KAZ(数原龍友)、波乱万丈の人生経験が育んだ『LIFE GOES ON』という集大成 2ndアルバム徹底解説

KAZ(数原龍友)2ndアルバム徹底解説

 2024年の米・サンディエゴ留学を経てKAZとしてソロ活動を行っている数原龍友が、KAZ名義での2ndアルバム『LIFE GOES ON』をリリースした。還暦近くのおじさんである私の心を揺さぶり感動させた、その歌声の説得力はどこにあるのか。すべては彼の人生にあった。KAZはフォトエッセイ『ついてきて』(講談社)のなかで、「塞ぎ込んでいる人のために歌いたい。世界が素晴らしい、美しいということを。そのために歌っている」と書いている。その先に生まれたアルバム。波瀾万丈の人生経験が育み、人懐っこく飾らない人柄が紡いできたものの集大成、それがこのアルバム『LIFE GOES ON』。しかし人生100年時代、まだほんの3分の1を達成したに過ぎない。そして数原龍友の物語は、まだまだこれからも続いていく。そのほんの一瞬のきらめきは、とても儚く、しかしとても力強く美しい。(榑林 史章)

『LIFE GOES ON』で触れる、KAZの内面

ーー音源が届いて、最初は「聴くぞ!」って構えて聴いたんですけど、ちょっと違うなって思いました。もっと肩の力を抜こう、もっと気楽に聴いてくれと言われた気がして。それで家事とかしながら流していたんですけど、スッと入ってきて「このアルバムはこっちだな」って。

KAZ:そうです。肩の力はずっと抜いて生きていきたいですから。もうキュッとなって生きるのに疲れました(笑)。

ーーそもそも前作『STYLE』は「曲がたまったからまとめましょう」という感じで、構えて作ったわけではなかったから、きっと今作もそうなのでしょうね。

KAZ:まさしく。思いがあふれてこういうものが作りたいとか、こういう楽曲で今届けたい自分の思いがあるとか、基本的には自分きっかけで作っているので、焦って制作したものは1曲もありません。そもそもレコード会社の方にも、ソロプロジェクトを始めた当初から「のんびりやらせてください」と言っています。20代後半から「仕事=趣味」にしたいと思ってやっていて、自分が過ごしているライフスタイルや自分が見て感じた経験から生まれるものがたくさんあるので、それを表現したい、誰かに聴いてもらいたいと思って続けていたら、この2ndアルバムにまで辿り着きました。

ーー前作は『STYLE』というタイトルで、それこそKAZさんのライフスタイル、好きなものが詰まっていました。今作の『LIFE GOES ON』は「人生は続いていく」という意味で、前作よりもう少し踏み込んで、KAZさんの人生や内面に触れることのできるアルバムだと思いました。特に冒頭の2曲と、ラストの「floating ~空を泳いでいた僕が想うこと~」は、KAZさんが2024年に出されたフォトエッセイ『ついてきて』の内容とリンクする部分が非常に多かったです。

KAZ:この流れで最初に「floating ~空を泳いでいた僕が想うこと~」のお話をしますと、この曲は作曲・編曲が春川仁志さんで、作詞がよく春川さんと組んでやっていらっしゃる夏川サファリさんです。春川さんにはGENERATIONSの「涙」や「Star Traveling」でお世話になっていて、春川さんの作るJ-POPバラードは、EXILEの楽曲を含め名曲ばかり。それで今回ふと、春川さんに書き下ろしていただきたいと思ったんです。「涙」や「Star Traveling」の時は当時の精一杯でやらせていただきましたけど、きっと春川さんには、もっと僕たちに伝えたいことがあっただろうし、もっとやれると思ってくださって、もっと高いクオリティーのパフォーマンスを求めていたのだろうなと、今振り返ると自分が未熟だったことを感じます。それからいろんなキャリアも踏んできたし、今だったら春川さんの求めるものに応えられるのではないか、また春川さんの素敵な楽曲と出会えるのではないかと。それで春川さんのスタジオを訪ね、「GENERATIONSの時はありがとうございました」という挨拶から、その後のコロナ禍での話や留学の話もさせていただいて、最後にお伝えさせていただいたのは、「時代は変わったけれど、自分は変われなかった。歌うことで幸せを感じ、苦しみを感じる時もあるけど、歌うことしかできない人間である」と。それを受け入れてくれているファンの皆さんへの感謝の気持ちや、そんな自分だけどこれからもよろしくお願いしますという決意表明のような曲を、よろしくお願いしますと。春川さんも夏川さんも『ついてきて』を読んでくださっていたので、『ついてきて』と重なるところはそういうことだと思います。

6時間のレコーディングの中で深めた曲への解釈

ーー歌詞の〈誰かのために歌うこと〉という一節は、お父さんが亡くなってから、お母さんからいつものように歌っていてほしいと言われた、そのシーンがパッと重なりました。『ついてきて』は2年前に出版されていて、ファンの方はすでに読んでいると思いますが、改めて読み直してほしいですね。

KAZ:本当にそうですね。自分の意思や思いがたくさん詰まった楽曲で、自分だけでは表現しきれないところを春川さんたちが拾って、言葉やメロディにしてくださっています。自分で書いたわけではないけど、歌っていて本当に自分の言葉のように感じます。歌詞と曲をいただいた時は、胸が締めつけられるような思いにもなりましたし、「こういうことが歌いたかった!」と納得もしました。

ーーこの「floating ~空を泳いでいた僕が想うこと~」の歌声を聴いて、どこか少年のようなピュアさを感じました。きっと、夢を見ていたあの頃に気持ちが戻ってレコーディングできたのかなと思いました。

KAZ:あまり手を加えすぎず、一番自分の素直な歌声が乗ったのかなと思います。他の楽曲とかいつもは、だいたい1曲につき2時間くらいでレコーディングが終わるんですけど、「floating ~空を泳いでいた僕が想うこと~」は6時間かかりました。春川さんにディレクションしていただいたんですけど、自分の表現と春川さんが求めるものをすり合わせながら、何度も歌い直していたら、気づいたらそれくらい時間が経っていました。だけど1秒たりとも苦を感じることはなく、むしろ学び多き幸せな時間でした。自分の言葉のようにこの楽曲を歌えることに幸せを感じながら、歌っていました。きっと春川さんも楽しくなって、「もっともっと」と思ってくれたのかなと思います。「じゃあこれはどう?」「あれはどう?」と、いろいろ投げてくれたので、自分もそれに応えたくて。最後に完成音源を聴いた時は、本当に自分の心の声で歌えたような気がしました。

ーー歌詞に〈空を泳いだ〉と出てきますが、「floating」というタイトルも含めて、どのように解釈しましたか?

KAZ:今回発見があったのは、春川さんも海が好きだということ。僕もサーフィンが好きだから、「えー!そうなんですか!」って。よく湘南で釣りをされるそうで、会っていなかった期間にも、もしかしたら同じ場所にいたかもしれないですねって盛り上がって。それで海とか、自分のライフスタイルからもアイデアを拾ってくださって、「思うこと」を〈空を泳いだ〉と表現してくださったんです。歌詞に〈雲〉も出てくるんですけど、曇はつかめないものだから、悩んで一生懸命やっていたけど、結局つかみきれなかったなって。最終的に自分が、「変わろうと思っても変われなかった」というゴールに辿り着いたことを、詩的に表現してくださっています。

ーー空は見上げるものだから、すごく前向きですよね。

KAZ:そう。決してネガティブなものではない。変わろうと必死にもがいた時間も大事だったけど、逆に変わらないことの素晴らしさもあると、春川さんが楽曲を通して教えてくれました。だから、自分の人生は間違っていなかったんだなって、自信にもつながりました。春川さんとは久しぶりにご一緒させていただいて、成長した姿を見せられたと思うし、春川さんから「一緒にできて良かったよ」と言っていただいたことが、何よりうれしかったです。

KAZが到達した「楽しんでいこうよ」のスタンス

ーー頭に戻ってアルバムタイトルについて伺います。『LIFE GOES ON』は直訳すると「人生は続く」です。『ついてきて』にもあるような半生を送ってきて、KAZさんが辿り着いた答えのようなものなのかなと思いました

KAZ:そうですね。時には焦ることも必要ですけど、人生はまだまだ長く続きますから。前作の『STYLE』がご挨拶代わりの1枚だったとしたら、ようやく旅が始まったばかりの2枚目だと思っています。今の自分のリアリティーがすごく詰まっていて、でもまだ通過点ですよ、これから先はまだ長いですよって。

ーー人生100年時代と言われていますし。

KAZ:そうですよ。嫌なことや大変なことがあって、その瞬間は絶望を感じても、人生という長い目で見たら一瞬だったりする。人生にはキツいこともたくさんあるけど、とりあえずこのアルバムを聴いて、楽しんでいこうよ、という。

ーー33歳にして、そういう境地に立てているのはすごいです。でも『ついてきて』を読んで、KAZさんのそういう人生経験が説得力を持たせているのだなと、なるほどとなって納得しました。

KAZ:ありがとうございます。このアルバムには、その本を出した後の価値観も詰まっていて、例えば「Hush hush part.2」は、『STYLE』に収録の「Hush hush」と同じstyさんに作っていただきました。part.1(「Hush hush」)では、30歳を過ぎた時の自分が感じていた葛藤や価値観の変化、自分がライフスタイルを大切に生きていることを赤裸々にお伝えしてできたもの。今回part.2では、「ライフスタイルは大切にしているけど、時折、若い頃の華やかな生活やきらびやかな時間を過ごすのもいいと思うときがあるんです」とお話をさせていただいて。それで歌詞に〈東京〉というワードを入れてもらったんです。今の自分って、遊び好きの人からしたらめちゃくちゃ退屈なヤツだと思われるくらい健康的な生活を送っていて。夜11時には寝て、朝早起きしてサーフィンしてから仕事みたいな。でも時折お付き合いもあって夜遅くまで遊んだりすると、「これはこれで楽しいな!」って。退屈なことが幸せで、それが正解だと分かって生きているけど、「やっぱり都会もいいな」みたいな。そういう気持ちのループだなってことに気づいて。

ーーそうなるのは早くないですか?

KAZ:よく言われます(笑)。で、こういう話をstyさんにしたら「めっちゃ分かる!」って。styさんのほうが年上ですけど、「僕もそうだから」って。そういう話をしながら、「こうやって歳を取っていくんだ。じゃあこのままでいいんだ」と。そうやってすごく共感していただいて、できたのが「Hush hush part.2」です。だからこれは、リアルな今の自分の価値観です。

ーー楽曲的にもpart.1よりリズミカルで明るい印象で、価値観の変化が曲にも表れていますね。

KAZ:はい。part.1より、いい意味でアグレッシブな感じがします。でもstyさんは天才です! 制作のスピード感、歌詞の世界観、何を取ってもさすがです! styさん、先ほどの春川さん、作家さんに作っていただいた楽曲でも、ただ好きな人に作ってもらったのではなく、事前にいろんな話をして自分の気持ちをお伝えさせていただいた上で作っていただいています。実際にお会いして、腹を割って胸の内をさらけ出して、そこから作ってもらっている。だから、いろいろリンクすると思います。『ついてきて』を読んでくださった方が聴くと、「ああ!」って。

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