乃木坂46メンバーはなぜMVのヒロインに? 五百城茉央、遠藤さくら、賀喜遥香……起用の理由を紐解く

五百城茉央の持つ“揺らぎ”を含んだ透明感と儚さ

 その上で五百城は、5期生の中でも特に“揺らぎ”を含んだ透明感の持ち主だ。完成された美しさというよりも、少しあどけなさを残しながら、ふとした瞬間に深い影をにじませる表情。そこにはどこか危うさがあって、触れたら崩れてしまいそうな儚さがある。実際に山村は、「撮影がすべて終わった後に号泣していた彼女の姿がとても印象的でした。その誠実さや、不器用でどこか矛盾を抱えた瞬間が、とても人間らしくてずっと心に残っていました」と五百城の印象を語っている(※2)。五百城はグループ加入前、デビュー前最後の休日に始発で地元・神戸に戻り、仲の良い友人一人ひとりの家をまわって「ありがとう」と伝え、最後はサプライズで集まってくれた友人たちの前で大泣きしてしまったというエピソード(※3)もあり、山村の言葉は、実際の彼女の日常のエピソードとも重なって見える。

 乃木坂46のメンバーが他アーティストのMVやドラマ、映画の現場へと飛び出していく流れは、これからもっと増えていくはずだ。特に5期生以降のメンバーは、ドラマやバラエティ、ラジオなどグループの外での仕事がより増えたことで、どんな場面でどんな表情を見せる人なのかというパーソナリティが少しずつ広く伝わりつつあるだろう。だからこそ、現場で「この作品なら、この役はあの人にお願いしたい」というふうに具体的に名前が挙がる機会も増えているのかもしれない。

 過去にも、楽曲とMVヒロインの関係性が深く結びつき、後から振り返った時に「この曲と言えばこの人」と語られる例は少なくない。音楽と映像がセットで届くのが当たり前になった今、アーティスト側もキャスティングを含めてひとつの世界観をどう提示するかがますます重要になっていくはずだ。その中で、乃木坂46のメンバーがグループ外の作品に参加し、そこでの出会いから新たな表現の扉を開いていくケースは、今後も増えていくだろう。五百城もまた、いつか冬の曲を語る時に思い出されるひとりになるのかもしれない。

※1:https://www.nogizaka46.com/s/n46/news/detail/101585
※2:https://www.flumpool.jp/news/20732/
※3:https://with.kodansha.co.jp/article/interview-maoioki-2

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