Ado、中島健人、=LOVE、RIIZE、藤原さくら、Aile The Shota……注目新譜6作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はAdo「ビバリウム」、中島健人「Waraigusa」、=LOVE「劇薬中毒」、RIIZE「Flashlight」、藤原さくら「Every day」、Aile The Shota「キセキセツ (Prod. Taka Perry)」、の6作品をピックアップした。(編集部)
Ado「ビバリウム」
クローゼットにいるAdoの後ろ姿が映し出された初の“実写ジャケット写真”も話題を集めている新曲「ビバリウム」。自伝的ノンフィクション小説『ビバリウム Adoと私』(KADOKAWA)とリンクしたこの曲は、作詞作曲をAdo自身が担当していることを含め、彼女のキャリアが新たなフェーズに入ったことを示している。マスロック的なギターフレーズ、変拍子を交えたアレンジとともに放たれるのは〈仄暗い 箱庭で〉夢を見ていた少女の幻影と、大人になってしまった現在の自分とのコントラスト。止むことがない自己否定、それでも希望を求めてしまう自分自身の内声をここまで強く表現した楽曲はもちろん初めて。生身のAdoはここから、どんな物語を紡ぐのか? そんな期待を抑えることができない。(森)
中島健人「Waraigusa」
2ndアルバム『IDOLIST』収録曲のひとつで、GEMNでの相棒・キタニタツヤが作詞作曲を担当。アルバムにはトップアイドルの矜持を貫くダンサブルな曲が多い中、これだけはキタニのネガティブな視点が反映された喪失の歌である。タイトルは〈せめて笑い種にでもなるように〉という歌詞から取られているが、中島のセルフライナーノーツ(※1)に目を通すと、これは普段の中島健人が苦手とする行為であるらしい。キタニの曲だから「上手く演じられた」とのことで、この曲における中島はキラキラで自信満々なアイドルの顔を捨て去り、弱さや息苦しさにまっすぐ向き合っている。他の楽曲とは声色や発声法も微妙に違うところが実にプロフェッショナル。(石井)
=LOVE「劇薬中毒」
デビューから9年目、記念すべき通算20枚目のシングル曲。作詞はプロデューサーである指原莉乃、作曲は齋藤奏太で、歌謡テイストの中に弾けるラテン風味がクセになる一曲だ。赤白のジャケはバレンタインの季節を意識したのだろうが、ときめく恋の歌ではなく、セルフラブソングでもない、危険な匂いと終わりの予感に満ちた歌詞が逆に新鮮。〈私は今 毒に侵されて/あなたしか効かない/劇薬中毒〉なんていうのは昔の作詞家が歌姫に好んで書いていたフレーズを思わせる。つまり、令和のアイドルソングというよりは昭和の悲恋歌謡に近いので、元気なユニゾンではなく、それぞれメンバーの切ない独唱で主旋律を繋いでいくのは大正解。(石井)
RIIZE「Flashlight」
日本1stシングル『Lucky』(2024年9月リリース)以来、約1年5カ月ぶりとなる日本2ndシングル『All of You』に収められた「Flashlight」は、BRIIZE(RIIZEファンの呼称)への愛情をダイレクトに映し出した楽曲だ。80’sエレポップ風のシンセの音色、レトロフューチャー的なビート、心地よい解放感を描き出すギターフレーズが一つになったサウンドとともに放たれるのは、〈Forever 輝くOur story/YOU & I〉というライン。2025年における日本国内での密な活動が、このフレーズに強い説得力を与えていることは間違いないだろう。爽やかさとエモさを併せ持ったメンバーのボーカル/ハーモニーも絶品。2月21日から23日に開催予定の東京ドーム公演でも歓喜のステージが繰り広げられることになるだろう。(森)
藤原さくら「Every day」
耳と喉の不調に見舞われ、音楽と距離を置かざるを得なかった時期を経て制作されたというニューアルバム『uku』。「自分にとって音楽とは?」という根源的なテーマと向き合いながら生み出された本作の最後に収められている「Every day」は、まるで水の中をたゆたうような音像とともに、自分自身に語り掛けるような歌が広がるミディアムチューン。何もなくてもいい、悲しくてもいいから、そのままで進んでいこう。いつだって“今”が私たちを包んでいるんだから……そんな切実なメッセージがゆったりと伝わってくる。現代的なジャズとアンビエントな佇まいがナチュラルに溶け合うサウンド(プロデュースはドラマーの石若駿)にも注目してほしい。(森)
Aile The Shota「キセキセツ (Prod. Taka Perry)」
四季がテーマのひとつであるアルバム『REAL POP 2』のラストを飾るナンバー。夏ソング「向日葵花火」は洒脱なシティポップ、冬ソング「ハナユキ」は心温まるバラード。テーマが普遍的であるがゆえに楽曲の型もよくあるものになっていくのだが、アルバムの最後が〈今日はどんな季節を歌おう〉という歌い出しの曲がくることで、“シンガー・Aile The Shotaのあり方”を語るメタ視点が生まれている。プロデューサー・Taka Perryと作り上げるダンスビートに乗り、ラッパーのように言葉を紡ぐ様子はまさに現代的なマルチクリエイター。ただし、歌詞の端々に自分が歌う理由、理想とするイメージが刻まれており、彼が“POP”という言葉を標榜する意味が改めて伝わってくる。(石井)
※1:https://www.nakajimakento.com/IDOL1ST/