Charaが今、思い浮かべる“愛”ーーラブソングで振り返るデビュー35年の軌跡

 Charaがラブソング・ベストアルバム『The Love Songs of Chara "Lush Life"』をリリースした。同作は「Lush Life」「僕は残像」という新曲が収録されているほか、Chara自身が選んだラブソングを大ボリュームで収録。ヒットソングはもちろん、Charaが今歌いたい歌、コアな名曲が収録されている。

 2025年9月21日にデビュー満34周年を迎え、35周年イヤーがスタートしたChara。SeihoやBREIMENの高木祥太が参加した新曲の制作エピソードをはじめ、ラブソングを歌い続けてきたCharaが今考える“愛”に迫る(編集部)。

Charaにとっての“Lush Life”は「忘れられないほど美しく、悲しい」

Chara「Lush Life」Official Music Video

ーーデビュー35周年のアニバーサリーイヤーに突入したことに関してはどんな心境ですか?

Chara:特別な感情はないかな~。曲作りして、興味がある人とコミュニケーションを取って、自分でレコーディングしてっていうのはずっと変わらずにやってるから。ただ、年を重ねるとできることが増えていくでしょ。自然と培ってきているものがあるから、時間短縮もできるし、判断力もある。でも、アップデートしていかないと、どんどん同じようなものになっちゃうんだけど、息子が同じ音楽業界にいてくれて。息子の友達で私のサポートをしてくれる人もいるし、息子を通じて若いアーティストとのやり取りもできてる。いい感じの活性化ができてる感じはあるかな。

ーーCharaさんは常に気鋭の若手ミュージシャンとセッションしてますよね。

Chara:それはやっぱりソロだからね。バンドだったらできてないと思う。

ーー新しいベスト盤をみても、大沢伸一からアシュリー・イングラム、菊地成孔、TOWA TEI、細野晴臣、森高千里、高野寛、アンディ・チェイス、渡辺善太郎、岩井俊二、小林武史、大橋トリオ、bloodthirsty butchersの吉村秀樹、agraphの牛尾憲輔……と編曲や演奏者のクレジットを見るだけでもワクワクしますが、今回はどのように選曲作業を進めていったんですか?

Chara:今までもベスト盤は出てるから、私は「いりますか?」って言ったわけ。そしたら、「いります」って言われて(笑)。私中心で考えてくださいって。

ーーあはははは。Charaさんの自選になってますね。

Chara:私の思いとしては、シングルばかりじゃなくて、今ライブでも大切に歌っているような曲。それでもたくさんあるから30曲選ぶっていうのがまず、大変だったけど、「Lush Life」と「僕は残像」という新曲は絶対に入れたいっていう道しるべがあったので。

ーータイトル曲になっている「Lush Life」はどんなところから作ったんですか?

Chara:私の妹の夫で義理の弟がアメリカ人で、めちゃめちゃ音楽好きで、ウェブデザインとかをやってもらっていて。彼と詩や音楽、アートのことを話していたときに、ベストアルバムのタイトルを一緒に探してて。最初は“Luscious”っていう言葉が気になってて。

ーー“甘美な”とか、“甘くて美味しい”って訳したりしますね。

Chara:そうそう。それに似たような意味で他に何かないかなって、いろいろと話していたら、“Lush”から“Lush Life”になって。これがいろんな捉え方ができる言葉なのね。

ーー日本語だと“豊かな人生”や“瑞々しい人生”、スラングで“飲んだくれの人生”などなど、いろんな訳があります。

Chara:例えば、“雨上がりの朝の静まり返った街の風景”という人もいるのね。いろいろあるんだけど、彼の学者の友達が出してきてくれた詩的な解釈がすごく素敵で好きだったの。「僕にとってのラッシュライフは、忘れられないほど美しく、悲しい」って言ってて。ええ! 好きになっちゃうかもって思って(笑)。その言葉にグッときて、そこから集めてきた感じがあるかな。歌詞もそういう成り立ちになってる気がする。

ーー“忘れられないほど美しく、悲しい”が全体のテーマになってるんですね。歌詞の〈君の愛す全てを〉の“君”というのは?

Chara:自分に向かって言ってると思う。結局、すべてを背負って生きているじゃない。私だけじゃなく、みんな。Charaもそんなに重いものを背負ってるとは思わないけど、音楽を奏でたり、詩を書いていると、いろいろと忘れられないものが出てくる。精一杯、いつも一生懸命って感じかな、私のLush Lifeは。ちょっと子どもっぽいかも。初々しいってことじゃない(笑)?

ーー〈胸の中の青い蝶〉が隠れているので、Charaさんのインナーチャイルドと話しているようなムードがあるんですよね。

Chara:それはいつもあるよ。

ーー冒頭に鳥の鳴き声が聞こえるので、心の奥底の森の中に入っていくような感覚もあって。

Chara:あれはSeihoが入れたいと思ったみたい。森って、心理学的に無意識の象徴だと思うんだけど、私はそれを知らなくて。みんなの無意識の象徴とか、そういうのもあるかもね。聞くことによって、みんなの中の無意識に存在する、奥底にあるものを癒すというか。音楽とか、何かのアートとかに触れる時って、なんか分からないけどすごいとか、なんか分からないけどグッときたとか、そういうのがあるでしょ。自分ができないことをやるのが、仕事の1つだとしたら、私は掘って掘って掘りまくる。そういうことをやってるんだよね。

ーーあはははは。

Chara:宝物をもうさよならって埋めたり、探して掘り返したりしてる。あと、私自身、植物みたいな人だと思うんだよね。いつも植物といると安心するから。私は毎日の生活の中で常に植物と向き合っていて。うちに来ると、植物がいっぱいあるし、木もあるから。不思議とその音を入れたくなったのかな。実際に鳥も来てたかもしれないし。

ーー先ほど名前が出ましたが、作曲はSeihoとのコライトですね。

Chara:Seihoは仲良しで。睡眠のための音楽みたいなコンセプトで「あなたの一部になりたい」という曲を2人で作ったり、前のアルバム『Baby Bump』ではサウンドプロデュースもしてもらって。サウンドプロデュースを経て、いい感じの人と一緒に曲を作るようにしてるかなー? mabanuaもそうだったけど、仲良くなったら曲を作る、そんな儀式みたいな(笑)? SeihoはChara+YUKIの時も呼んだしね。彼はダンスミュージックっていうイメージがあるけど、クラシックも得意なんだよね。コラージュやサンプリングでも、アカデミックな面も持ってる。「Lush Life」はうちに来てもらって、2人でセッションしながら作ったんだけど、サビはSeihoらしい感じになってるかな。

ーー歌よりも名越(由貴夫)さんのエレキギターが前にくるパートもありました。

Chara:そう、名越さんのエレキをね、自宅に行って宅録で録らせていただいて。あそこがエモいのでぜひ聴いていただきたいです。

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