令和J-POPは“パラパラ”がトレンド? Snow Man、M!LK、CUTIE STREET……今、再熱する理由とは
近年、日本の音楽シーンを語るうえで欠かせないキーワードとなった“平成リバイバル”。Y2Kファッションの熱狂も勢いを後押しし、今やビジュアルの再現に留まらず、楽曲構造やダンスの様式といった表現の深部にまで浸透している。その最前線において、今まさに爆発的な再燃の兆しを見せているのが、1990年代から2000年代初頭にかけて一大ムーブメントを巻き起こした“パラパラ”だ。かつてのギャル文化やナイトクラブの象徴であったこのダンススタイルが、令和の音楽シーン――特にアイドルシーンにおいてTikTokをはじめとしたショート動画SNSと結びつくことで、これまでにない熱を生み出している。
パラパラが取り入れられた楽曲たち
M!LKの新曲「爆裂愛してる」も、ムーブメントを今まさに起こしている楽曲だ。ヒット曲「好きすぎて滅!」で見せたシュールかつ中毒性の高い世界観をさらに鋭くさせた本作は、ハイテンションなアッパーチューンとして構築されている。特筆すべきは、間奏部分で披露される鮮やかなパラパラの振り付けだ。直線的な腕の軌道、規則的なステップ、そしてどこか無機質ながらも力強い躍動感。そこには、かつてのパラパラブームを彷彿とさせる様式美が宿っている。しかし、それが単なる懐古趣味に終わっていないのは、楽曲の芯に現代的なハイパーポップの質感や、SNSでの拡散を前提とした“映え”の計算が働いているからだろう。実際、SNSではほかのグループ/アーティストやインフルエンサーがこのダンスに挑戦する動画が続出しており、パラパラという形式が、令和の若者にとっても“最高にクール”で“踊れるコンテンツ”として再定義されていることが窺える。
この再定義はM!LKだけに留まらない。近年のJ-POPシーンを見渡すと、パラパラ、ひいてはその音楽的基盤である“ユーロビート”を堂々と取り入れるグループが相次いでいる。たとえば、Snow Manの「カリスマックス」はその最たる例だろう。圧倒的なカリスマ性を放つ彼らが、高速のユーロビートに乗せて一糸乱れぬパラパラを踊る姿は、まさに圧巻の一言。高いダンススキルを持つ彼らが、あえて“型”の決まったパラパラを全力で表現することで、ユーロビート特有の幸福感と熱量がエンターテインメントへと昇華されている。また、CUTIE STREETの「キューにストップできません!」も無視できない存在だろう。彼女たちの楽曲には、原宿カルチャーのかわいらしさと、BPMの速いユーロビートの煌びやかさが同居しており、サビで見せるキャッチーな手の動きは、パラパラが持つ記号的な中毒性を巧みに利用している。
“平成リバイバル×ショート動画”の最適解
なぜ今、パラパラがこれほどまでに求められているのか。その理由は、パラパラという様式が“平成リバイバル×ショート動画”という現代のヒット法則における最適解であるからにほかならない。ダンスとしての構造に注目すると、パラパラは基本的に上半身、特に腕の動きが中心となる。これは、縦型動画において、極めて優れた表現手法と言えると思う。画面のフレーム内に収まりやすく、かつ視聴者の視線を上半身に集中させることができる。さらに、一つひとつの動きが直線的で型が明確であるため、ダンス未経験者であっても真似がしやすく、SNS上での“踊ってみた”動画のハードルを劇的に下げているのだ。
また、音楽的な側面においても、ユーロビートが放つ過剰なまでのポジティブさが、一種のカンフル剤として機能している点も見逃せない。昂揚を煽るシンセサイザーの旋律、ある種の快楽原則で押し切るようなユーロビートの曲調は、聴き手のテンションを瞬時に引き上げる。緻密で複雑な音作りが目立つ近年のJ-POPシーンにおいて、この潔いまでの“分かりやすさ”が、かえって新鮮なインパクトを与えているのだ。この即効性は、ショート動画全盛の今、一瞬で耳を掴むための不可欠な要素ともなっているだろう。さらに言えば、現在の10代や20代にとって、パラパラは過去の遺物ではなく、独自の文脈を備えた未知のニューカルチャーとして映っているのだと思う。今の時代には希薄となったギャル文化特有のギラギラとしたエネルギーが宿り、その野性味あふれるパワーこそが、彼ら/彼女らにとっては未踏の領域。デジタルネイティブの感性を激しく刺激しているものでもあるのかもしれない。
M!LKやSnow Man、そしてCUTIE STREETに見られるパラパラの導入は、単なる一過性のギミックではなく、こうした大きな潮流の頂点を示す象徴的な出来事のように思う。かつて渋谷のセンター街を席巻したあのダンスが、形を変えてデジタル空間を通じて再び日本中を揺らしている。複雑かつ高度で洗練されたアーティシズムを追求する流れがある一方で、誰にとってもわかりやすいフォーマットであるパラパラへの回帰が起きていることは、面白い現象と言える。かつてのブームを経験した世代には親しみを、それを知らない新たな世代には強烈な刺激を与えるパラパラの再燃。このトレンドが2026年の音楽シーンをどのように塗り替えていくのか、楽しみだ。

























