ミニマムジーク「地を這うようにバンドをやっていきたい」 新作『六季』で見出した“等身大”の中にある可能性

“季節の描写”に滲む、山之内ケリーの人間性
――スタジオに入って3人で一緒に曲の構成から考えていくということは、「家に持ち帰って考える」みたいなことができないわけで。今の自分たちが持っているものしか出せないという意味で、バンドの現在地が試される制作ではありますよね。
山之内:そういう意味では、背伸びしてないというか。マジで一番等身大のミニマムジークかもしれないです。『標本』を作っていた時は「ゆくゆくはこういうことができるようになりたい」という思いもあったけど、それとは逆の、身の丈に合った曲も必要だなとツアーを回りながら感じていたので。この6曲を作れてよかったです。……こんな作り方、もうしないですけど(笑)。

――やっぱり大変でしたか(笑)。
山之内:大変でした。でも、楽しかったですよ。振り返れば、楽しさの方が……。
オオサキ:いや、さすがに“大変だった”が勝つな(笑)。従来のやり方だと構成とかもおおよそ決まっているから、「だったら僕はこうしたい」という感じでアレンジも考えやすいんですけど、今回は何も決まっていなかったので……。
山之内:「僕らはどこに向かってるんだ?」みたいな(笑)。
鍋島:確かに。可能性が無限大過ぎて「どうしたらいいんだ?」みたいな瞬間も多かった(笑)。
オオサキ:だから繰り返し合わせるしかなかったし、レコーディング中に変わることもあったし。最初の方はまだ、3人で合わせたあと、一旦ケリーが持ち帰ってそこから膨らませるってこともできたけど、制作期間終盤に入って、時間が迫ってくると、どんどん3人で合わせて、その場で決めることも増えていって。
山之内:僕はその、終盤に入ったくらいから逆にノリノリになってたかも(笑)。
オオサキ:まあ確かに、楽しさもあった(笑)。
鍋島:選択肢を何パターンも並べて、スタジオでひたすら弾いている時は「ああ、しんどい……」って気持ちもよぎるんですけど、帰り道で「あの話し合いは有意義だったな」「今日のスタジオは満足感があったな」と感じることが多かったです。
――歌詞についても聞かせてください。「春の幻影」の〈春の陽気だね、でもね/なんかあんま嬉しくないのはね〉というフレーズからアルバムが始まるのがいいなと思って。いきなり否定から入る感じ(笑)。
山之内:そっか、これ1曲目ですもんね(笑)。この歌詞は僕って感じがしますね。春って、街がすごく楽しそうじゃないですか。季節が、自分の生活の充実よりも先を走っているのが嫌なんですよね。「街ばっかり楽しそうにしやがって」みたいなことは夏が来た時にも思うし、季節が変わるたびに思う。こういう人間だからこそ、季節に絡めていろいろと書けたんじゃないかと思いますね。

――その視点でいつかクリスマスソングを書いてみてほしいです。世に溢れる曲とは違う曲になりそうなので。
オオサキ:いいですね、面白そう。
山之内:いやー、書けないと思いますよ(笑)。書けたとしても、かなり穿った視点の曲になっちゃう気がする。
――それが聴きたいんですよ。季節から心が置いていかれた感覚を覚えた時に筆が進むという話でしたけど、だからなのか、今回、別れや時間が経っても消えない記憶を歌った曲が多くて。
山之内:確かに。……今気づきました、本当にそうだ!
オオサキ:元々そういう曲を書くタイプだったよね?
山之内:そうなんだけど、歳を重ねるにつれて、過去を思い返すことが確かに増えてきていて。
――それはなぜでしょう?
山之内:うーん……それだけ楽しい記憶があるということなんですかね?
――そういうことなんじゃないかと私は思いました。今回の制作を「つらかったけど楽しかった」と振り返れているように、バンドとして歴史を重ねるなかで、楽しい記憶が増えてきているというか。
山之内:ああ、確かに。バンドをここまで続けてきて、悩むことはいまだに多いけど、全部後悔しているようでしていないんですよ。そのタイミングでは悩んでいたことでも、時間が経ってから振り返ったら、結局ポジティブな記憶になっている。そういうところが曲に出ているのかもしれないです。

――5月1日からツアーが始まりますね。初日の会場は渋谷CLUB QUATTRO。過去最大規模の会場です。
オオサキ:当日は緊張するかもしれないけど、緊張すらも楽しめたらいいなと。キャパが増えて、観に来てくれる人の数が増えても、今までと変わらず「ここにいる全員、一人ひとりが僕たちの音楽をしっかり聴きに来てくれているんだ」という意識で臨みたいです。
鍋島:ツアー初日なので、「これでツアーが決まる」という気持ちでいきたいです。あと、3人の雰囲気をしっかり伝えられるライブにできたらと思っていて。
山之内:「まずは3人が楽しむ」みたいな意識でやっていると、内に入っていっちゃって、お客さんとの間に距離ができちゃうんじゃないかと思っていたんですよ。だけどお客さんは僕らの作る空気に乗っかってくれるから、みんなを巻き込むには、むしろそれがいいんだと最近気がついて。会場が広い分、音を鳴らしているだけでも楽しいような気がするから、不安よりも「楽しみ」って気持ちが勝ってます。曲も十分揃っているし、「これがミニマムジークだ」というライブを早く見せたいな、早くやりたいな、という気持ちです。

◾️リリース情報
ミニマムジーク『六季』
発売日:2026年3月4日(水)
CD価格:¥1,650(税込)
<収録曲>
1.春の幻影
2.millennium babies
3.泣きぼくろ
4.Bayside
5.融解
6.See you wonderland
◾️ツアー情報
ミニマムジーク『hiAツアー』
2026年5月1日(金)東京・渋谷CLUB QUATTRO
2026年5月6日(水)新潟・上越EARTH
2026年5月12日(火)大阪・心斎橋BRONZE
2026年5月27日(水)石川・金沢vanvanV4
2026年5月28日(木)愛知・名古屋シャングリラ
2026年6月4日(木)北海道・札幌KLUB COUNTER ACTION
2026年6月6日(土)宮城・仙台enn 3rd
2026年6月19日(金)福岡・福岡Queblick
2026年6月23日(火)兵庫・神戸太陽と虎
2026年6月26日(金)長野・松本ALECX
2026年7月9日(木)茨城・水戸LIGHT HOUSE
2026年7月10日(金)神奈川・F.A.D YOKOHAMA
2026年7月16日(木)岡山・岡山CRAZYMAMA 2ndRoom
2026年7月20日(月)京都・KYOTO MUSE
and more























