ZOCX、現代社会と呼応しながら更新する“アイドル”の姿 ワンマン『いいライブ見たいか?来い』を観て

ZOCXが更新するアイドル

 ZOCXが2026年3月18日に渋谷WWWXで開催したワンマンライブ『いいライブ見たいか?来い』は、2026年においてもZOCXが日本社会と強く呼応していることを改めて体感させるものだった。

ZOCX

 オープニングアクトを務めたのはTHE PINK MINDS。「ノーレシピ♡LOVE」では、ZOCXのファンに向けて、THE PINK MINDSの勢いを感じさせる覇気に満ちたパフォーマンスを見せた。「NEWろんりーロリータ理論」では、〈仲良いふりして大統領も / 日本のことバカにしてないっ?〉という現在ならではの歌詞を、ポップに表現してみせる。「変態ども」ではアンニュイな表情をも見せ、「FINE heART」では疾走感に溢れたステージを展開した。

 そして、この日のZOCXは、戦慄かなのが体調不良で欠席を余儀なくされたため、5人編成でのライブ。「ZOC実験室」では、激しさと濃密さを同時に表現し、「いいライブ見たいか?来い」という挑発的なライブタイトルを冒頭から回収するかのようだった。さらに「イミテーションガール」「IDOL SONG」とポップな楽曲が続き、「IDOL SONG」では天國3ゅ姫が歌っている背後で大森靖子と荼緒あいみがじゃれる光景も。

ZOCX

 メンバーの自己紹介の後、大森靖子は「『いいライブ見たいか?来い』vol.1へ来てくださってありがとうございます!」と、シリーズ初回のような挨拶をしたものの、実際には運営の判断次第だという。さらに大森靖子は、戦慄かなのの欠席のアナウンスに触れて、これまでは「休みのメンバーの分まで頑張ります」というようなことをSNSに投稿したくなかったので、藍染カレンに投稿を任せていたものの、彼女が卒業したため、猫猫猫はうのアドバイスによって、大森靖子が思っていることをすべて話すことにしたと語った。そう、欠席するメンバーがいようがいまいが、ZOCXは当然のようにライブに魂を込めているのだ。

 「DON’T TRUST TEENAGER」「draw (A) drow」とロックサウンドが続いたなかでも、「draw (A) drow」はZOCX名義になってからは初披露。大森の2017年のソロ楽曲を、5人の身体性で塗り替えたかのような爽快さがあった。「SHINEMAGIC」では、天國3ゅ姫と猫猫猫はうのシャウトが聴く者に深く突き刺さる。「CRUSH ALONE」では、千椿真夢のダンスの妖艶さも光った。7分超えの大曲「QUEEN OF TONE」は、荼緒あいみ加入後、2024年に発表された楽曲だが、5人のZOCXでは荼緒あいみが多くのパートを担っており、彼女の成長ぶりを雄弁に物語る。

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 大森靖子の「渋谷が嫌いだった」という独白の後、「一番嫌いな街で歌いたい」という言葉から「CUTTING EDGE」が始まり、そこには音楽と都市の軋轢が青い火花を放っているかのような鮮烈さがあった。「多様性」という言葉が叫ばれるようになる以前から、当たり前に多様性を描いてきたのが大森靖子であり、ZOCXだったのだ。

 「渋谷の一番の思い出が今日になりましたか?」という大森靖子の呼びかけに続き、天國3ゅ姫がさらにファンに声出しをさせた。そして、天國3ゅ姫の友達が、離婚で大変な状況のなか来てくれたという話題から、大森靖子が「『family name』やらなきゃね、今セトリ入れたから」「離婚してからが始まりだよ、『family name』」と前振りをして、「family name」へ。家族の呪いを描いた「family name」は、今なお強い輝きを放つ。「flop」はもともと椿宝座の楽曲であり、そこには大森靖子の愛媛時代も投影されているのだろうし、だからこその生々しい葛藤を感じさせる。「A INNOCENCE」は、そこに希望をもたらすかのように響いた。 

ZOCX

 ライブ本編が終わり、ファンのアンコールが響くなか、ステージ上にはスクリーンが登場。すると、そこに特報映像が流され、2026年6月4日にニューシングルがリリースされること、さらに6月6日から『そのかわいいに用はない』ツアーが開催されることが発表された。そして、メンバーが再登場して歌われた「そのかわいいに用はない」は、SNSを含む2026年の文化状況を鋭く射抜く。〈地獄で一人きり足掻く 君だけの 味方だ〉という歌詞は、ZOCXというグループの姿勢を改めて表明するものだ。

 写真撮影を挟んで、動画撮影可能の「はーふついん♡うぉーず」「チュープリ」によってポップにライブを締めくくったZOCX。とはいえ、大森のMCによると、ニューシングルはボーカルだけで91トラックもあるという。そんなアイドル・ポップスを私は寡聞にして知らない。これからもZOCXはまだ見ぬアイドルの姿を提示してくれるはずだ。

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