「歌をやめる選択肢はない」ーー礼衣が選んだ音楽の道 生みの苦悩、川谷絵音との新曲「ハートマーク」を語る

シンガー・礼衣が語る“ソロ”への覚悟

 音楽プロジェクト・日曜日のメゾンデへの参加やグループ活動を経て、昨年ソロ始動を発表したシンガー・礼衣。明確な“歌手の夢”を持たなかった彼女が、なぜ自ら作詞・作曲を手掛け、表現者としての道を歩み始めたのだろうか。最新曲「ハートマーク feat.川谷絵音」の制作秘話、SNS発のコミュニティが生んだ音楽的ルーツ、曲作りへの挑戦で見えてきた苦悩、唯一無二の歌声に込める想い、そしてクリエイターとして直面した壁とはーー。悩みながらもひたむきに表現の境地を切り拓く、彼女の現在地に迫るインタビューをお届けする。(編集部)

比較されるなら自作の曲でーー誰の模倣でもない“個”を確立する覚悟

──最初に、礼衣さんが音楽を始めた経緯を教えてください。

礼衣:きっかけらしいきっかけは特にないんです。その時々の選択の連続で、今こんなことになっているという感覚で(笑)。でも歌うことは昔から好きでした。中学生の頃、自分が歌った動画をTwitter(現X)に載せていたので、それが始まりだったのかなと思います。

──その頃は「アーティストになりたい」とか「歌うことを仕事にしたい」という夢はあったのでしょうか?

礼衣:いや、それが将来の夢に繋がるとはまったく考えていなかったです。部活は吹奏楽部でしたけど、それも趣味としてやっているという感じで。中学生の時に機材を買ってレコーディングしてネットに投稿したことだけが、唯一自発的に行動したことだと思います。それ以降は、面白そうだなと思ったものを選んでやっていたらここまできた。だから「歌手になりたい」と明確に思った瞬間はありませんでしたね。

──そうなんですね。歌うことは昔からお好きだったとのことですが、音楽はどういうものを聴いていたのでしょうか?

礼衣:当時はサブスクもなかったし、音楽を聴くにはCDショップに行くとかパソコンに取り込むとか一手間が必要だったので、そこまで音楽は聴いていなかったです。でも歌うことは好きだったから、ヒットしている曲をなんとか覚えてカラオケに行く、みたいな感じでした。

──ヒットしている曲をなんとか覚えるのは、テレビを観て?

礼衣:主にニコニコ動画からでしたね。ボカロ曲はCDショップに行かなくても簡単に聴けたし、ニコ動には「歌ってみた」など、歌う文化もあったので。でもニコ動とかボカロ曲が好きだったというよりは、当時はTikTokもなかったし、それくらいしか自分が歌を歌ってどこかに発信するというコミュニティがなかったから。「歌うために聴いていた」という感じで。

──誰かに憧れたり、「こうなりたい」という理想像があったりしたわけでなく、とにかく歌いたかったんですね。

礼衣:はい。性格的に自分が一番じゃないものにハマらないんです(笑)。もしすごく好きなアーティストや強く影響を受けたアーティストがいたら、その人たちを聴いていればいいと思ってしまって、たぶん自分が歌おうとは思わなかったと思います。

──なるほど。いつのまにか今の場所にいる感覚だとおっしゃっていましたが、では「自分はシンガーだ」とか「音楽をやっているんだ」と自覚した瞬間もない?

礼衣:それはソロを始めた時ですかね。「ソロでやる」と決めたのは自発的なことだったので、自覚をしたのはそこだったのかも。

──ソロでの活動を発表したのが去年ですもんね。ソロでやると決めたのはどうしてだったのでしょうか?

礼衣:昔から「歌手になる」とか「音楽で食べていくぞ」とか考えたことがなかったから、グループ(ツユ)の活動が終わった時に何もなくなっちゃって。就職するとかアルバイトをするとか、ほかの人生も考えたんですが、その時に「別に音楽をやめる選択肢はないか」と思ったんです。

──そこで初めて音楽を“選んだ”と。

礼衣:はい。音楽を辞めてもたまには歌えるかなとも思ったんですけど、音楽を続ける以外の選択肢ってないかもって思ったんですよね。同時に、誰かとやるのは違うのかなと。せっかく1からやるならひとりでやってみたいと思いました。

──それまでは提供曲を歌っていたので、どちらかというと“どう伝えるか”の部分を担っていたわけですが、ご自身の名義で活動を始めると“何を伝えるか”というところから自分で決められるようになります。礼衣として活動を始めるにあたって、音楽で伝えたいものは何かあったのでしょうか?

礼衣:自分がどハマりしたものがないということは、自分に刺さるものを作れたら、それは今までこの世の中になかったものになる可能性があるじゃないですか。そう考えると、いい意味で何にも影響を受けてこなかった私が曲を作ったら面白いものになるんじゃないかなと思ったんですよね。ソロになるにあたっていろんな人に相談したんですが、「1曲も作ったことがないということは、曲にするような出来事がいっぱい溜まっているんじゃない?」と言われて。それで、やってみようと思えました。

──本当に1曲も作ったことなかったんですか?

礼衣:なかったです(笑)。

──歌詞を書いてみたこともない?

礼衣:全然なかったですね。自分が考えたことを歌詞にして、それを自分の考えたメロディに乗せるなんて、恥ずかしいと思っていたので……。

──提供してもらう楽曲はすべてクオリティが高いですしね。「自分にもできそう」とはならなかったと。

礼衣:そうなんです。むしろ、そこはちょっと今ぶつかっている壁でもあるんですけど……。歌に順位はないけど、楽曲になると再生回数とか売り上げは数字になるじゃないですか。ランキングもあるし。自分では神曲だと思っていても、それが数字に繋がらないことのほうが多くて。それをどう乗り越えていこうか、今は悩んでいるところです。曲を自分で作ることになった時に「最初は絶対にしんどいよ」と言われたんですが、最近になって、あらためてとんでもないことを始めてしまったなと気づきました。

違法建築 (shaky) – 礼衣 Music Video

──とはいえ、ソロ1曲目「違法建築」からご自身で作詞曲を手掛けられていますよね。楽曲のイメージを伝えて、クリエイターに作ってもらうという選択肢もあったと思いますが、そこでご自身で作詞曲を手掛けたのはどうしてだったのでしょうか。

礼衣:これまでずっと同じ作家の方に作ってもらっていたので、誰が書いても、それと比較される気がして。どうしたって言われるんだったら、自分で書いた曲で言われるほうがいいなと思ったんです。この先は誰かに作ってもらうのもありかなと思うんですけど、最初だけはどんなものになろうと、自分で作ろうと決めていました。

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