THE YELLOW MONKEY『CLIPS 4』解説:バンドの生き様を映し出す“ドキュメンタリー”である理由――成長期を迎えた現在地

『CLIPS 4』は、単にTHE YELLOW MONKEYの最新MV集ではない。2016年の再集結から10年間の、バンドの生き様を記録したドキュメンタリーだ。アーティスティックであり、ヒューマンでもある、4人の関係性が窺えるという意味では、オリジナルアルバム以上にわかりやすい作品と言ってもいい。

完成された映像作品を収録した「MUSIC VIDEO」パートについては、何も考えずに楽しむのがいいだろう。カット割りやクロスオーバーを多用しつつ、バンドの姿をシンプルにとらえる再集結後の第1弾「ALRIGHT」を筆頭に、今や稀有な価値となったロックスターとしてのかっこよさをたっぷり見せる「Stars」、台北ロケを決行してグラムロックの毒々しさをぶちまけた「天道虫」など、アルバム『9999』収録曲は復活を遂げたバンドの魅力を演奏シーン中心に見せる意識を強く感じる。なかでも個人的に好きなのは、「ロザーナ」のラストで吉井和哉(Vo/Gt)がふとつぶやく「THE YELLOW MONKEYっぽいね」というようなひとこと。俯瞰した目線がなくては“ぽい”という言葉は言えない。かつて一度目の解散の前、自身とバンドとの距離感を失っていた(ように見えた)吉井は、ついに穏やかな場所にたどり着いた。いい表情をしている。
最新アルバム『Sparkle X』からのMVは、より凝った演出で作り込まれたものが多い印象だ。大規模ロケと室内撮影を組み合わせた「未来はみないで」「ホテルニュートリノ」の壮大さ、怪しげなギャンブラーに扮した「罠」の格調高い猥雑さ、「Horizon」に続いてのアニメ作品となった「ソナタの暗闇」に込めたシリアスな寓意――。そして7月に出たばかりの最新シングル「CAT CITY」は、猫耳、猫爪、猫メイクで決めた4人が活躍する、キッチュでファニーな意欲作。ここまでド派手に振り切った4人、かつて見たことがない。
「EXTRA VIDEO」パートに収録された4曲は、主に演奏シーン中心に編集されたアナザー・バージョンで、完成作品とは違うレアな雰囲気が楽しめる。ただし「THE YELLOW MONKEY IS HERE.」と題したトラックは、2017年リリースの『THE YELLOW MONKEY IS HERE. NEW BEST』の告知に使われたもの。ナレーションを担当した美輪明宏の、見事な声のパフォーマンスに聴き惚れる。正式リリースを喜ぼう。
そして、ある意味で『CLIPS4』の核心を突くのが「MAKING&OFFSHOT VIDEO」のパートで、全8曲で2時間を超える大ボリュームで迫り来る。「天道虫」の台北ロケの賑やかな風景や「I don't know」で床に張り巡らせた楽器のシールドのデザイン的な意味、「DANDAN」でのクレーンを使った大掛かりな撮影風景など、完成品だけではわからない舞台裏が見られるおかげで、作品に対しての理解がぐっと深まる。ドキュメンタリーとしての価値も高い。
観ていてまず気づくのは、メンバー同士の笑顔が非常に多いこと。演奏シーンを除けば、常に笑って現場を楽しんでいるのだ。そしてもうひとつは、映像監督に対して常に「どうしてほしいですか?」と尋ねる姿勢であること。以前からそうだったのかもしれないが、これもまた、再集結後に到達した心境のような気がする。優れたクリエイターと組んで、あとは任せる。そこにバンドのエゴを超えた、より大きなアーティスティックな表現が表れる。
メイキングのなかでそれが最もわかるのが、「未来はみないで」だろう。俳優を起用してのウラジオストックでの海外ロケと、バンドが参加した国内ロケを組み合わせる大掛かりな作品だが、極寒のロケにもかかわらず「監督のイメージ通りに」と言う菊地英二(Dr)。そして、「カメラを見ないで、世界中の人に向けて歌うイメージで」という監督の言葉に黙って頷く吉井。アーティスト同士の心のやりとりが見えてくる、とてもいいシーンだ。
別の意味で、「CAT CITY」もまたドキュメンタリーとして傑作だ。音に合わせた顔の向き、手のポーズまで細かく指示する監督と、それに応えるバンド。ギャルっぽい猫への変身も含め、「ベテランバンドがここまでやるか?」と思うほど作り込まれた世界観である。だが、「細かいね。ミリ単位」と呟く菊地英昭(Gt)の表情は、あっけらかんとしていて明るい。やはり、再集結後のTHE YELLOW MONKEYは、チーム力、包容力、楽しむ力、連帯感といった意識が、より濃くなっていることを実感する。かつて、THE YELLOW MONKEYは4人だった。今は、メンバーはもちろん、優れたクリエイター、ライブスタッフ、そしてファンも含めて、ワンチームだという印象を強く持つ。
お望みならば、いつだって日本でいちばんかっこいいグラムロックバンドになってみせる。ダンディでスマートな、大人のロックもやぶさかじゃない。猫コスプレ? いいね、やろう。世界平和の祈りも個人の欲望も歪んだ愛情も、同じレベルで歌うことができる。激動の歴史と一度の解散、再集結を経て、THE YELLOW MONKEYは大きな連帯感のなかで多様性が行き交う場になった。また集結する時にはさらに大きな場を手にしているだろう。バンドはいまだに成長期なのだ。
■リリース情報
『CLIPS 4』
2025年11月12日(水)発売
予約URL:https://tym.lnk.to/CLIPS4
WPXL-90343/7,920円(税込)
<収録内容>
MUSIC VIDEO
01. ALRIGHT
02. 砂の塔
03. ロザーナ
04. Stars
05. Horizon
06. 天道虫
07. I don’t know
08. DANDAN
09. 未来はみないで
10. ホテルニュートリノ
11. ソナタの暗闇
12. 罠
13. Kozu
14. CAT CITY
EXTRA VIDEO
15. THE YELLOW MONKEY IS HERE.
16. ホテルニュートリノ (Another ver.)
17. SHINE ON (2024.4.27 TOKYO DOME Document)
18. 罠 (Another ver.)
MAKING & OFFSHOT VIDEO
01. 砂の塔
02. 天道虫
03. I don’t know
04. DANDAN
05. 未来はみないで
06. ホテルニュートリノ
07. 罠
08. CAT CITY
THE YELLOW MONKEY オフィシャルサイト:https://theyellowmonkeysuper.jp/
X(旧Twitter):https://x.com/TYMSproject
Instagram:https://www.instagram.com/theyellowmonkey.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/tymsproject/
YouTube:https://www.youtube.com/c/theyellowmonkey
TikTok:https://www.tiktok.com/@theyellowmonkey.jp



































