Vaundy、M!LK、サカナクション、SUPER BEAVER、IVE、ヤングスキニー……注目新譜6作をレビュー
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はVaundy「シンギュラリティ」、サカナクション「いらない」、SUPER BEAVER「燦然」、IVE「BANG BANG」、ヤングスキニー「stay with me」、M!LK「爆裂愛してる」の6作品をピックアップした。(編集部)
Vaundy「シンギュラリティ」
初の4大都市ドームツアーの真っ最中にリリースされた新曲「シンギュラリティ」は、1980年代後半から2000年代初頭にかけて制作された英国美術にフォーカスした展覧会『テート美術館 — YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート』のテーマソング。影響を受けたアーティストの一つにOasisを挙げてきたVaundyにとってドンピシャのコラボレーションであり、果たして届けられた「シンギュラリティ」は、歴史のなかで数々の転換点を生み出し、時代や場所をダイレクトにつなげる機能を担ってきた芸術への愛着がダイレクトに反映された楽曲に仕上がっている。華やかなホーンセクション、軽快かつしなやかなグルーヴを放つサウンドと〈まだまだ加速するよ〉というフレーズが重なった瞬間の解放感もこの曲の大きなポイントだ。(森)
M!LK「爆裂愛してる」
昨年の『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に初出場を果たした5人組グループ、初の両A面シングル『爆裂愛してる / 好きすぎて滅!』。ともに作曲は浅野尚志で、おそらくだが「突き抜けた浅野節でお願いします」くらいの依頼があったのではないかというほどの2曲に仕上がっている。〈ば・く・れ・つ〉(「爆裂愛してる」)や〈マジぎゅんぎゅんぎゅん〉(「好きすぎて滅!」)などパンチラインだらけの2曲は本気と狂気の境目で成立する最強のアイドルソング。さらに「爆裂愛してる」のほうはビッグバンド風からテクノへと急にカラーが変わるというすさまじい流れである。匙加減を間違えれば冗談になるが、ちゃんと愛があるし、歌うM!LKも本気でこの世界観を演じきっている。すごい。(石井)
サカナクション「いらない」
サカナクションの復活を印象付けた「怪獣」以来となる新曲「いらない」は、山口一郎(Vo/Gt)と親交の深い加藤浩次(極楽とんぼ)が監督を務めるドラマ『こちら予備自衛英雄補?!』(中京テレビ/日本テレビ系)主題歌。公式YouTubeにアップされている「サカナクション / いらない -Behind the Scenes #4-」において楽曲制作の背景が公開されているのだが、特に興味深いのが“円グラフで楽曲コンセプトを整理中”という部分で、テクノポップ、LCD Soundsystem、「すばらしい日々」(ユニコーン)などモチーフになっている要素を明かしているのだ。それを踏まえて曲を聴くと「なるほど、こうなるのか」という答え合わせをしている気分になり、これだけ多彩なファクターを組み合わせながら親しみやすいポップミュージックへとつなげる技術はさすがとしか言いようがない。ただ、新しさや実験性はあまり感じられない。手癖に頼っているとは言わないが、長年培ってきたスキルの高さが前に出ていて、刺激的なケミストリーには達していない気がするのだ。インディーズの頃から彼ら/彼女らの音楽を聴き続けているリスナーとして、さらなる興奮を求めてしまうのは贅沢だろうか?(森)
SUPER BEAVER「燦然」
映画『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』主題歌となる書き下ろし新曲。装飾のないシンプルなロックンロールはこのバンドとしては久しぶりで、同時に最も得意とする武器でもある。作詞作曲を手がけた柳沢亮太(Gt)は物語に寄りそうのが上手く、欲望渦巻く街の中で〈護りたいものを 護りたい〉〈またあなたに会いたい〉と勇気を奮い立たせる主人公たちの心を掬い上げていく。ただ、それを万人へのメッセージとして表現できるのが渋谷龍太(Vo)であり、〈魂を騙くらかして 笑えるもんか〉などのフレーズは、さらにリスナー一人ひとりに届くべき言葉として刺さってくる。SUPER BEAVERが絶大な支持を集めている、その理由がよくわかる一曲だ。(石井)
IVE「BANG BANG」
最初に聴こえてくるのは、古き良き西部劇を想起させるフレーズ。そこからエレクトロとヒップホップが絶妙に絡み合うトラックへと移行し、韓国語と英語が共存するリリックが響く。全体的にはレトロフューチャー的な音像なのだが、ダンスミュージックとしての機能、韻の踏み方の面白さなどが相まって、トレンドや時代性を超越するような楽曲に結び付いているのだ。歌詞の真ん中にあるのは、他人の視線や意見、噂話に惑わされることなく、自分の意思で突き進もうというメッセージ。グローバリズムを意識しながらルーツを忘れず、自分たちらしさを貫いたまま世界中のリスナーへのアピール。IVEの状態の良さがはっきりと伝わる、ニューアルバム『REVIVE+』の先行配信曲だ。(森)
ヤングスキニー「stay with me」
ニューアルバム『理屈で話す君と、感情論の僕』の1曲目を飾る楽曲。この後には「るっせぇ女」や「関白宣言」などが控えているので、どんなクソ野郎が出てきても驚かないぞと身構えたが、聴こえてきたのはピアノの伴奏がよく似合うミドルバラード、大好きだった人とバッドエンドを迎えてしまったことを切々と告白する曲だった。オフィシャルのメンバー解説を読んでも、恋愛体質ゆえに音楽との両立が難しい、永遠の矛盾を抱えているかやゆー(Vo/Gt)の心境が偽りなく語られており「なんか……思ったよりイイ奴じゃないか」とほだされてしまう曲でもある。生活や恋愛を赤裸々に切り売りする私小説的作家として、今かやゆーの存在感は群を抜いている。(石井)