常闇トワ、時代に迎合せずに信じるものを貫く音楽 最新作『SHIN』で向き合った“心の声”

常闇トワ、最新作『SHIN』インタビュー

歌にしか乗せられない感情っていうのは確実にある

ーーアルバムには『SHIN』というタイトルが掲げられていますが、そこに至ったのはどうしてだったんですか?

常闇:正直、最初は単なる思いつきだったんです(笑)。シンプルなタイトルにしたいという思いは最初からあったのでいろんな案を出していったんですけど、“SHIN”が全体のテーマとしても、各楽曲のテーマにしても、いろいろ繋げやすいんじゃないかなと思ったんですよね。

ーー収録されるすべての楽曲は、なんらかの“SHIN”がテーマになっているんですよね。

常闇:そうですね。“心”であったり、進むの“進”だったり、真剣の“真”だったり、それらをまずバッと10個決めたんです。で、そのテーマに沿って自分の感じてきたこと、経験してきたことを投影した楽曲をクリエイターの方々に作っていただいた感じです。

ーーちなみにアルバムタイトルを決めたとき、最初にパッと思い浮かんだのはどんな“SHIN”だったんですか?

常闇:やっぱり“心”かな。私のようにメディアに出る活動をしていると、もちろん優しい言葉や応援してくれる言葉もあるけど、いろんな心無い言葉を投げつけられることも多いんですよ。それによって心が疲弊してしまうことも多いので、常日頃から自分のメンタルと戦わないといけなかったりもして。そういう部分で“心”っていうテーマがまずパッと思い浮かんだんだと思います。

ーーなるほど。それぞれの楽曲でテーマは違えど、今回のアルバムにはそういったトワさんの中にある悩みや迷い、苦悩みたいな部分がけっこう赤裸々に詰まっているような印象を受けました。ある種、すべての曲で言いたいことが一貫しているというか。

常闇:そこは意図してないですけど、結局は私の思いをのせて作ってもらった曲たちなので、そういう部分があるのかもしれないですね。こういう仕事をしていると、思ったことを正直に話せないこともあるんですよ。サラッと言ったことが思いがけず叩かれたりしがちだし。そういう意味で、歌にしか乗せられない感情っていうのは確実にあると思うんです。だからすべての楽曲には、自分の本音がしっかり詰まっている。歌であればここまで言っても許してもらえるんじゃないかな、っていう(笑)。

ーー楽曲として歌うことで、そういった心の中の澱みたいなものが昇華される感覚もあるんですかね?

常闇:そういう感情は日常的にいっぱい蓄積されているものなので(笑)、完全に昇華されるわけではないですね。でも、自分の思いが投影された歌を聴いたことで、みなさんが何かを少しでも感じてくれるのであれば、私のいろんな感情はきっと昇華されていくんだと思う。曲に込めた思いがちゃんと伝わってるなと感じるコメントなんかを読むと、「そうだよね!」ってすごく思うから。

ーーそれぞれの楽曲は最終的に光が見える描かれ方もされているので、トワさんと同じような悩みを持ち、生きづらさを感じている人たちの背中を押すことにもなるでしょうしね。

常闇:うん、そういう気持ちももちろん込めてます。

ーー今作で楽曲を手がけられている多彩なクリエイター陣のセレクトは、トワさんご自身によるものなんですか?

常闇:そうです。中には運営さんからオススメされてお願いしたいなと思った方にお声がけしたパターンもありますけど、基本的には自分が気に入っている楽曲を作っている方にお願いした感じですね。例えば今回、2曲お願いしたYAMAADさんの場合は、たまたまYouTubeにオススメで上がってきたVシンガーさんの動画がきっかけだったんですよ。サムネのイラストに惹かれて再生したら、歌声もすごく素敵だし、曲調もすごく良かったんですよね。で、どなたが作られたのかなと調べたらYAMAADさんで。他にもいろいろな曲を聴いたんですけど、YAMAADさんは歌い手の方にすごくマッチした楽曲を作られる印象があったので、「私にはどんな曲を書いてくれるのかな」っていう興味が大きくなったんですよね。

ーーボカロPの方々もいらっしゃいますよね。

常闇:昔からVOCALOIDが好きでけっこう聴いてきました。今回で言えば、てにをはさんはAdoさんをはじめ、いろいろな方に楽曲提供されているけど、どんなタイプの楽曲であってもちゃんとてにをはさんならではの世界観を感じさせるところがすごく好きなんです。あとユリイ・カノンさんは「生きるよすが」(月詠み)という楽曲がめちゃくちゃ好きなので、今回依頼させていただきました。

ーーシンガーソングライターのヒグチアイさんとのコラボレーションもすごくおもしろかったです。

常闇:私が以前出した「Palette」(2021年リリース)はサビがすごく壮大で、ファンの方からの人気も高いんですよ。で、今回のアルバムにもそういった曲が欲しいなと思ったときに、ヒグチアイさんの「悪魔の子」のことを思い出して。「悪魔の子」のような壮大さを持つ曲を作っていただけたらなと思い、依頼させていただきました。出来上がった「命の洗濯」はけっこうインパクトの強い仕上がりになったので、「どう受け取ってもらえるかな」ってちょっと不安もあったんですけど、かなり好評なので良かったです(笑)。

ーーアルバムのオープニングを飾る「心の在処はすぐ傍に」は、瀬名航さんが手がけられた楽曲ですね。

常闇:瀬名さんは運営さんから提案いただいたんですけど、めちゃくちゃいい曲を作っていただけたので嬉しかったですね。この曲は“心”がテーマ。「自分の心はどこにあるんだろう」「自分の隠している心を見つけたい」みたいな私の思いをお伝えした上で作っていただいたんですけど、もう完璧な歌詞を書いていただけましたね。私の思いがちゃんとのった楽曲になりました。

ーークリエイターの方々とは制作の過程でも細かくやり取りをされたんですか? 例えば、この言葉は変えて欲しいとか、そういう修正をお願いしたりっていう。

常闇:自分的にちょっと違うなって思ったら、そこはちゃんとお伝えするようにはしてますね。今回で言うと歌詞ではあまりそういうやり取りはなかったけど、音の面ではけっこう伝えさせていただいたかもしれないです。「メロディのこの部分が気持ちよく上がれないかもしれないです」とか。あとは、あまりキーが高すぎるとライブでノドがカサカサになってしまう可能性があるので、キーをちょっと下げていただいたりとか。私は音楽的な知識があまりないので、ざっくりな言い方にはなっちゃうんですけど、アレンジに関しても言わせていただくこともあります。ここはもっと重めにしてほしいですとか、もうちょっと音を増やしてほしいですとか。そういうやり取りは1枚目のアルバムからやってはいますね。

ーーへえ! トワさんの中には、それぞれの楽曲に対して明確なイメージがあるっていうことなんですね。

常闇:言葉にはしづらい、感覚的なイメージですけどね。「こういう雰囲気がいい」とか「こういうサウンドが好き」とかっていうのは、自分の中にけっこう明確にあるかもしれないです。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる