J.Y. Parkは歌い、踊り、奏でる――来日公演で見せた“エンターテイナーの真髄” I.N(Stray Kids)との共演も
90年代から休むことなくK-POPシーンをけん引してきたアーティスト J.Y. Parkが2月5日、東京・Kanadevia Hallにてワンマンライブ『J.Y. PARK CONCERT ‘HAPPY HOUR’ IN JAPAN』を行った。4度目となる今回の来日コンサートは、最新シングル「Happy Hour」をはじめとする歴代のオリジナル曲を中心に、後輩たちへの提供曲やJ-POPのカバーソングなど計33曲を披露。豊富なキャリアのなかで育まれた最上級のエンターテインメントに、会場を埋め尽くした人たちは熱狂した。
定刻になると、笑みを浮かべたJ.Y. Parkがさりげなく登場。ステージ上にはピアノ1台とギター1本、そしてたき火が映し出される床置きのモニターのみ。シンプルなセッティングで始まったコンサートに誰もが驚いただろう。まずは自身が手掛けた作品で、社会現象になるほどヒットした「Nobody」(原曲:Wonder Girls)をギターで弾き語り、今回の公演名にもなったカントリーポップの「Happy Hour」を歌い上げると、客席はすっかり和やかなムードに。
軽快なトークをはさみながら、次の曲へ。韓国の人なら大半が知っているという1994年のデビュー曲「Don’t leave me」、初期の人気曲で若手のカバーも多いバラード「Behind you」、「日本で僕の名前が知られるようになった作品」としてテレビドラマ『ドリームハイ』(KBS/2011年)のタイトルソングや「忘れられない君(IF) Japanese ver.」などをピアノで演奏。さらに自身の恋愛観を投影したニューソウル風の「YOU'RE THE ONE」、NiziUへの提供曲「Make you happy」と、素朴なアコースティックサウンドが続いていく。
いつもとは違った雰囲気のライブでスペシャルな気分を味わったあとは、バックバンドとともに井上陽水の大ヒットナンバー「リバーサイド ホテル」と自作曲「When We Disco」をメドレー風につなげ、今度は自作曲「FEVER」とレイ・チャールズの歌唱で知られるR&Bの古典「Hit The Road Jack」をセットで届けた。自らが作り上げたスタイルと影響を受けたアーティストの音を並べて紹介する試みは、DJ的でもあるが、このようなアイデアをライブで実践するK-POPアーティストはかなりレアだろう。
途中からバックを支えるミュージシャンが一気に増えて、12人編成に。リリースした1995年のトレンドを反映したダンスポップ「Proposal Song」、同じく初期の名曲「Elevator」、シンセベースの重たいリフが印象的な「Who’s your mama?」といったJ.Y. Parkらしさ全開のナンバーで激しく歌い踊ると、客席のレスポンスも徐々に熱くなっていった。
彼はシンガーとしてはもちろんのこと、プロデューサー/コンポーザーとしても数多くの代表作を持つ。ライブの中盤ではそうした面にクローズアップするコーナーがあり、スペシャルゲストとしてStray KidsのI.Nが登場。彼とともに「This Song」(原曲:2AM)と「Switch to me」(原曲:Rain)を披露して観客を驚かせた。そして公演日の3日後(2月8日)に誕生日を迎えるI.Nのためにバースデーケーキとプレゼント(トレーニング用シューズ)がサプライズで出てきたのを機に、穏やかなトークを展開。締めくくりにファンと一緒に記念撮影をしたI.Nは幸せそうな表情でステージを去っていった。
J.Y. Parkのまな弟子たちのなかで、特に日本で人気が高いのがTWICEだ。彼女たちの代表作のうち、「Feel Special」はスローバラードで、「Alcohol-Free」ではラテンのフレイバーを加え、「What is Love?」ではキュートな振り付けを違和感なくこなすなど、ベテランプロデューサーらしいこだわりが伝わってくるリメイクに感心した観客も多かったに違いない。
「今は妻と子供がいて幸せですが、闇の時代もありました。これからやる曲はその頃に作ったもの」と話して歌い始めたのは、許されない愛をテーマにした「I have a lover」。実際に客席からファンを招き入れ、ステージ上でパフォーマンスを繰り広げる演出もあり、会場を沸かせた。こうした演出はアーティスティックな面と芸能人としてのオーラを併せ持った彼だから、こそ、スマートにできるのではないだろうか。
いよいよ終盤。ここからはアップテンポのナンバーが間髪を入れずに続いていく。現役でがんばる自分自身を褒めたたえた「Still Alive」、マイケル・ジャクソンへの愛がたっぷり詰め込まれた「She was pretty」、フルバンドによるゴージャスな演奏で再び届けた「Don’t leave me」など計4曲で、2時間以上に及んだ本編は幕を閉じた。
アンコールに応えて再び現れた彼は、J-POPの名曲を立て続けに熱唱。ラッツ&スターの「め組のひと」で盛り上げると、桑田佳祐の「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」とチェッカーズの「ジュリアに傷心」では、客席に下りてファンサービスを始めた。最後はギターのリリカルな音色が鳴り響くなか、「今日、僕にこのような幸せをくださって本当に感謝しています」と伝え、サザンオールスターズ「いとしのエリー」を歌い上げたJ.Y. Parkは、ゆっくりと舞台を去っていった。
今回のセットリストに入った「Still Alive」には、次のようなフレーズが出てくる。
〈レコード盤がカセットになり/カセットテープがCDに変わり/CDがダウンロード、ストリーミングになっても/90年代 2000年代 2010年代も/(オレは)イケてるね〉
ソロ公演『J.Y. PARK CONCERT ‘HAPPY HOUR’ IN JAPAN』では、デビューから現在までのオリジナルソングが次々と紹介されていったが、ひと通り聴いてみると、どの曲もトレンドに左右されないオンリーワンの美学と、「自分の音楽を追求したい」という純粋な気持ちがにじみ出ていることに気づく。それこそが長いあいだ現役でいられる秘訣なのだろう。「来年も開催する」と宣言した次回の来日公演では、30年を超えるキャリアの総括を経て、さらに前へ進む姿に期待したい。