THE YELLOW MONKEY『Sparkleの惑星X -ネ申-』ライブレポート:4人がロックに託した希望、バンドに賭けた夢――最強の“今”

THE YELLOW MONKEYのライブツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 Sparkleの惑星X -ネ申-』千葉・LaLa arena TOKYO-BAY公演を観に行く。会場へ向かう道中、電車のなかから、燃えるような橙とぐるぐると渦を巻く雲という、あまりにも目を引く夕焼け空が見えた。イヤホンからはTHE YELLOW MONKEYの「Kozu」が流れていた。「この世界は仕組まれたおとぎ話で 現実を叩きつけられるけど 生まれたこと それで勝ちだよ そうそれが価値だよ」と吉井和哉(Vo/Gt)が歌っている。そういえば今日はゲリラ豪雨の心配もあると言われていたが、雨は降らず。その代わりにこの不思議な夕焼けが生まれたのだろう。それだけで今日は勝ちだし、価値ある一日になった。THE YELLOW MONKEYに励まされながら、会場へと足を早める。
『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 Sparkleの惑星X -ネ申-』とは、2024年10月からスタートしていたライブツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』の追加公演。思えば、たしかに私が観た『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』のKアリーナ横浜公演で、メンバーは「ツアー、終わりたくない」と言っていた。そして、この日のMCを聞く限り、本当にメンバーの意向で決まったものらしい。吉井は「そろそろおなかいっぱいになってまいりました」と笑っていたが、そのあとに言っていた「しかし、俺はもっとほしい。やったらやったぶんだけ腹が減る」というのが本当のところだろう。というのも、この日のライブ、おなかいっぱいの人たちがやるライブにしては、あまりにもメンバーが楽しそうだったから。
開演時刻が近づくと、待ちきれないオーディエンスからは手拍子が起こる。しかし、開演に先立つ注意事項のアナウンスが流れると、その手拍子はパッと止み、しっかりとアナウンスに耳を傾ける。そして再び手拍子が再開され、離陸の際のようなアナウンスとともに鋭いバンドサウンドが聴こえてくる。ステージを覆う紗幕には4人のシルエット姿。そして幕が落ち、いざTHE YELLOW MONKEYとの旅へ出発だ。

『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』は、最新アルバム『Sparkle X』を軸にしつつ、3rdアルバム『jaguar hard pain 1944-1994』(1994年)をフィーチャーした「BLOCK.1」、4thアルバム『smile』(1995年)をフィーチャーした「BLOCK.2」、5thアルバム『FOUR SEASONS』(1995年)をフィーチャーした「BLOCK.3」、そして1996年に行ったライブツアー『TOUR ’96 FOUR SEASON “野性の証明”』のセットリストに『Sparkle X』の収録曲を織り交ぜた「FINAL BLOCK」と、コンセプチュアルなセットリストで彩られてきた。そして、メンバーの“わがまま”により実現したおかわりツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 Sparkleの惑星X -ネ申-』は、吉井曰く「各ブロックのいいとこ取り」だという。開催がメンバーの“わがまま”だとするなら、セットリストもコンセプチュアルなツアーから離れた自由なライブだ。

「Bonjour Japan」とパリからの挨拶とともに「マリーに口づけ」で始まった今宵の旅。7月にリリースされたばかりの「CAT CITY」は2曲目に配置され、すでにライブのブースターとなっている。中盤、吉井が菊地英昭(Gt/以下、EMMA)に目をやり、「昔、こちらのエロい人が作ったエロい曲」と紹介した「イエ・イエ・コスメティック・ラヴ」からライブは湿度を増していく。性急なギターリフから「嘆くなり我が夜のFantasy」でさらに欲望が露わになると、それまでの無邪気さは身を潜める。

ステージが真っ赤に染められ、女性のボーカルで〈みんな みんな かよわき恋人〉と始まる。「RED LIGHT」だ。吉井の低音も、なんだかいかがわしく聴こえる。『Sparkleの惑星X』というツアータイトルで描かれてきた“宇宙”も、ここではまったく意味が変わるのだ。ステージ横のスクリーンも、ざらざらした質感でメンバーの姿を映し出す。たった一曲なのに、纏う空気を変えてしまった。その直後、間髪入れずに始まるのがロックンロールサウンドに乗せて〈死んだら新聞に載るようなロック・スターに〉と歌う「ROCK STAR」なのだから、THE YELLOW MONKEYというバンドが、ロックというものに夢も、希望も、恋心も、欲望も、笑いも、喜びも、怒りもすべてを託していることがわかる。彼らはひたすらにロックという音楽を、バンドという生き物を、信じているのだ。

『Sparkle X』の収録曲でバンドの最新モードを見せていく後半には、メンバーのソロプレイタイムが挟まれた。「“I”」を終えると、ステージ上のEMMAにスポットライトが当たる。EMMAが高らかにギターで歌い始めたかと思えば、そのままおよそ3分にわたってたっぷりとスキルフルで歌心のあるギターを聴かせた。その後に届けられたピュアな人生讃歌「Make Over」では、先ほどのソロタイムの賛美と言わんばかりに吉井がギターソロを弾くEMMAに口付け。曲が終わると、続いてはステージに菊地英二(Dr)が残り、ドラムロールで視線を奪うと、そのまま手数の多いドラムソロを、これまたたっぷりと聴かせる。静寂もビートも自在に作り出せるドラムという楽器を自在に操り、オーディエンスの興奮を煽っていく。そこへ廣瀬洋一(Ba/以下、HEESEY)を招き入れ、ソロタイムへ。おどろおどろしくもわくわくするベースのメロディは、やはりTHE YELLOW MONKEY節。そこへ吉井とEMMAが加わると、シームレスに「ソナタの暗闇」へと雪崩れ込んだ。続く「ラプソディ」では、サビで吉井が「はい、お願いします!」とボーカルをファンへ託し、〈オパ オパ オパ オパ オー〉とファンによる愛しきラプソディが響き渡る。さらに、HEESEYが演奏を間違えたことをイタズラ顔で吉井が指摘して笑ったり、吉井が突然「NO MORE映画泥棒」のCMの真似を始めたりと、楽曲の主人公が男の子だからか、メンバーの童心が引き出され、やりたい放題。その開放的なムードのまま「太陽が燃えている」が選曲される。〈悲しみの雨がやみ 希望の空の下で〉という歌い始めが、ここまでの1時間強で描かれてきた感情の変化にぴったりで驚く。歌詞が心に染み込む。
























