サザンオールスターズの世界的偉業 『LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」』座談会がサザン・タイムズで公開


2025年1月より開催した全国ツアー『LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」』の映像作品が11月19日、発売された。その発売を記念して、サザンオールスターズの公式WEBメディア「サザン・タイムズ」にて新企画『みてかたるLIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」』が公開された。
「サザン・タイムズ」新企画『みてかたるLIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」』
同企画は、LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」の東京ドーム公演を現地で観覧した音楽ライター/ジャーナリストの兵庫慎司氏、柴那典氏、小松香里氏を改めて招き、映像を見ながらサザンオールスターズについて語り合う座談会。映像作品を通した今ツアー、アルバム『THANK YOU SO MUCH』、そしてサザンオールスターズというロックバンドについて存分に語り合っている。今回リアルサウンドでは特別にその前編の一部を公開する。
序盤の意外なセットリストに隠れた意図
ーー皆さんには『LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」』の東京ドーム公演を観覧いただきましたが、本日はその映像作品を観ながら改めてサザンオールスターズのライブ、楽曲について語り合っていただきたいと思います。
兵庫・柴・小松:よろしくお願いします。
――映像作品には東京ドーム公演の全28曲が収録され、動員は1日5万人×2日。ライブビューイングも開催され、約15万人がリアルタイムで鑑賞しました。
柴:観客席の映像を改めて観ると若い世代のファンが多いですね。
ーー確かに。世代を超えて愛されていることを感じます。
小松:そういえばオープニングSEはないんですね。
兵庫:大抵のバンドはSEがある印象だけど、サザンはこれまでもないライブもあったかも。
小松:SEで盛り上げる必要がないのかもしれない。
ーー観客はもうサザンの皆さんを見たいという熱意に溢れているからですかね。そして1曲目の「逢いたさ見たさ 病める My Mind」(5thアルバム『NUDE MAN』収録 1982年発売)は、非常に意外な選曲でした。
兵庫:本当にびっくりしました。何の曲だったか、一瞬思い出せませんでした。
小松:調べてみると1991年のスタジアムツアー(『Southern All Stars THE 音楽祭 -1991-』)でも1曲目に披露されていますが、それ以来になるようですね。
柴:2年前の『茅ヶ崎ライブ』(『サザンオールスターズ 茅ヶ崎ライブ2023』)では「C調言葉に御用心」で一曲目から観客が「待ってました!」という感じで盛り上がった記憶がありますけど、その時とは違う湧きがありましたね。サザンは毎回定番の1曲目があるわけではなく、今回の曲は、実質的にはプレリュード的な役割かもしれません。今回のライブ、ツアーのコンセプトがあってこの曲を選んでいるはずです。
ーー続く2曲目の「ジャンヌ・ダルクによろしく」(配信シングル 16thアルバム『THANK YOU SO MUCH』収録 2025年発売)で、会場のムードは一気にオープンなムードへと変わります。斎藤誠さんのギターに煽られ、ステージ後方の幕が開いて「SOUTHERN ALL STARS」のネオンロゴが光り、銀テープが噴射されました。
柴:会場のムード的には、ここがオープナーだったという感じですね。ネオンのロゴは……。
兵庫:例えば『サタデー・ナイト・フィーバー』のような1970年代後半から80’sのディスコ。
柴:ブロードウェイとかラスベガスのショーのような雰囲気も感じますね。
小松:ほんとに「逢いたさ見たさ 病める My Mind」がプレリュードのような位置づけで、ここから始まったという印象を受けましたね。
柴:最新作からの曲をオープナーに担わせるのが、さすがサザンです。
兵庫:「ジャンヌ・ダルクによろしく」は、横ノリのミディアムテンポのロックンロール的な曲調で、どちらかと言うと、桑田さんのソロ曲の方で、多く馴染みのある印象ですね。
柴:しかし銀テープが早かったですね。大体クライマックスでよく見ますけど、盛大に2曲目で。ここにも驚きました。
ーーMCを挟んで、3曲目は「せつない胸に風が吹いてた」です。
小松:この曲は、私がよく聞いていたアルバム『世に万葉の花が咲くなり』(11thアルバム 1992年発売)に収録されています。『ROCK IN JAPAN FES. 2018』でも披露されていましたが、その時は「希望の轍」「いとしのエリー」「涙のキッス」というキラーチューンに続いて演奏されていて。フェスのお祭り気分から、内にぐっと引き込むような印象を受けました。今回の東京ドーム公演でも、MCの後にまた内に引き込むような、そういう意味で演奏されているように感じられました。
柴:「ジャンヌ・ダルクによろしく」から序盤はアッパー系が続くかと思いましたが、聴かせるモードに入ったなと現場でも思っていました。サザンだからこそできる構成かもしれません。
ーーそして4曲目は「愛する女性(ひと)とのすれ違い」(8thアルバム『KAMAKURA』収録 1985年発売)です。柴さんは、このアルバムに思い入れがあるとのことですが。
柴:リアルタイムではこの時代を通っていなかったんですが、この仕事をするようになって、藤井丈司さんと親交を持たせてもらったこともあったりで改めて聞き返したアルバムですね。ピーター・ガブリエルらを想起させる80年代のゲートリバーブを取り入れたサウンドに面白さを感じたり。このセットリストで言うと1曲目の「逢いたさ見たさ 病める My Mind」から改めて前半はAORモードだったんだなって思っています。スローテンポで、この泣きのギターソロも。
兵庫:確かに。この『KAMAKURA』とひとつ前のアルバム『人気者で行こう』(7thアルバム 1984年発売)もAORとかデジタルっぽさが入ってくるんですよね。
ーー5曲目の「海」はまさに『人気者で行こう』に収録されている曲ですね。
小松:この曲は、おそらく女性目線の歌詞でサザンの中でも珍しい楽曲だと思います。「クズな男に惹かれるダメな女性」の歌なんだなと思いますが、桑田さんが歌うと切ない物語になるのがすごいですね。
柴:この3曲目からのAORの流れはなんでだろう? このサックスソロとか。
兵庫:でも発売された当時はAORだ! という認識はなかったかも。今のサザンの演奏力や、このライブでのサポートミュージシャンの影響もあるんじゃないかと思う。
――桑田さんは、今やってみたいという気持ちがあったんですかね?
兵庫:そうなのかも。(手帳を見る)あ、東京ドームでライブを見ながら「この感じの曲は、当時のサザンよりも今のサザンがやる方が良い」ってメモしてた(笑)。キャリアを重ねて時代を経て、昔の楽曲も新しい感覚を与えてくれるサザンはやっぱりすごいね。
ーー6曲目「ラチエン通りのシスター」(2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』収録 1979年発売)は、2013年以来のライブ披露です。
柴:ここまでがライブではレアな楽曲を多く盛り込むセットリストになっていますけど、これで二つのモードがあることを感じます。80年代半ばのAORモードとデビュー当時の70年代後半のモードで、この曲は後者ですね。
兵庫:余談ですがこの曲には、桑田さんの初恋の相手を歌った曲という説があります。本当なんですかね? ライブでも映像にも流れましたけど、ラチエン通りっていう通りが茅ヶ崎にあって桑田さんの原体験なんですよね。
柴:そんな初期の曲を今のアレンジでライブで演奏すると、ドゥーワップなどのオールディーズへのルーツが明確になりますし、非常に音楽的に芳醇なサウンドになっていると感じますね
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こちらの座談会の完全版がサザン・タイムズで公開中。中盤の新作アルバム『THANK YOU SO MUCH』からの充実のセットリスト、新たな発見のあった終盤戦、そしてアンコール……ツアー全ての楽曲について余すことなく語り合われている。ぜひチェックしてほしい。
みてかたるLIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」
https://southernallstars.jp/feature/thankyousomuch_sastimes_talk
サザン・タイムズ
https://southernallstars.jp/feature/thankyousomuch_sastimes



















