーヴがスムーズに牽引しているのがわかる。

LOVE PSYCHEDELICO「Radio song」(from Live Tour 2022)

 他にも、「Free World」では松本が演奏する(引っ掻く)ウォッシュボードの音が、控えめだが実はサウンドの中で非常に重要なアクセントになっていて、うずたかく積まれたキーボードに隠れて現場ではよく見えなかったその楽しそうなプレイを、カメラがしっかりとらえていたのも嬉しかった。

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