RADWIMPS 20周年ツアーファイナル徹底レポ 山口智史もサプライズ登場、バンドの歩みが凝縮された特別な夜

山口智史「ただいま!」 抑えきれない想いが溢れた感動のアンコール

 アンコールでは、センターステージに野田と武田が現れる。野田はピアノ、武田はエレクトリックチェロを構えた。「正解」が始まる。卒業式の合唱曲としても広く歌われるようになったこの曲を、1万3千人が声を揃えて歌う。正解のない問いに向き合い続けることの意味を、この日、この場所で、会場にいる個々人が重ねていく。

 そして、その瞬間が訪れた。野田がその人をステージに迎え入れる。

「今日だけのスペシャルゲストを呼んでもいいですか? RADWIMPSドラマー、山口智史」

 比喩ではなく、会場が揺れた。驚きと興奮と、名前のつかない感情が入り混じった歓声と拍手。静かに姿を現した山口の前に、ステージ中央のドラムセットが姿を見せる。山口が武田と野田のもとに歩を進め、抱き合う。改めて、野田が山口をオーディエンスに紹介する。

「10年前に活動休止したんですけど、僕たちの仲間の山口智史です。今日は一緒に演奏したいと思います。VXDという装置を使って。彼は今その研究をずっとやりながらドラムを叩いてます。今日はその演奏で、一緒にデビュー曲を披露したいと思います」

山口智史

 VXDとは、山口が無期限休養の要因となったジストニアという病気をきっかけにヤマハと共同開発した、声でバスドラムの音を鳴らすシステムだ。昨年8月、山口はこれを活用し、10年ぶりに演奏復帰を果たしていた。そして鳴らされた、「25コ目の染色体」ーー彼らのメジャーデビュー曲が、トリプルドラム編成で鳴らされた。サポートドラマーと共振しながら、丁寧にドラムを叩く山口の姿がそこにあった。

 曲が終わり、山口が口を開いた。

「ヤバいね。ヤバい以上の言葉が見つからないよ。1曲だけしかやってないけど、『ただいま』って言っていいですか。ただいま!」

 客席から「おかえり!」の声と大きな拍手が返る。

「本当に信じられない。こんな日が来るなんて思ってなかった。でも、今、確かに自分はここにいて。それはやっぱりRADWIMPSが20年、走り続けてきてくれたからこそで。自分は途中で倒れてしまったけど、それでも洋次郎と武田、そしてサポートしてくれてるみんなが止まらずに走り続けてきてくれたことで、今日という日があるということ。このことに心から感謝してます。本当にありがとうございます。そして、何よりもRADWIMPSと出会ってくれたあなた、あなた、あなたのおかげでRADWIMPSは今日まであり続けたと思う。みんなRADWIMPSと出会ってくれて本当にありがとう」

 オーディエンスと記念撮影。ステージに野田、武田、山口が並ぶ。再び抱き合う3人。こらえていたそれぞれの感情が、抑えきれずにあふれる。

「RADWIMPSは俺の人生史上、最強で最高のロックバンドです」ーーそう言って、山口はステージをあとにした。

 野田がしみじみと、涙を笑いで隠すように語り始めた。

「本当に俺らは10代から20代いっぱい、何日もスタジオに籠もり続けて、智史にも、『もっとだ、違う、もっとある』って繰り返しながら、異常なくらい俺らだけの精神と時の部屋で曲を作り続けていて。やっぱり今聴いても智史のフレーズってとんでもなくて。智史のフレーズってすごいなと思いながら、俺らは今でも演奏し続けていて。唯一無二のドラマーだし、今日一緒に演奏できて本当に嬉しいです。もうちょっとやるか、最終日だし! ここからはあなたたち頼みです! 頼っていいですか?」

 「いいんですか?」でクラップが湧き、解放と幸福が会場に広がった。「こんな日がくるとは本当に幸せでした。またやろうね! ありがとうございました!」と武田が叫び、野田が噛み締めるように「うん、よかった」と漏らす。

「今日で終わりじゃないんだな、大晦日(『NHK紅白歌合戦』)があるんだな。よかったら、テレビの前で、俺ら慣れてないから、応援してもらっていいですか? RADWIMPSに会ってくれてありがとう。そして、今日ここに来てくれてありがとう。2025年、お疲れさまでした。今日まで生き延びたあなた、最高です。いけんのかい!? 最後、RADWIMPSからの『会心の一撃』をくらえ!」

 「会心の一撃」で、すべてを出し切って、ライブは終わった。

 20年という時間は、ただ積み重なるものではない。止まってもおかしくなかった瞬間を何度も越え、形を変えながら、それでも鳴らし続けてきた音がある。この日、有明アリーナに響いたのは、その時間の厚みそのものだった。

 山口が叩いた1曲は、単なるサプライズではなかった。途中で倒れた仲間がいて、それでも走り続けた仲間がいて、その先に「ただいま」と「おかえり」が交わされる時間があった。ロックバンドを続けるということの意味が、あの瞬間に凝縮されていた。21年目から何も決めていない、と野田は言った。だが、音楽を作って死に物狂いで作り出して聴いてもらうことが自分に与えられた役割だとも語った。その言葉に、嘘はない。

 ツアーファイナルは終わり、RADWIMPSの20周年は幕を閉じた。だが、彼らの時間はまだ続いていく。生きてりゃ、色々ありえるのだ。ロックバンドなんてもんをやり続けていると、こんな夜も迎えられる。その実感を胸に、RADWIMPSと1万3千人のオーディエンスはそれぞれの場所へと帰っていった。

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